質問主意書

第141回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六号

郵便貯金の周知宣伝施設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年十一月四日

山下 栄一   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   郵便貯金の周知宣伝施設に関する質問主意書

 郵政大臣は、「郵便貯金の普及のため、その周知宣伝に必要な施設を設けることができる。」(郵便貯金法第四条第一項)とされており、現在、通称「メルパルク」と言われる郵便貯金会館等十六施設が運営されている。郵政大臣の認可法人である「郵便貯金振興会」は、そうした施設の運営を国から委託されている。しかし、その運営の在り方及び国による新たな施設の建設について疑念を生じさせる事例が見受けられるので、現下の最大課題である行財政改革の問題とも関連させて、郵便貯金の周知宣伝施設の在り方について、以下質問する。

一、「郵便貯金振興会」は、郵便貯金法に基づく郵政大臣の認可法人である。この「郵便貯金振興会」は、「郵便貯金の普及のため、その周知宣伝に必要な施設」と位置付けられている全国十五箇所の郵便貯金会館(以下、「会館」という。)を運営している。
 「郵便貯金振興会」の平成八年度の収入支出決算書によると、会館業務収入は三百二十七億円、会館業務費は三百二十二億円であり、おおむね収支相償しているが、会館別にみると、赤字が発生しているものがある。例えば、総務庁の「郵政事業に関する行政監察結果報告書」(平成九年四月)によると、調査した七会館のうち四会館は赤字(平成六年度)となっている。
 政府は、「郵便貯金振興会」を通じて、それぞれの会館の収支状況をどのように把握しているか。

二、会館の用地代及び建築費は、郵政事業特別会計を通じて郵便貯金特別会計から支出されており、その減価償却費も郵便貯金特別会計から支出されている。また、施設の利用料金は、その所在する地域における同種の公共施設及び民間における同業種と同程度の水準に定められている。このように、会館の運営は利益が生じやすい構造となっているにもかかわらず、一部の会館で赤字が発生しているが、その理由は何か。

三、会館の運営は、基本的に収益の上がる構造となっているにもかかわらず、一部の会館で赤字が生じているのは、経営感覚に「親方日の丸」的な発想があり、経営改善努力が足りないからではないか。例えば、「郵便貯金振興会」の役員や会館の支配人には、多くの郵政省OBが就任していることも、そうした指摘がなされるゆえんである。
 「郵便貯金振興会」の役員及び会館の支配人に郵政省OBが就任していることは、会館の効率的な経営に支障を来しているのではないか、政府の見解を示されたい。

四、郵政大臣は、郵便貯金法第九十四条において、「郵便貯金振興会」に対する指導監督権を有している。郵政大臣は、「郵便貯金振興会」に対し、会館の収支改善に向けてどのような指導監督を行っているのか。

五、本年四月より栃木県の日光市霧降高原において、新たな総合保養施設(通称「メルパルク日光霧降」)が開設された。この施設は、宿泊室約三百室を持ち、会議室、スポーツ施設等を備えている。その設立根拠は、郵便貯金法第四条第一項の「郵便貯金の普及のため、その周知宣伝に必要な施設」である。
 平成七年九月十三日の参議院決算委員会において、私は、「メルパルク日光霧降」と既存の会館との違いを質したところ、当時の貯金局長は、この施設は、「健康増進機能を中心とした施設」であり、「都市を中心に宿泊機能を備え」た会館とは異なるとの見解を示している。
 しかし、この施設は、「郵便貯金振興会」によって運営され、宿泊室・会議室・スポーツ施設等を有し、通称も「メルパルク」と呼ばれており、事実上現在の会館と異なるところはない。再度、その違いを説明されたい。

六、「郵便貯金振興会」については、臨時行政調査会の最終答申(昭和五十八年三月)において、「施設関係法人については、民間と競合する会館、宿泊施設等の新設を原則的に中止する」との方針の下に、「郵便貯金会館については、原則として会館の新設を行わない」とされている。また、これを受けて、前記答申を最大限に尊重するとの閣議決定(昭和五十八年五月二十四日)がなされている。
 「メルパルク日光霧降」は、その設立趣旨、主な施設内容等が現在の会館と同一であり、これは、明らかに臨調答申及び閣議決定に反していると思うが、政府の見解を示されたい。

七、郵政省は、三重県において、「メルパルク日光霧降」と同様の保養施設の建設を計画している。また、全国十箇所に地域文化活動支援施設の建設を予定している。これらの施設の設立趣旨は、「郵便貯金の普及のため」とされているが、郵便貯金の残高は平成八年度末で二百二十五兆円となり、民間金融機関からは民業圧迫との指摘を受けている。こうした状況の下で、「郵便貯金の普及」を目的にした新たな周知宣伝施設を建設する必要性があるのか。

八、郵便貯金の周知宣伝施設としての地域文化活動支援施設の建設のため、土地購入費、建築費として、郵政事業特別会計を通じて郵便貯金特別会計から、平成六年度は五百一億円、七年度は三百五十九億円支出されている。その上、郵便貯金の周知宣伝のための広報予算として郵便貯金特別会計に毎年度おおむね三十六億円の宣伝広告費が計上されている。
 郵便貯金事業は、国営事業として全国に約二万五千局設置されている郵便局を通じて実施されている。全国津々浦々に設置されている郵便局自体が郵便貯金の周知宣伝の役割を果たしているのであり、それに加えて、新聞・テレビ等のマスメディアを利用して広報活動を行う必要性はどこにあるのか、政府の見解を示されたい。

九、現在、全国に約二万五千局の郵便局が設置され、郵便貯金残高は二百二十五兆円に達する。これは、都市銀行十一行の預金残高二百五十兆円に匹敵する。郵便貯金は国営事業として、都市銀行全体に匹敵する規模を持ちながら、その普及のための周知宣伝施設として、会館十五箇所、総合保養施設一箇所を有し、更に、総合保養施設一箇所、地域文化活動支援施設十箇所の建設が予定されている。こうした状況は、民業の補完に徹すべき国営事業の範囲を逸脱していると考えるが、政府の見解を示されたい。

十、本年九月三日、政府の「行政改革会議」は中間報告を公表し、「民間に委ねるべきは委ねる」との大前提の下に、「官民分担の徹底による現業の大幅縮小等により、行政を簡素化・効率化すること」を目指し、郵便貯金事業については、「早期に民営化するための条件整備を行う」ことを打ち出した。また、橋本総理は、九月二十九日の参議院本会議における所信表明演説の中で、「簡素で効率的な行政をつくり上げるためには、国の果たすべき役割を根本から見直し、官から民へ国の業務と権限を移し、国の組織、人員、予算の規模をできる限り絞り込まなければなりません。」と述べた上で、中央省庁に関しては、「現業の縮小を図る」ことを言明した。
 郵便貯金特別会計から郵政事業特別会計を通じた支出により建設され、郵政省OBが役員を占める認可法人「郵便貯金振興会」によって管理・運営される新たな周知宣伝施設の設置は、「民間に委ねるべきは委ねる」とした「行政改革会議」の理念、「簡素で効率的な行政をつくり上げる」という橋本総理の所信表明に明確に反するのではないか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。