質問主意書

第140回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五号

内閣参質一四〇第一五号

  平成九年七月八日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員横尾和伸君提出国連ハビタットに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員横尾和伸君提出国連ハビタットに関する質問に対する答弁書

一について

 国際連合人間居住センター(ハビタット)(以下「センター」という。)は、千九百七十七年に開催された第三十二回国際連合総会の決議に基づき、国際連合の各機関における人間居住に関する活動の調整の役割を果たすために政府間組織として設置された国際連合人間居住委員会(以下「委員会」という。)に対して役務を提供するとともに、人間居住についての情報交換の中心的な役割を果たすことを目的として千九百七十八年に設置された国際連合の下部組織である。昨年開催された第二回国際連合人間居住会議においては、人間居住に関して、都市化する世界における持続可能な人間居住の開発を目的として、各国政府、地方公共団体、非政府機関等が重要な役割を果たすこと等を内容とする「ハビタットアジェンダ」が採択されたところであり、センターはこれに基づく各国政府等の行動を推進するための中心的機関として位置付けられているものと考える。

二について

 センターの活動は、国際連合の各機関で策定される人間居住に関する分野における諸計画について事務部局間での調和を図ること、委員会が行う国際連合の各機関の人間居住に関する活動の調整作業に対する支援を行うこと、人間居住に関する事業を実施すること、人間居住についての情報交換の中心的役割を果たすこと等であり、その予算規模は、千九百九十六年及び千九百九十七年の二年間において約二千六百万米ドルである。我が国としては、センターの活動及びその運営において効率性及び透明性に問題があると考えており、本年四月に開催された第十六回委員会において、センターに対し、これらの問題の改善のための努力を行うよう求めたところである。

三について

 我が国は、千九百七十八年に委員会が設立されて以来、継続してその委員国を務めている。また、我が国は、センターIの活動に対する国際連合加盟国等の拠出金を管理する国際連合人間居住財団に対し、千九百八十四年度から任意拠出を行っている。我が国の任意拠出の実績は、千九百八十四年度から千九百八十六年度までの各年度が五十万米ドル、千九百八十七年度から千九百九十一年度までの各年度が七十五万米ドル及び千九百九十二年度から千九百九十六年度までの各年度が八十万米ドルである。

四について

 千九百九十三年の第十四回委員会において、「各地域における事業活動を強化することにより、より地域の必要に応じた形で国際連合人間居住センター(ハビタット)の資源を活用することができる」との考えに基づき、「地域活動の強化に関する決議」が採択された。お尋ねの本年八月の国際連合人間居住センタト(ハビタット)福岡事務所の開設は、このような決議の考えに基づくものである。我が国としては、当該事務所の運営について効率性及び透明性が確保されるよう期待するとともに、国際的な人間居住の開発の推進に当たって我が国が主導的役割を果たすことの一環として積極的に支援していく考えである。

五について

 センター及びその活動については、御指摘のとおり、従来国民になじみが少な いと考えており、政府とて、今後、積極的な広報活動を行い、国民の理解を得る努力が必要であると考えている。

六について

 我が国の財政が危機的な状況にあり、政府開発援助(以下「ODA」という。)が予算についてもその水準の引下げを行う中で、ODAの量から質への転換を図り、ODAを効率的かつ効果的に実施していくことが必要となっている。我が国がこれまで実施してきたODAについては、一部に改善すべき点もあったが、全般的にはおおむね良好な成果を挙げており、被援助国の社会経済開発に貢献したものと考える。今後、援助の実施に当たっては被援助国側との事前協議を重視するとともに、衛生、医療、教育及び女性の地位の向上のための支援等社会開発の重要性に十分配慮し、被援助国民から真に評価されるよう努める考えである。また、評価システムの確立、非政府機関等民間との連携、情報公開の徹底等を図る考えである。
 さらに、開発途上国の持続可能な開発を支援するためには、経済開発分野と社会開発分野との間でバランスのとれたものとすることが重要であるとともに、環境、人口及びエイズ問題等の地球規模の問題についで重点的に対応していく必要があると考えている。

七について

 第二回国際連合人間居住会議において、御指摘の「人間居住(ハビタット)」に関して「すべての人に適切な居住を」及び「都市化する世界における持続可能な人間居住の開発」の二つの中心的な概念が示されたが、前者については、単なる住居の提供のみならず「安全な水へのアクセス」、「土地政策」、「女性の経済活動への参加」等広い分野にわたるものであり、後者については、「都市化する世界における持続可能な人間居住の開発」という目標の下に経済開発、社会開発及び環境保全に関し、適切な努力を行うという包括的な概念であり、特定の分野ごとの目標を達成しようとするものではない。したがって、「人間居住(ハビタット)」という観点からODAのうちの特定の分野を取り出すことは困難であると考える。
 なお、国際的にも、「人間居住(ハビタット)」に関連してODAのうちの特定の分野を取り出すような作業は行われていないと承知している。

八について

 七についてで答弁したとおり、「人間居住(ハビタット)」に関連してODAのうちの特定の分野を取り出すことは困難であることから、御指摘のような「ハビタットODA」の中期目標を設定することは考えていない。

九について

 我が国は、第二回国際連合人間居住会議において、「ハビタットアジェンダ」の採択に当たり、人間居住に関連する我が国の経験を示しつつ議論に積極的に参加したところであり、また、本年八月に開設される国際連合人間居住センター(ハビタット)福岡事務所を誘致する等国際的な人間居住の開発の推進に当たって主導的役割を果たしているものと考える。政府としては、このような我が国の諸活動について、我が国内外へ広報していくとともに、引き続き国際的に主導的役割を果たしていけるよう努力していく考えである。