質問主意書

第140回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質一四〇第一四号

  平成九年七月十八日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員清水澄子君提出プルトニウム利用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員清水澄子君提出プルトニウム利用に関する質問に対する答弁書

一の1について

 東京電力株式会社(以下「東電」という。)が株式会社東芝(以下「東芝」という。)との間でベルギー王国における混合酸化物燃料(以下「MOX燃料」という。)加工に係る委託契約(以下「加工契約」という。)を平成七年四月二十八日付けで締結したと承知している。

一の2について

 当該加工契約の締結に関しては、届出等の法的手続は必要とされていない。なお、通商産業省及び科学技術庁は、東電から当該加工契約の締結についてその前後に随時話を聞いている。

一の3の(1)について

 ベルギー王国へのプルトニウム及びウランの輸送をも含む契約である当該加工契約は、東電と東芝との間で平成七年四月二十八日付けで締結されたと承知している。

一の3の(2)について

 当該加工契約の締結に関しては、承認、許可等の法的手続は必要とされていない。なお、通商産業省及び科学技術庁は、東電から当該加工契約の締結についてその前後に随時話を聞いている。

一の4の(1)について

 東電のこれまでの説明によれば、当該加工契約上は、ウランを日本から運ぶこととしているが、その後については未定とのことである。

一の4の(2)について

 東電のこれまでの説明によれば、東電が利用を考えているMOX燃料集合体は日本で開発したウラン燃料集合体と基本的に同じ設計とされており、したがって、MOX燃料集合体のうちウラン燃料棒については、製造実績のある日本で加工することとしたとのことである。

一の4の(3)について

 東電のこれまでの説明によれば、回収ウランはMOX燃料加工には使用しない方針とのことである。

一の4の(4)について

 東電のこれまでの説明によれば、回収ウランを廃棄物として処理するのではなく、再濃縮して燃料として利用していく方向で検討を進めているとのことである。

一の5の(1)について

 東電のこれまでの説明によれば、今回のMOX燃料集合体の富化度(燃料集合体当たりのプルトニウムとウラン合計質量に占めるプルトニウムの質量の割合)は、平均四パーセントないし五パーセントとのことである。

一の5の(2)について

 東電のこれまでの説明によれば、今回のMOX燃料加工に使用されるプルトニウムの組成比(総プルトニウムの質量に占める核分裂性プルトニウムの質量の割合)は、約三分の二とのことである。

二の1について

 政府は、核物質等が我が国から国外へ移転される場合には、移転先国政府等から当該核物質等に関し移転先国等における平和的利用等についての保証(以下「平和的利用等の保証」という。)を得ることとしている。このような保証は、原子力の平和的利用の分野における協力のための包括的かつ長期的な枠組みを定める二国間の原子力協定により得る場合及び個々の移転ごとに移転先国政府等との取極等により得る場合とがある。御指摘のMOX燃料加工の委託に関連してベルギー王国へ移転される核物質については、平成九年二月十日に発効した政府と欧州共同体委員会との間の書簡の交換による取極(以下「日・欧州共同体委員会取極」という。)及び政府とベルギー王国政府との間の書簡の交換による取極(以下「日・ベルギー取極」という。)により平和的利用等の保証を得ているので、ベルギー王国政府との間で原子力協定を締結する必要はないと考える。

二の2の(1)について

 平成九年二月七日の閣議において、日・ベルギー取極のための政府とベルギー王国政府との間の書簡の交換及び日・欧州共同体委員会取極のための政府と欧州共同体委員会との間の書簡の交換についてそれぞれ閣議決定が行われた。

二の2の(2)について

 日・ベルギー取極は、ベルギー王国に移転される核物質についてベルギー王国政府が防護措置を適用することを政府に対して約束するものであって、政府はベルギー王国政府に対して何の義務を負うものではないことから、日・ベルギー取極については、国会の承認を得る事項は含まれていないものと考える。

二の3について

 日・ベルギー取極は、交換公文(同取極については、政府から往簡を発出し、ベルギー王国政府から返簡を受領した。)の形式による両国政府間の国際約束であり、それぞれの書簡の署名者である池田外務大臣及びフェルドンク駐日ベルギー王国臨時代理大使は、それぞれの政府を正当に代表する者であり、その有効性に疑義はない。

二の4について

 日・ベルギー取極により、適切な防護の措置が、最小限同取極の附属書Bに定められる水準において、同取極の附属書Aの1に掲げる核物質について、ベルギー王国の関係法令に従って適用されることがベルギー王国政府によって保証されている。当該核物質に関する保障措置については、三の2についてで答弁するとおり、欧州共同体委員会によって保証されている。

三の1について

 日・欧州共同体委員会取極は、交換公文(同取極については、政府から往簡を発出し、欧州共同体委員会から返簡を受領した。)の形式による政府と欧州原子力共同体を代表する欧州共同体委員会との間の国際約束であり、それぞれの書簡の署名者である池田外務大臣及びケック駐日欧州共同体委員会大使は、政府及び欧州共同体委員会をそれぞれ正当に代表する者であり、その有効性に疑義はない。

三の2について

 日・欧州共同体委員会取極により、保障措置に関しては、同取極の附属書の1に掲げる核物質が、欧州原子力共同体を設立する条約に基づく保障措置の適用を受けること並びに核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する欧州原子力共同体、その加盟国である非核兵器国及び国際原子力機関の間の協定の適用を受けることが欧州共同体委員会によって保証されている。
 欧州原子力共同体を設立する条約の規定により、欧州共同体委員会は、当該核物質を含む欧州原子力共同体加盟国の領域内のあらゆる民生用核物質について保障措置の適用を保証し得る権限を有していると承知している。

三の3について

 欧州原子力共同体を設立する条約の規定により、欧州原子力共同体は、その権限及び管轄の範囲内において国際約束による義務を負うが、当該国際約束は、欧州共同体委員会が外国等と交渉し、締結することとされていると承知している。