質問主意書

第140回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三号

内閣参質一四〇第一三号

  平成九年七月二十二日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗殿

参議院議員加藤修一君提出地球温暖化防止対策等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員加藤修一君提出地球温暖化防止対策等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 主要な温室効果ガスである二酸化炭素の平成七年度の我が国の排出量は、二酸化炭素に関し地球温暖化防止行動計画(平成二年十月二十三日地球環境保全に関する関係閣僚会議決定)に掲げられている目標((1)一人当たり二酸化炭素排出量について二千年以降おおむね千九百九十年レベルでの安定化を図る。(2)さらに、太陽光、水素等の新エネルギー、二酸化炭素の固定化等の革新的技術開発等が、現在予測される以上に早期に大幅に進展することにより、二酸化炭素排出総量が二千年以降おおむね千九百九十年レベルで安定化するよう努める。以下「行動計画の目標」という。)の基準年次である平成二年度に比べ、一人当たり排出量では六・七パーセント、排出総量では八・三パーセント、それぞれ増加し、このままでは行動計画の目標の達成が困難な状況にあるが、政府としては、なお一層対策を推進し、引き続き行動計画の目標の達成に向け最大限努力することとしている。

一の2について

 政府においては、二千年までの毎年の二酸化炭素排出量の目標値は定めていないが、これまでも産業、民生及び運輸の各分野において、地球温暖化防止行動計画に掲げられた広範多岐にわたる施策の強化に努めており、また、本年六月十七日に開催された地球環境保全に関する関係閣僚会議においても地球温暖化対策をこれまで以上に強力かつ効果的に進めることを申し合わせるなど、行動計画の目標の達成に向けて、引き続き取り組んでいる。
 御指摘の経済的措置については、本年六月三日に閣議決定し、国会に提出した平成八年度環境の状況に関する年次報告に示したとおり、今後、その具体的な案を国民の前に明らかにし、その導入について検討するとともに、国民的な議論の展開を図ることが必要であると考えている。環境への負荷の低減を図るための経済的負担措置については、これを講じた場合の環境保全上の効果及び国民経済に与える影響について引き続き適切に調査及び研究を進める。

一の3について

 平成八年度には、合計四百四十施策の地球温暖化防止行動計画関係施策を講じたところであり、本年度においても、引き続き関係施策の推進に努めている。具体的には、省エネルギーについては、本年四月一日、総合エネルギー対策推進閣僚会議において、「二千年に向けた総合的な省エネルギー対策」を取りまとめるとともに、廃棄物の減量化については、同日、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成七年法律第百十二号)が本格施行された。また、交通体系の見直しについては、同月四日、総合物流施策大綱を閣議決定するとともに、新エネルギーの開発、利用等については、同年六月二十三日、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(平成九年法律第三十七号)が施行された。
 これらの施策による温室効果ガスの削減効果については、各施策が相互に影響を及ぼすことから、これを正確に把握することは困難であるが、行動計画の目標の達成に向け、各施策が着実な効果をもたらすことを期待している。

一の4について

 気候変動に関する国際連合枠組条約(平成六年条約第六号。以下「条約」という。)第四条2(b)及び第十二条に基づき我が国として行う条約の実施に関する第二回目の情報の送付については、送付すべき情報の内容が多岐にわたり、またその量も膨大なものであるため、政府内の作業に時間を要していることから、条約の事務局(以下「条約事務局」という。)への提出が遅れているものである。送付すべき情報の内容の取りまとめを可能な限り早期に行い、これについて国民からの意見を求めた上で、条約事務局に提出することとしたい。

二の1について

 政府は、我が国の現在の二酸化炭素排出量は、行動計画の目標の達成がこのままでは困難となるほど増加した状況にあると認識している。

二の2について

 本年四月一日、総合エネルギー対策推進閣僚会議において、「二千年に向けた総合的な省エネルギー対策」を取りまとめるとともに、同年六月二十三日、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法が施行されたところであり、通商産業省においては、これらに基づき、行動計画の目標の達成に向けて、省エネルギーの強化、新エネルギーの一層の導入促進、原子力の着実な推進等を図ることとしている。

二の3について

 数量化された排出の抑制及び削減目的(以下「数量目的」という。)の設定については、現在、数値の対象、年度、衡平な負担の在り方等に関する議論が行われているところであり、数量目的の水準については、これらの論点も含めて議論され、決定されるべきものである。いずれにしても、通商産業省においては、数量目的の設定について、地球温暖化防止上効果があるとともに、先進各国の省エネルギー努力等を踏まえて衡平かつ実行可能なものとなることが重要であると考えている。

二の4について

 具体性のあるかつ現実的な対策を実施することによりその目標の達成の可能性があるものが「実行できる目標」であると考えている。

二の5について

 気候変動問題は、人類の存続にかかわる重要な課題であり、本年十二月の気候変動枠組条約第三回締約国会議(以下「第三回締約国会議」という。)においては、地球温暖化防止上効果があり、衡平かつ実行可能な枠組みが合意され、世界各国がこれを着実に実施することが重要であると考えている。通商産業省においては、こうした考えの下に、現在行われている国際的議論に積極的に対応していくことが重要であると考えている。

二の6について

 気候変動問題は、人類の存続にかかわる重要な課題であり、この問題の解決のためには究極的には世界全体の二酸化炭素排出量を現在の半分以下とすることが必要となるが、通商産業省においても、この問題は環境問題であると同時に経済問題及びエネルギー問題であることから、関係省庁と協力しつつ積極的に対応していくことが必要であると認識している。
 こうした認識の下に、通商産業省においては、まず、行動計画の目標の達成に向けて、省エネルギーの強化、新エネルギーの一層の導入促進、原子力の着実な推進等の国内対策を図ることとしている。
 また、本年十二月の第三回締約国会議においては、関係省庁と協力しつつ、地球温暖化防止上効果があり、衡平かつ実行可能な枠組みが合意されるよう努力していく所存である。
 さらに、気候変動問題の抜本的な解決に向けて、革新的なエネルギー及び環境技術の開発及び普及、開発途上国への技術移転等の取組を全力を挙げて推進していく所存である。

三の1及び2について

 数量目的の対象となる温室効果ガス(御指摘のハイドロフルオロカーボンを含み、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(昭和六十三年条約第九号)によって規制されているものを除く。以下同じ。)については、二酸化炭素の人為的な排出の量を対象とすることが適当であると考えている。また、二酸化炭素以外の温室効果ガスの発生源による人為的な排出及びすべての温室効果ガスの吸収源による除去については、条約により設置されている科学上及び技術上の助言に関する補助機関に検討を委託することとし、その結果に基づいて第三回締約国会議での採択を目指す議定書その他の法的文書(以下「法的文書」という。)の締約国の会合において適当な措置が決定されるまでの間、その排出量を増加させないため及び吸収源の管理等を促進するため、可能な限り努力を行うことが適当であると考えている。

三の3及び4について

 我が国としては、法的文書は、地球温暖化防止上意味のある現実的かつ衡平なものとなることが必要であると考えている。衡平性を確保する観点からは、各国がこれまで行ってきた省エネルギー努力、温室効果ガスの削減努力等が国ごとに異なる状況を考慮し、温室効果ガスの数量目的は、国ごとに異なり得るべきものと考えている。このため、我が国は、温室効果ガスの数量目的については、国内の二酸化炭素の排出総量に基づく目的と国民一人当たりの二酸化炭素の排出量に基づく目的のいずれかを各国が選択することが適当であると考えている。
 また、数量目的の対象となる年限については、二酸化炭素の人為的排出量が景気変動、異常気象等の突発的な事情によっても左右される可能性があること等から、二千年以降のある年から例えば五年の複数年とし、この間の年平均をとることが適当であると考えている。

三の5について

 我が国としては、(1)エネルギー利用の効率化、(2)炭素含有量が少ない、又は含まないエネルギーの導入、(3)革新的な技術開発、(4)国際的な技術協力及び技術移転、(5)吸収源及び貯蔵庫の保護及び強化のそれぞれの分野について、温暖化防止のための何らかの政策及び措置を各国の判断により講ずることとすることが適当であると考えている。

三の6について

 千九百九十五年三月二十八日から四月七日にかけて開催された条約の第一回締約国会議における決定(ベルリン・マンデート)では、開発途上国には新たな約束を導入しないこととされているが、条約上の既存の約束を再確認し、引き続きその実施の促進を継続することとされている。地球温暖化問題は、地球環境に広範かつ深刻な影響を及ぼす可能性のある重要な問題であり、とりわけ開発途上国の二酸化炭素排出量は二千十年には経済協力開発機構(以下「OECD」という。)加盟国と同程度になる可能性があることもあり、開発途上国を含め、全世界的に地球温暖化問題への対処を促進していく必要があると考えている。このため、我が国としては、開発途上国に対し法的文書に沿って自発的な措置を採ることを奨励し、その場合には、法的文書の締約国の会合は、条約により資金の供与の制度の運営を委託された組織に対し、当該開発途上国に優先的な資金供与を行うよう要請することができることとすることが適当であると考えている。
 なお、現在のOECD加盟国のうちでも大韓民国及びメキシコは条約上は条約附属書Iには掲げられておらず、他のOECD加盟国と同様には扱われていないが、これら諸国が温室効果ガスの排出削減対策を採ることは地球温暖化を防止する上で重要であるので、これら諸国による取組が強化されるよう今後とも努力してまいりたい。

三の7について

 我が国としては、条約附属書Iの締約国は選択された数量目的の達成等のために採るべき適当な政策及び措置について計画を作成し、これら及び実施状況の評価等についての情報を一定の頻度で条約事務局に提出することが適当であると考えている。提出された情報については、専門家による検討の結果を踏まえ、必要に応じ法的文書の締約国の会合により勧告が行われること等が適当であると考えている。なお、このような情報の提出及び勧告の具体的な時期又は頻度並びに勧告の決定の具体的方法については、今後の交渉及び議論を通じて更に明確にしていくことを考えている。
 いずれにせよ、我が国としては、このような考え方が法的文書に反映され、また、これに沿って議論が深められるよう、今後とも努力してまいりたい。