質問主意書

第140回国会(常会)

質問主意書


質問第一六号

ゴミ焼却処分に伴うダイオキシン類の発生防止対策等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年六月十七日

加藤 修一   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   ゴミ焼却処分に伴うダイオキシン類の発生防止対策等に関する質問主意書

 ダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾジオキシンPCDD、ポリ塩化ジベンゾフランPCDF及びコプラナーPCBの総称)は、「史上最強の毒物」ともいわれ、とりわけ2、3、7、8-TCDDはサリンの二倍、青酸カリの約一千倍の急性毒性を持つとされる。また、有機塩素化合物の合成過程や廃棄物の焼却過程等で意図せず生成されるため「非意図的生成化学物質」と呼ばれ、燃焼排ガスや化学物質の不純物として一般環境中に排出される。
 その毒性については、動物実験において、急性毒性・慢性毒性・発ガン性・催奇形性・生殖毒性・免疫毒性等、様々な影響が報告されており、人体への影響についても現在研究を急いでいる段階である。例えば、世界保健機構(WHO)の国際ガン研究機関(IARC)が本年二月四日から十一日にかけて検討した結果として、発ガン性についてこれまで「可能性がある」としていたことから「ある」に変更し、ダイオキシン類の発ガン性を明確に認めることになった。
 発生源に関しては、廃棄物焼却施設・金属精錬施設・塩素漂白施設・農薬製造工程等多岐にわたっている。中でも最近、ゴミ焼却施設からのダイオキシン類の発生が問題とされ、一般廃棄物焼却施設・産業廃棄物焼却施設・医療機関の焼却炉・学校等公共施設の焼却炉などから排出されるダイオキシン類による環境汚染、人体への影響等を指摘する声が高まり、大きな社会問題となっている。
 さらに、国際的には生体の内分泌撹乱化学物質の一つとしてダイオキシン類が取り上げられており、各国間の協力体制による実態の究明とリスク削減が求められている。
 こうした観点から、以下質問する。

一、ゴミ焼却施設排ガス中のダイオキシン類濃度の調査について

1 ゴミ焼却施設からのダイオキシン排出実態調査について
 平成二年十二月にまとめられた「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン検討会」答申において、「ダイオキシン類は連続測定が不可能である」ため、「ダイオキシン類の生成にかかわる因子のうち比較的測定が容易でかつ運転管理上対応が比較的容易なものを連続的に管理」するとし、燃焼温度、CO濃度、O2濃度、排ガス処理装置入口温度等の測定を十分に行う必要性を指摘している。そのため、ガイドラインでは焼却施設の種類毎に、必要な管理項目を連続的、定期的に測定し、十分な対応が取られているかを確認する、としている。また、同様の指摘が平成九年一月に出された「ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会」答申(以下「ダイオキシン類削減プログラム」)にもある。
 これらと平行して、厚生省は都道府県に対し、市町村(一部事務組合を含む、以下同じ)が設置した一、八五四カ所(平成五年度実績)の全ての焼却施設を対象として、平成七年十二月に排ガス中のダイオキシン類測定の有無及び実績等について(以下、第一回調査)、次いで平成八年七月にダイオキシン類の排出実態等の総点検について(以下、第二回調査)実施を要請した。

(1) 第一回調査、第二回調査、それぞれにおける調査の対象、調査項目、調査目的はなにか。
(2) 右記答申の記述に従えば、第一回調査、第二回調査において検討されたダイオキシン濃度以外の項目も公表する必要がある。しかし平成九年四月十一日に発表された文書「ごみ焼却施設排ガス中のダイオキシン類濃度について」ではその報告がなされていない。どのような理由で報告がなされなかったのか。政府の明快な説明を求める。また、今後公表する予定はあるか。
(3) 厚生省が第二回調査実施の要請を行った際に、「捕捉した飛灰中のダイオキシン類濃度についても、併せて測定することが望ましい」としているが、実際に飛灰中のダイオキシン類濃度の測定を行い報告をしてきた焼却施設は具体的にどこか。合計でいくつになるか。また、その結果を示されたい。同時に、飛灰含有のダイオキシン類濃度の測定を任意にした理由は何か。

2 第二回調査における各自治体の報告が遅れている事について

(1) 第二回調査に対する各ゴミ焼却施設からのダイオキシン排出濃度測定結果の当質問主意書提出日(平成九年六月十七日)現在の回答状況を説明されたい。またその後の進展はあるか。
(2) 第二回調査に際し、一九九六年七月各地方自治体に出した通達においては、どのような手順を用いてダイオキシン濃度を測定するように指示しているのか。その中で一度の測定において、いくつの検体を必要とするのか。また通達において、焼却施設の規模、処理能力等の違いによって、ダイオキシン濃度測定の手順、サンプル採取の場所、サンプル数等、異なる点があるか。
(3) 第二回調査において各地方自治体の負担する費用とは最大どれだけのものになるのか。また平均的な費用負担はいくらになるか。焼却炉の処理能力によって違いがあるとすればどのようになるか。
(4) サンプルを採取してから測定結果が判明するまで、通常どれほどの日数がかかるか。
(5) 調査等に対する助成金などはあるのか。あるとすれば、助成金を受けるためにはどのような条件を満たすことが必要か。助成金によって調査を行った自治体はいくつあるか。またその自治体からの調査報告の回答状況について説明せよ。助成金制度がないとすれば、ダイオキシン排出濃度測定調査に対して、今後そのような資金面で援助を行うことを考えているか。
(6) 厚生省の報告によると、厚生省自体としてダイオキシン測定を行う能力をもつ機関として二十四の企業を把握しているようである。また、民間の環境コンサルタント会社に対する当方独自のヒアリング調査によると、ダイオキシン濃度の測定には通常一カ月の期間を要し、費用も一サンプル当たり八十万円前後であるとのことである。そのほかにも規制緩和の結果本年五月三十一日をもってダイオキシン測定分析に関する登録制を廃止し、技術を持てばだれでも測定可能であるということになっている。このような状況下で、ダイオキシン排出濃度調査の対象施設数に比べて、当該測定を行う能力をもつ機関の数が限られているために第二回調査に対する報告が遅れているとするのは納得がいかない。回答が遅れたもしくは遅れている自治体に関して、どのような理由で遅れたのか、政府の見解を求める。

3 第二回調査の報告自体の信憑性について

(1) いくつかの地方自治体では、第二回のゴミ焼却施設排出のダイオキシン濃度測定に関して、検査結果が有利になるように恣意的な操作をしたという報告がされている。調査結果の報告された数値に信憑性がなければ、いくら費用をかけて調査、検査を行っても、国民を納得させるに足る結果は出て来ようはずもなく、当初の目的は達成されることがないだろう。そのような事実を確認しているか。また、その点に関して政府はどのような認識を持っているか。
(2) 各焼却処分場におけるダイオキシン排出量測定結果の報告が遅れているのは、測定結果がかなり高レベルであり、周辺住民への影響を考慮してのこととの憶測も生じている。ダイオキシン類に関しては環境庁の検討委員会でも健康への影響が指摘されており、適切な措置を早急に打たなければならないため、住民への情報提供は的確・迅速にする必要がある。情報公開に関して政府は更なる積極的対応が求められていると思われる。見解を問う。

4 ガイドラインの法的拘束性について

 「ごみ焼却施設排ガス中のダイオキシン類濃度について」(平成九年四月十一日)における今後の対応に、「ガイドラインに基づく対策の徹底」及び「燃焼管理の徹底」、「施設の改造、施設の休廃止等を実施」することがうたわれている。ガイドラインにおいてさまざま順守する基準があるが、どのような拘束力・実効性を持つものなのか。今後の対応を数点にわたって問う。

(1) 規制緩和が社会の要請とはいえ、国民の健康を守るための規制まで緩和することになっては、経済重視、生命軽視との謗りを免れないであろう。「ごみ焼却施設排ガス中のダイオキシン類濃度について」によれば、基準値を満たさない焼却処分施設に関して、一定の猶予期間の後、処分場の閉鎖も含めて規制の強化を図る事を意図していると思われるが、政府の姿勢を確認したい。
(2) 現在政府は、ダイオキシン類の規制強化を図るため、大気汚染防止法の「指定物質」にダイオキシン類を追加することを検討中であるとされている。しかし、大気汚染防止法によれば、罰則規定が無く、その実効性が疑われる。法律の実効性を担保するために、どのような措置を執ることを考えているのか。政府の見解を問う。
(3) ダイオキシン類の生成・排出抑制対策に対して、これまでにどのような行政指導を出しているのか。具体的にいつの時点で、どのような内容の指導を出してきたのかを示されたい。

二 ダイオキシン類の生成・排出に関する現状把握について

1 ダイオキシン類測定マニュアルの整備について

 ダイオキシン類は極めて毒性が高く、超高感度の分析が要求されることが環境庁「ダイオキシン排出抑制対策検討会報告」(平成九年五月)に言われている。また、「測定・分析精度管理の向上、試料採取方法や分析の標準化」の必要性も指摘されているところである。
 またダイオキシン問題が話題になり始めてから、世論も注目を集めだし、市民運動も盛んになっている。これらの市民運動に後押しされる形で厚生省、環境庁等も対策を取りだしたが、市民と政府との相互の議論のなかで食い違いが見られる点の一つとして、ダイオキシン類の測定結果の読み方という点が指摘できる。国民の健康を守るためにも、環境保全を推進していくためにも、世論のバックアップによって強力に対応策を推進していく必要があるが、そのためには客観的で正確な情報が必要とされる。ダイオキシン類測定のための標準的な手法を、各分野にわたって早急に整備することが必要とされている。
 これに関連して、ダイオキシン類測定のためのマニュアルの整備状況についてはどのようになっているか。以下数点に分けて問う。

(1) 測定項目に関する規定において、排ガス、環境大気、廃棄物処理はあるが、そのほかの排水、環境水、焼却灰、土壌、農薬等に関して測定手法を標準化したものはあるか。また、発生源からの距離に関する規定、統計的手法についての規定等で統一したものがあるか。
(2) 以上指摘した項目に関して、これまでに整備されていないとすると、質問主意書提出日現在の検討状況を、検討会・審議会名、検討項目名、中間報告及び最終報告のまとまる予定時期、の三点にわたって示されたい。検討会の俎上に載っていないとすると、今後どの検討会・審議会で、いつぐらいまでに、検討事項として提出する予定であるか。検討予定がないとすると、その合理的な理由を説明されたい。
(3) 環境庁が昭和六十一年から実施している「環境大気中のダイオキシン類モニタリング調査」では分析精度の管理を図るため、分析機関によるクロスチェックを実施しているようだが、環境庁の調査、厚生省の調査、そのほかの公的機関による調査において、クロスチェックを行っている実績はあるか。また、今後そのような予定はあるか。検討会での検討事項に入っているか。入っていないとすれば、すぐにでも検討項目として加えるべきだと思われるが、どのように考えるか。

2 ダイオキシン類測定に関する分析者の育成状況について

 「ダイオキシン排出抑制対策検討会報告」ではまた、「ダイオキシン類の同定は、十分な経験が必要となる」ため、「安定した分析結果を得」、「分析場所周辺環境に影響を及ぼさない」ためにも、分析者の教育訓練等、検査機関の充実が要請され、「公的機関等による統一した教育訓練体制の整備」が必要であることを指摘している。各地の地方自治体のうち独自にダイオキシン濃度の測定を考えているところでも、技術者の育成が大きな課題となっているときく。

(1) これまでに行ってきたダイオキシン測定技術者育成の取り組みについて、実際に行ってきたプログラムの内容と、それぞれのプログラムの予算、実績とに分けて説明せよ。またその取り組みにおいて測定技術者育成の研修制度は設けているか。
(2) ダイオキシン濃度測定技術者育成プログラムがこれまでになかったとすると、その必要性についての認識を伺いたい。また、今後設ける予定があるか。

3 ダイオキシン類測定に関する測定手法簡便化について

 「ダイオキシン排出抑制対策検討会報告」では、環境モニタリングの重要性を指摘した上で、環境モニタリングを効率的、効果的に推進するために、国、地方自治体、事業者、研究者等の協力体制の必要性を指摘している。この協力体制を国民の支持によりバックアップし、ダイオキシン対策を強力に推し進めていくためには、ダイオキシンの挙動が国民自身によって把握できることが望まれる。 SOx、NOx等、大気汚染物質の簡易測定手法を用いた市民運動が世論の大きな流れを形成し、公害防止への強力な推進力となったことはよく知られている。ダイオキシン濃度測定という超高感度の技術を要求する分析が、そのまま市民の手にゆだねうるかどうかは一概に断定できないが、少しでも簡便な手法によって測定可能になるよう努めることが必要なのはいうまでもない。そこで、測定・分析手法の簡便化に関して以下三点にわたり政府の認識を問う。

(1) ダイオキシン排出抑制対策検討会は報告書において「測定・分析方法の簡便化も検討すべき課題である」との認識を示しているが、この課題に対して政府はどのような認識を持っているか。必要性を認識しているか。
(2) 平成九年六月現在の「測定・分析方法の簡便化」に関する取り組みについて進捗状況の報告を求めたい。
(3) 今後の取り組みに対してはどのような考えを持っているか。

4 小型焼却炉によるダイオキシン生成・排出に関する調査の必要性

(1) 家庭用焼却炉・小型焼却炉の使用に伴うダイオキシンの生成・排出に関して環境庁、厚生省、文部省が独自に調査を行ったという実績はあるのか。
(2) 文部省が公立学校(除、高専、大学)の焼却炉によるゴミ処理状況の全国調査を行うことになったとのことであるが、これは焼却炉の使用によってダイオキシンが発生するかどうかを、ダイオキシン排出濃度測定を行うことによって確認するということか。この調査の目的・内容は何か。
(3) 家庭用焼却炉からもダイオキシンが発生することが研究者の測定によって明らかにされたが(脇本忠明他「小型焼却炉残灰中のPCDDs/DFs」『環境化学』 一九九四年、第四巻第二号)、政府はこの点についてどのように認識しているか。またその事実を確認しているか。さらに、検討会の俎上に載っていないように認識しているが、どうか。検討事項として取り上げなかったとすると、その理由について見解を問う。また、今後検討の対象とする予定があるかどうか確認したい。
(4) 公立学校という教育の現場で、ダイオキシンという猛毒が生成され児童を汚染している可能性が指摘されているが、この問題に対する文部省の認識と対応を問う。
(5) 小型焼却炉によるダイオキシンの生成・排出に対して、厚生省、環境庁の専門家による検討を待つ、というのが文部省の基本的な姿勢であると認識しているが、そうであるならば厚生省、環境庁が協力して、早急に小型焼却炉の排ガス及び焼却灰・飛灰中におけるダイオキシンの含有濃度調査を行うべきであると思われる。政府の認識と今後の具体的な取り組みを問う。
(6) 市町村以外の者が設置するゴミ焼却施設及び産業廃棄物の焼却施設も含めた廃棄物の焼却施設から排出されるダイオキシン類の削減対策に関して、現在、生活環境審議会廃棄物処理部会廃棄物処理基準等専門委員会において施設の構造及び維持管理に関する基準の見直し等の規制の方策を検討していると報告を受けているが、この審議会でのこれまでの検討事項を示されたい。

5 産業廃棄物処理におけるダイオキシンの生成・排出の現状調査について

 産業廃棄物処理業者による産業廃棄物の野外焼却処分(いわゆる「野焼き」)によりダイオキシンの生成・排出が危惧されている。阪神大震災の倒壊家屋の処理においても大規模な「野焼き」がなされ、二十五グラムのダイオキシンが生成されたとの調査がある。埼玉県所沢市においては一般廃棄物起源のものより、産業廃棄物起源の煙による汚染がひどいとの指摘もある。

(1) 右記二点にわたる指摘(阪神大震災倒壊家屋焼却処理におけるダイオキシン生成・排出、所沢市での産廃焼却処分によるダイオキシン生成・排出)それぞれについて、政府はどのような事実認識をしているか。
(2) 産業廃棄物の野外焼却処分によるダイオキシン類生成・排出の実態をどのように把握しているか。平成七年度に廃棄物の不法投棄場所等についての実態調査と指導が行われたとのことであるが、調査の概要・結果と指導の内容について示されたい。またその他の事例として、廃棄物の野外焼却におけるダイオキシン生成・排出量の調査を行った事例はあるか。あるとすればそのときの調査結果を数値を示して説明されたい。実態を調査したことがないとすると、その必要性をどのように認識しているか。また今後の対策をどのように予定しているか。
(3) 産業廃棄物処理業者による野焼きの実態をどのように把握しているか。事業者数、処理能力、処理している廃棄物の種類、種類毎の処理量にわたって示されたい。また、登録をせずに産業廃棄物を処理している業者についての実態を把握したことはあるか。ないとすると、登録されていない事業者も含めた実地調査の必要性をどのように考えているか。
(4) 産業廃棄物の野焼きに対する規制、対応処置について法律上、政省令上、行政指導上の規制に分けて説明せよ。

三 ダイオキシンを発生させない努力について

1 分別収集・リサイクルの徹底について

 平成二年十二月に出された「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン」に示された基本的考え方において、ごみの焼却処理の重要性を指摘しつつ、ごみの排出量抑制と再資源化・減量化を行うべき旨が述べられている。また、ごみの焼却によって多種多様な物質が生成されるリスクを指摘する研究者もいる。

(1) これまでに行われたリサイクル・ごみ減量に関するプロジェクトの名前と、事業概要、予算、実績について説明せよ。
(2) 分別収集により、ダイオキシン類生成原因物質と思われるものを焼却しないよう努めることも重要な対策と思われるが、政府の認識、分別収集に関するこれまでの取り組みと、今後の課題・取り組みを問う。
(3) 塩化ビニル等有機塩素系化合物を含むゴミの焼却によってダイオキシンが発生しやすくなるということが一般的に言われているが、現在水道管などのパイプ、ケーブルの被膜、壁紙のコーティング、おもちゃ、などに使用されており、塩化ビニル樹脂の生産量は年間二百二十万トンにのぼっている(原料ベース)。塩化ビニル製品の焼却処分とダイオキシン類の関連について、政府の認識を問う。また、関連があるとするならば、塩化ビニルの分別収集に関する対策をどのように考えているのか。規制的措置を含めて考慮しているか。

2 焼却灰の最終処分に係る対策について

 焼却灰の再利用は、最終処分場の許容量が全国的に残り少なくなっている現在、重要な技術といえよう。また、リサイクルの推進によって、焼却灰を溶融固化処理するインセンティブともなり、結果的にダイオキシンの発生量を抑制する効果を持つと考えられる。
 焼却灰に含まれるダイオキシン類を分解する溶融固化処理施設が、全国十七の市町村において設置されていることが本年四月までに報告されており、九十七年四月以降も香川県東部清掃施設組合において稼働していると報告を受けている。

(1) 厚生省はこの溶融固化処理施設を扱っている企業の全国一覧をもっているか。もっているとすると、そのような情報を各地方自治体に提供することによって、ダイオキシン対策を促進することを図っているか。もっていないとすると、各地方自治体がこのような溶融固化処理施設を導入する際に、厚生省としてはどのように情報提供面でのサポートをしているのか。
(2) 溶融固化処理施設の導入に関して、これまでにどのような課題が提起されているか。厚生省として把握しているものを示されたい。
(3) これらの溶融固化処理施設の導入に関する情報提供を行い、地方自治体のダイオキシン削減対策を情報面で支援するために、厚生省のホームページ等に関連情報をのせることが可能であるか。

3 焼却施設改良期間中のごみ処理について

 ゴミ焼却施設の改良期間中のごみ処理に関して、政府は都道府県に対して、当該市町村が周辺市町村にごみの焼却を委託することができるよう市町村間の調整を図る等必要な市町村に対する技術援助を与えるよう引き続き指導していく、との姿勢を示しているが、このことに関連し三点にわたり問う。

(1) 焼却施設改良期間中のごみ処理における地方自治体間の協力に関して政府の行ってきた行政指導の一覧を、日付、指導内容、指導対象、担当部局の四点にわたって示されたい。
(2) ゴミ焼却処分に関する自治体間の協力体制について、これまでに報告されている事例をモデルケースとして三点、例示せよ。
(3) 今後、ごみの焼却の自治体間の協力体制に関する照会について、政府としてどのように情報提供を図っていくか、もしくはどのように都道府県に対し指導していくか。

四 ダイオキシン類による人体影響の実態調査について

1 住民等の健康被害の実態調査について

(1) 子宮内膜症の増加が言われている。これについての厚生省の実態調査はどのようになっているか。
(2) 過去三十年間における子宮内膜症患者数の推移を、できる限り詳細に示されたい。
(3) 同時期におけるダイオキシンの生成量の推移を、できる限り詳細に示されたい。
(4) 両方のデータの比較において、相関関係、因果関係の2つの観点から考察すると、どのようになるか。厚生省の見解を問う。
(5) 因果関係があるかないかを判断するには、ケース・コントロール・スタディの手法を用いて検査することが考えられるが、妥当であるか。また、それ以外の手法として、因果関係の有無を示す検査方法があれば示せ。
(6) そのように因果関係を示す手法があるのであれば、これらの検査を実行し、国民の不安を解消するための正確な情報を収集すべきである。折しも行財政改革が国民的議論の俎上に載っており、シーリングが見直されている時期でもある。このダイオキシン問題は国民の生命に係る問題であり、リスクマネージメントにおいて政治が行政をリードすべき問題である。政府の認識を問う。

2 健康被害の調査について

 環境庁のダイオキシンリスク評価検討会報告書において「ごみ焼却施設周辺における暴露の状況」として推計値が計算されている。ここでは、ダイオキシン類の環境濃度の設定として、最大着地濃度地点での大気降下量と、産業廃棄物焼却場周辺でのダイオキシン類の実測値を用い、食物起源、水起源のダイオキシン類と合計してダイオキシン類の暴露状況が推計されている。しかし、報告書には産業廃棄物処理場周辺住民のダイオキシン類暴露状況を実態調査した結果は報告されていない。
 また、本年五月には厚生省が中心となって環境庁、労働省の三省庁合同でダイオキシンの人体影響に関する調査を行っていくとの報道がなされた。
 これらに関連して、ダイオキシンの人体への影響に関する実態把握の現状について伺う。

(1) 三省庁合同でダイオキシンの人体影響調査を行うというプロジェクトについて、事務レベルの協議が始まったとの報告があるが、本質問主意書提出日現在の進捗状況を報告されたい。また、その後の進展はあるか。
(2) 厚生省及び環境庁の複数の検討委員会の委員である摂南大学の宮田教授によれば、ごみ焼却施設従事者の毛髪には、一般の市民の毛髪と比較して三から五倍ものダイオキシンが蓄積されているという研究報告がされており、さらに焼却炉内の補修に携わる職員の毛髪は、ダイオキシン蓄積濃度がさらに高かったとされている。この研究について政府はどのように認識しているか。また、事実を確認するために何らかの実地調査を行ったか。実地調査を行った時期と調査の内容、その結果を説明されたい。
(3) ゴミ回収業従事者、破砕処理施設・市町村ゴミ焼却施設・民間ゴミ焼却施設・産廃処理施設・最終処分場等の職員数を示されたい。また、職員を対象とした健康調査のうち、ダイオキシン暴露状況を調査したものはあるか。そのときの結果を説明されたい。
(4) ダイオキシン類の人体影響調査に関しては、どのような項目を調査するかといったことを含めて、事務レベルで検討中であり、検討会等も立ち上がっていないと認識している。今後の日程のなかで人体への影響調査の内容等を検討する際、ごみ焼却場及び産業廃棄物処理場の周辺住民、さらにはごみ焼却施設職員、産業廃棄物処理業者の健康影響を一般の市民への健康影響と区別して調査するべきだと思うが、政府の見解を問う。
(5) ごみ焼却施設の作業環境中のダイオキシン濃度を測定した例が「ゴミ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」(平成九年一月)の参考資料として添付されているが、この出典を明らかにせよ。当方独自の調査によれば、この出典となっている廃棄物研究財団は、この測定調査がいつ、どこで、どのように行われたものであるかは認識していないとのことであった。出典のはっきりしていないものを国民の健康上重要な問題を討議する検討会の場で資料として用いることは、検討会自体への国民の信頼を失わせることにもつながり、あってはならないことである。この点についての政府の認識を問うとともに、資料八-一「作業環境中のダイオキシン類濃度測定例」の出典、もしくは測定者、測定日時、測定方法等を責任をもって示されたい。

3 ダイオキシン類のホルモン様作用に関する研究体制について

 環境庁「ダイオキシンリスク評価検討会報告書」(平成九年五月)によると、2、3、7、8-TCDDの発ガン性は直接的な細胞の形質変換活性を持っているのではなく、間接的な作用かあるいは細胞増殖作用(プロモーション作用)によるものと考えられており、多くの生化学的研究から代謝酵素の誘導、EGF受容対数の減少及びホルモン様作用を有していることが明らかとなっている、と確認している。
 また、ダイオキシン類の生殖毒性に関し同報告書は、発生過程において、2、3、7、8-TCDDは酵素の誘導や、成長因子、ホルモン及びそれらの受容体への影響を通して、通常のホメオスタシスとホルモンバランスを変化させ、内分泌の撹乱因子として、組織特異的、発生段階特異的、時期特異的な作用を及ぼしていると考えられていることを報告している。
 このようにダイオキシン類は生体に対して強烈な急性毒性を持つほかに、ホルモン様作用を及ぼし、内分泌系を撹乱する可能性が指摘されているが、この問題は国際的には通称「内分泌撹乱化学物質問題(エンドクリン問題)」として注目を集めているところである。

(1) エンドクリン問題は人体の生殖作用に影響を及ぼす問題であるだけに、人類の未来にとって非常に重要な課題と思われる。この点に関する政府の認識を問う。
(2) エンドクリン問題に関しては、現在厚生省・環境庁・通産省が予算をつけて研究を開始したと聞いている。また、その他の関係省庁として労働省・農水省等が考えられるが、予算措置の内容、経過を具体的に説明されたい。また、その研究の中にダイオキシン類に関する調査・検討等は含まれているか。
(3) 欧州では、イギリス、デンマーク、オランダ、フランス、スウェーデンの研究機関で、種々の研究が進んでいる。疫学および実験研究は、この半世紀にわたり環境汚染物質に関して多くの新しい仮説を提示してきた。エンドクリン問題において、自然界の動物への環境汚染物質のホルモン様効果はほぼ立証されているが、人の疫学データに関してはまだ確かな根拠がない状態である。現在、各国でこの因果関係、スクリーニング方法、毒性評価システムの確立に向けた努力が精力的になされている。これらの研究に対する政府の明確な認識と、今後の協力体制に向けた努力目標を示せ。

五 ダイオキシン問題に関する積極的な情報公開について

1 情報公開への政府の姿勢と取り組みについて

 この度ダイオキシン類問題の調査を進めるに当たって、厚生省内外の多くの関係部署にさまざまな資料を要求する必要に迫られた。国民の健康を保証するためにどのような対応策が考えられるかを真剣に検討するためには、ダイオキシン問題に対する厚生省のこれまでの対応を正確に把握したうえで、今後の手立てとして何が可能で、何が不可能であるかを考える必要があったからである。
 そのため、関連省庁のかなりの時間と労力を使って協力を得ることとなり、その反面、関係機関の通常業務に充当する時間・労力を減らすこととなった。すなわち、一部の情報に関してはインターネットの厚生省ホームページ等で閲覧することができ参考にしたが、網羅的なものではなく、疑問となる点に関して回答が見い出せず、最終的に政府委員室、本庁に問い合わせる結果となったためである。このことは、省庁の情報公開の必要性を痛烈に感じる契機ともなった。
 当然省庁内のすべての情報を公開することは、業務文書の性格上無理なことであり、またその処理作業の労力を考えると物理的にも不可能であろう。しかし、国民の情報公開に対する要請が高まりつつある今日、一つ一つの問い合わせに対して返答を用意するよりも、ルーチンワークとして情報の電子化を進め、インターネット等検索機能の充実した媒体を用いて情報を公開していくほうが、省庁にとっても有効な手立てとなると思われる。
 一つの問題に対してこれまでにどのような問い合わせがなされ、どのような回答をしてきたのか、また通常業務においてどのような職務を遂行しているかなどを、一元的に把握できるような情報源が切に待たれているといってよい。
 行政府と立法府、さらにはその主である国民とのあいだの誤解と不信による余計な軋轢を取り除き、国民のための行政・政治を円滑に実現していくためにも、政府が積極的に情報公開に取り組んでいくことを希望する。

(1) これまでの厚生省の情報公開に関して行ってきた業務とはどのようなものか。
(2) 厚生省のダイオキシン問題に関するホームページに記載されている情報は、どのような基準で選択されているのか。
(3) ダイオキシン問題についての情報公開の必要性に関する政府の認識はどのようなものか。また、今後どのように情報公開を進めていくのか。現在検討中であれば、いつ、どの検討会で、どのような審議がなされてきたのかを示されたい。

  右質問する。