質問主意書

第140回国会(常会)

質問主意書


質問第一四号

プルトニウム利用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年六月十六日

清水 澄子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   プルトニウム利用に関する質問主意書

 わが国は平成九年二月十日、欧州共同委員会との交換書簡(以下、「EC交換書簡」という)及びベルギー王国との交換書簡(以下、「ベルギー交換書簡」という)を池田外務大臣署名で交わした。この交換書簡では、東京電力株式会社(以下、「東電」という)のベルギー王国におけるプルトニウム混合燃料加工(以下、「MOX加工」という)に係る核物質防護、保障措置、輸送等に触れているが、このようなエネルギー政策に関わる事項は、国会へ報告されるべきであると思うので以下交換書簡とプルトニウム利用に関して質問をする。

一 ベルギー交換書簡の内容について

 書簡によれば東電は、MOX加工に際して一回目の輸送でフランスからプルトニウム二二一キログラムを、日本からウラン一五四四キログラムを一九九七年二月十日から一九九七年九月までに、二回目の輸送でフランスからプルトニウム二六二キログラムを、日本からウラン一五四四キログラムを一九九七年三月から一九九八年七月までに、ベルギーへ運ぶことになっている。

1 政府は東電が、ベルギーにおけるMOX加工委託契約をいつ、どこと結んだのか承知しているか。
2 政府に対する東電のMOX加工委託契約等に係る届出、報告は、いつどこの官庁にあったのか。
3 書簡によれば東電は、ベルギーへの一回目のプルトニウム、ウランの輸送を一九九七年九月までに行うことになっている。

(1) 政府は東電が、このような契約をいつ、どこと結んだのか知っているか。結んでいないとすれば、どのような形式で、このような約束になったのか。
(2) 関係官庁は、このような契約または約束をいつ、どのようにして知ったのか。また、承認、許可等をいつしたのか。

4 書簡では、MOX加工に使用するウラン三〇八八キログラムを日本から運ぶことになっている。

(1) 海外MOX加工に使用するウランは、今後も日本から運ぶのか。今回だけの処置なのか。
(2) 今回、何故フランスなどの欧州からウランを調達せず、遠い日本から運ぶことにしたのか。その理由は何か。
(3) フランスで再処理した回収ウランはMOX加工に使用しないのか。
(4) 海外回収ウランは、どのように利用するのか。廃棄物として処理をするのか。

5 今回のプルトニウム四八三キログラム、ウラン三〇八八キログラムを単純に計算すると富化度は一三・五%になってしまう。

(1) 今回のMOX加工燃料の富化度は何%か。
(2) プルトニウムの組成比は、どのようになっているのか。

二 ベルギー交換書簡の効力と手続きについて

 わが国は原子力事業を推進する際には、国民の合意と国会の承認を受けてきた。海外における原子力事業の際には、当該国との原子力協定を結び関係国の承認を得て行っている。

1 わが国は、ベルギーと原子力協定を締結していない。MOX加工の委託に際しては、ベルギーと原子力協定の締結を必要とするのではないか。いつ、締結するのか。必要ないとすれば、その理由は何か。
2 今回のベルギーとの交換書簡は、原子力政策上重要な内容を含んでおりながら、その内容は国民にも知らされず、国会の場でも論議されていない。

(1) ベルギー交換書簡の内容を内閣は承認しているのか。
(2) 何故、国会の場で論議されず、国会承認もされていないことが具体的に進展しているのか。

3 この交換書簡は、池田外務大臣とベルギーのベルドンク臨時責任者が署名をしているが、国と国との約束としての有効性はどのようにあるのか。
また、この交換書簡は、協定、政府交換公文、口上書、覚書などでいえばどの類になるのか。
4 この交換書簡によって、ベルギーにおけるわが国の核燃料物質の核物質防護及び保障措置は、ベルギーによって保証されるのか。

三 EC交換書簡について

1 この交換書簡は、池田外務大臣とEC駐日代表部ケック大使が署名をしているが、国と共同体との約束としての有効性はどのようにあるのか。
 また、この交換書簡は、協定、政府交換公文、口上書、覚書などでいえばどの類になるのか。
2 この交換書簡によって、ベルギーにおけるわが国の核燃料物質の保障措置はECによって保証されるのか。ECに保障措置を保証する権限があるのか。
3 この交換書簡の相手として、欧州連合または欧州原子力共同体ではなくECであることの理由は何か。

  右質問する。