質問主意書

第140回国会(常会)

質問主意書


質問第一一号

古紙価格の大暴落への対策と古紙リサイクルに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年六月四日

上田 耕一郎   
緒方 靖夫   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   古紙価格の大暴落への対策と古紙リサイクルに関する質問主意書

 日本における古紙回収は、民間リサイクル業者の職能や市民ボランティアの力が発揮された経済性と効率性のよい回収システムによって支えられている。使用された紙は、民間の再生資源業者をはじめ、自治体、PTA等によって五三%~五五%が回収されている。回収された古紙は、全体で年間一千五百九十二万トン(一九九六年)が再資源化されている。
 ところが古紙価格の暴落で、重大な事態がひきおこされている。昨年九月から本年二月までに、製紙メーカーが新聞、段ボール、雑誌等の古紙価格を四回にわたって値下げをしたため、関東の大手問屋三十二社の在庫量は十二万トンをこえている。それに加えて、昨年一二月から開始された東京都二十三区の事業系ごみの有料化によって、中小企業、商店から資源回収に回される古紙の量が急増した。このような窮状を打開するため、関東圏の古紙問屋は六月一日から雑誌の回収を当面見合わせるよう、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬の市区町村に要望書を送るという事態になっている。現在、問屋の古紙受け入れ価格は、新聞や、段ボールでキロあたり四~五円、色紙が二~三円、雑誌にいたっては「マイナス」価格まで出現している。さらに、集団回収のボランティア団体や回収業者に対して逆有償を求める動きすら見られる。回収業者は、キロあたり八~十円の回収コストが確保できず、「コスト割れ」になるというかつてない深刻な事態が生じている。
 古紙増大の大きな要因の一つは、一九九二年に日米両政府間で合意された紙の輸入拡大措置である。日米政府間の合意にもとづいて、外国紙製品の輸入を増やし、古紙供給を増大させる一方、国内古紙再利用の需要をせばめてきたことが、古紙の在庫を増大させる要因になっている。
 もう一つの要因は、政府が「再生資源の利用の促進に関する法律」にもとづく省令で定めたリサイクル目標を実行していないことである。政府は、九一年一〇月に、通商産業省令第五十三号で、九四年までに古紙利用率を五五%にすることを定めている。しかし、その目標が未達成に終わった。政府はその未達成の原因の究明と、その後の改善措置をあいまいにしたまま九五年六月に通商産業省令第五十六号で、二〇〇〇年までに五六%に向上させるという目標に改めた。
 今日の事態は、政府の古紙利用に対する消極性と政府の古紙リサイクル政策の破綻に要因があることは明白である。
 古紙の再利用の拡大が急務となっている中で、製紙業界の一部にはこれに逆行する動きが生まれている。すなわち、トイレットペーパーをバージンパルプ一〇〇%で生産し、低コストの安売り商品としてスーパーなどに出していることである。これによって再生紙利用のトイレットペーパー製造業者の経営が成り立たなくなってきている。また、一部新聞業界は、古紙混入率のきわめて低い「超々軽量紙」を新聞用紙として導入することを検討していると言われている。このような動きによって、事態が一層深刻になることは必至である。
 「再生資源の利用の促進に関する法律」は、第一条で、「この法律は、主要な資源の大部分を輸入に依存している我が国において、近年の国民経済の発展に伴い、再生資源の発生量が増加し、その相当部分が利用されずに廃棄されている状況にかんがみ、資源の有効な利用の確保を図るとともに、廃棄物の発生の抑制及び環境の保全に資するため、再生資源の利用の促進に関する所要の措置を講ずることとし、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」と定めている。したがって、政府には古紙の再利用促進をすすめる責任がある。古紙の価格大暴落への対策と古紙リサイクルを一層効果的にすすめることは、古紙回収業者、古紙卸売業者の営業を守るとともに、パルプの使用を抑え、熱帯雨林などの森林保護、地球環境保護のために重要なことである。
 そこで、以下質問する。

一、政府が一九九二年の日米政府協議の結果実施されることになった「日本における外国紙製品の市場アクセスを増大させる措置」をとって以降、紙製品の輸入が増大している。
 一九九一年から一九九六年までに日本に輸入された紙・板紙の年別の量、およびそれぞれの日本への輸出国別内訳を明らかにしていただきたい。そのうち、新聞用紙、印刷・情報用紙、包装用紙の量がどの程度になっているかを明示していただきたい。

二、一九九一年から一九九六年までの間に日本国内で生産された紙・板紙についてそれぞれの量を年別に明らかにしていただきたい。そのうち、新聞用紙、印刷・情報用紙、包装用紙の量がどの程度になっているのか、またそれらに含まれている古紙の量がどの程度になっているのか明示していただきたい。

三、一九九二年以降紙製品の輸入が増大しているが、少なくともその量を最低九一年水準まで輸入量を減らす措置をとるべきではないか。

四、一九九四年度までに古紙利用率を五五%にするという通産省の目標は、一九九六年度でも五三・六%と未達成に終わった。その要因は何であったのか。また、通産省は二〇〇〇年までに古紙利用率を五六%にする目標を決定したが、その目標達成のためにどのような具体的な対策をすすめているのか明らかにしていただきたい。

五、古紙利用率を上げるため、パルプ使用を抑制し、古紙使用量を拡大するためのガイドラインをつくるべきではないか。

六、製紙会社による古紙価格値下げは、昨年九~一〇月に実施され、時期、下げ幅とも一律に行われた。政府は、製紙メーカーにたいし、古紙回収業者、古紙卸売業者など民間リサイクル機構がその経営を維持できる古紙回収コストを保障するように行政指導すべきではないか。

七、価格が暴落している古紙の需要を高めるために、新宿区、世田谷区、豊島区などの計十三の商店会、商店街振興組合の会長、理事長が、教科書への再生紙全面使用を政府に要請する取り組みをすすめている。資源を有効活用し、古紙の需要を増すために、リサイクルに関する教育を促進し、国民のリサイクル意識を高めるためにも、教科書に再生紙を使用する量を増やすよう研究・検討すべきではないか。

八、バージンパルプ一〇〇%のトイレットペーパーが安売り商品として大量に出回っているが、これを規制して、トイレットペーパー、衛生紙の古紙利用率の最低限度を決めて指導すべきではないか。
 また、新聞用紙に「超々軽量紙」を導入しようとする動きがあるが、これは古紙利用率の低下につながるものであり、政府として規制すべきではないか。
 さらに、新聞古紙のリサイクル量を増やすために、新聞の折り込みチラシに新聞用紙を使用する等、政府として何らかの対策を講ずるべきではないか。

九、一九九五年度補正予算で一億九千万円の低級古紙新規用途開発費補助金がつけられた。この補助金を活用し、下水汚泥処理時に古紙を混ぜて、油をかけなくても燃えるようにする研究や、アスファルトに古紙を混ぜるなどの用途拡大の研究がなされているということであるが、これらが実用化された場合の年間古紙利用量はどのくらいになると試算しているか。

十、今後古紙利用量拡大のために、建材などへの用途の拡大のための研究態勢をさらに強化すべきではないか。

  右質問する。