質問主意書

第140回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

ごみ処理に伴うダイオキシン類の発生防止対策等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成九年四月八日

荒木 清寛   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   ごみ処理に伴うダイオキシン類の発生防止対策等に関する質問主意書

 ダイオキシン類は自然界には存在しない化学物質で「人類が作り出した最強・最悪の毒物」ともいわれている。有機塩素化合物の生産過程や廃棄物の焼却過程等で、非意図的に生成され、燃焼排ガスや化学物質の不純物として一般環境中に排出される。
 その毒性については、動物実験において、急性毒性・慢性毒性・発ガン性・催奇形性・生殖毒性・免疫毒性等の広範囲にわたる毒性影響が報告されてきた。ダイオキシン類の人間への影響評価については、世界保健機関(WHO)の国際ガン研究機関(IARC)が本年二月四日から十一日にかけて、見直しを行ったワーキンググループの検討結果として、発ガン性についてこれまでの「可能性がある」から「ある」に変更し、ダイオキシン類の発ガン性を明確に認めた。発生源も一般廃棄物焼却施設・産業廃棄物焼却施設・医療機関の焼却炉・学校等の公共施設の焼却炉な多岐にわたっている。特に最近、一般廃棄物焼却施設及び産業廃棄物焼却施設から排出されるダイオキシン類が周辺住民に不安を与えるとともに社会問題化しており、ダイオキシン類の排出削減が緊急の課題となっている。
 こうした観点から、以下質問する。

一 ごみ焼却施設排ガス中のダイオキシン類濃度の調査について

1 厚生省は都道府県に対し、市町村(一部事務組合を含む)が設置した一、八五四(平成五年度実績)の全ての焼却施設を対象として、平成七年十二月に排ガス中のダイオキシン類測定の有無及び実績等の報告を求め、次いで平成八年七月にダイオキシン類の排出実態等の総点検調査の実施を要請した。ところが、都道府県から厚生省に対する報告施設数は、前者がわずか五・六%の一〇四施設、後者が三二・四%の六〇一施設で、二度の調査による報告施設数を合算しても三八・〇%の七〇五施設でしかなかった。
 厚生省は、このような低調な報告の要因について、どのように分析しているのか。
2 二度にわたる調査でいずれも報告がなかった県はどこか。また、報告施設数が平均三八・〇%を下回った県はどこか。
3 二度にわたる調査の結果は、およそ総点検調査とは言い難いものであり、今後ダイオキシン類の削減対策を検討、実施する上での基礎資料としては全く不十分ではないかと思われる。残る六二・〇%の一、一四九か所に係る補足調査の実施について、政府は今後どのように取り組むのか、そのスケジュールと方策の内容を問う。
4 これまでに実施した二度の調査は市町村(一部事務組合を含む)が設置した焼却施設しか調査対象としていない。これはなぜか。民間が設置した一般廃棄物焼却施設は一日当たり五トン以上の処理能力を有する焼却施設が平成六年度実績で全国五七か所(愛知県に一一施設、東京都・広島県に各六施設、兵庫県に五施設、千葉県・神奈川県・大阪府・愛媛県に各四施設、静岡県・三重県に各三施設、山形県・長野県に各二施設、北海道・秋田県・群馬県に各一施設)存在する。これらを含めて、全ての一般廃棄物焼却施設についてダイオキシン類排出濃度の調査を実施するとともに、ダイオキシン類排出削減対策を講じさせる必要があると考えるが、今後の政府の取組みはどうか。
5 産業廃棄物の焼却施設が平成六年四月一日現在で全国に三、三七六か所ある。
 厚生省は、これら産業廃棄物焼却施設について、ダイオキシン類の排出濃度調査を実施していないが、どうして実施しないのか。周辺住民の不安には焼却施設が焼却している廃棄物が一般廃棄物か、産業廃棄物かの区別はなく、政府の姿勢は全く理解に苦しむ。産業廃棄物の焼却施設についても、直ちにダイオキシン類の排出濃度調査を実施するとともに、ダイオキシン類の排出削減対策を講じさせるようにすべきではないかと考えるがどうか。

二 ダイオキシン類排出濃度測定結果の公表について

1 報告のあった七〇五施設のうち、厚生省が本年一月二十三日にまとめた「ごみ処理に係るダイオキシン類発生等ガイドライン」(新ガイドライン)の緊急対策の判断基準である八〇ナノグラム(一ナノグラムは十億分の一グラム)を超えている施設は五二であった。厚生省は、この五二の施設の施設名を伏せた排出濃度一覧表を一部マスコミに提供しているが、こういった作為は由々しき情報隠匿であり問題である。施設名を明らかにしてきちんと公表すべきであると考える。
 住民の不信感を払拭するためにも、最低限当該五二の施設については必要な情報を公開することによって、住民と協力して対策を講じていくことが重要であるが、政府の対応を問う。
2 ダイオキシン類排出濃度測定結果を公表している都道府県の状況について厚生省に照会したところ、去る三月二十四日に「把握していない」との書面での回答があったが、納得できない。
 千葉県は本年二月二十五日に、県内五四の一般廃棄物焼却施設全てに係るダイオキシン類の排出実態調査の結果を公表するとともに、県内の七施設が判断基準値である八〇ナノグラムをオーバーしていることを明らかにしたが、県議会における答弁に当たり、県当局は「公表時期については、厚生省と調整を取りたい」としていたことを把握している。また、福岡県は本年三月の定例議会の一般質問で県内の三施設が判断基準値をオーバーしていることを明らかにしている。「把握していない」とのいい加減な回答は直ちに撤回しきちんと明らかにすべきではないか。
3 行政が住民の信頼を得るには情報公開を積極的に進めなければならないが、厚生省は都道府県に対し、ダイオキシン類排出濃度測定結果の公表を抑えるような行政指導を行ってきたのが偽りのないところではないのか。この間の経緯について、政府の説明を求める。
4 今回報告された全てのダイオキシン類排出濃度測定結果について、隠すことなく直ちに公表すべきであると考えるが、政府の見解を問うとともに、早急な対応を求める。
 特に厚生省は都道府県に対し、ダイオキシン類排出濃度測定結果を進んで公表するよう通知を発すべきではないかと考えるがどうか。

三 既設焼却炉の改良等に対する助成措置の強化について

1 排出濃度が新ガイドラインの緊急対策の判断基準値である八〇ナノグラムを超える施設については、早急に具体的な削減対策を実施しなければならないが、全連続炉への切替え、バックフィルターの設置等の改良費用の捻出と改良期間中のごみの処理に頭を抱えている市町村が少なくないと思われる。政府は助成措置の強化についてどう考えているか、方策を問う。
2 国庫補助の在り方を早急に検討し直す必要がある。特に公害防止地域に指定されていない財政力の弱い市町村については、補助の拡充が是非とも必要ではないか。
3 焼却施設改良期間中のごみ処理については、当該市町村の枠を超えた対応が必要になるが、当該市町村まかせでは対応が難しいのではないか。政府はどのように都道府県を指導していく考えか。
4 ごみ焼却施設の作業員の労働環境の改善のための助成の強化も検討すべきではないかと考えるがどうか。

四 焼却灰の最終処分に係る対策について

1焼却施設における焼却灰の処分は市町村等の共通の悩みである。焼却灰に含まれるダイオキシン類を分解する溶融固化処理の技術開発が進み既に実用化の段階に達しているが、どの程度の市町村等で導入されているか。
2 溶融固化処理に伴って発生するスラグの再生利用の状況についても説明されたい。

五 ダイオキシン類規制条例の制定等自治体の対応に係る政府の評価について

1 埼玉県所沢市議会が本年三月の定例議会で「ダイオキシンを少なくし所沢にきれいな空気を取り戻すための条例」、いわゆるダイオキシン類規制条例を全会一致で可決・制定し、六月に施行する。このような条例制定は全国で初めてか。
 埼玉県所沢市に続いて、ダイオキシン類規制条例を制定する市町村が少なからず出てくることが予想される。こうした動きについて、政府はどのように受け止め評価しているか。
2 埼玉県所沢市では、小中学校に設置されている焼却施設の運用を停止したところもあると報じられている。政府は学校等の教育現場におけるダイオキシン類への対応についてどこまで実態把握を行っているのか、明らかにされたい。

  右質問する。