質問主意書

第139回国会(臨時会)

答弁書


第百三十九回国会答弁書第一号

内閣参質一三九第一号

  平成九年三月二十一日

内閣総理大臣 橋本 龍太郎   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員竹村泰子君提出小麦と小麦粉の安全性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員竹村泰子君提出小麦と小麦粉の安全性に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘の厚生省がん研究助成金による研究については、昭和五十六年度の研究報告集によれば、臭素酸カリウムの含有率(当該物質の重量をその物質が含まれる物の重量で除した数をいう。以下同じ。)が百万分の二百五十及び百万分の五百の飲料水によりそれぞれ経口投与実験を行ったところ、いずれの投与においてもF三四四ラットには腎腫瘍を誘発したが、雌B六C三F一マウスにはがん原性を示さなかったと報告されている。

一の2について

 御指摘の論文は、臭素酸カリウムと、二-(二-フリル)-三-(五-ニトロ-二-フリル)(以下「AF-二」という。)、わらび、ふきのとう、過酸化水素及びブチルヒドロキシアニソール(以下「BHA」という。)を、その発がん性について比較したものであるが、被験動物の半数に腫瘍を発生させる量(以下「半数腫瘍発生量」という。)という点においては臭素酸カリウムの発がん性が最も強いが、安全率(当該物質又は食品の通常の摂取量を半数腫瘍発生量で除した数)という点においては、BHA、ふきのとう、臭素酸カリウム、わらび、過酸化水素、AF-二の順に安全性が高い旨を報告したものである。

一の3について

 臭素酸カリウムは、自然界には存在していないものと理解している。

一の4について

 御指摘の食品添加物である臭素酸カリウムの年間生産量については承知していないところであるが、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第二十一条に基づく添加物製造業の許可を受けた者を対象に、臭素酸カリウムの出荷量及び食品用使用量を調査した報告によると、その量は次のとおりである。

図 表

 備考 調査は昭和五十九年度より三年ごとに、前年度の数字をまとめたもの。
 なお、昭和五十七年の日本食品添加物団体連合会の調査によると、臭素酸カリウムの使用量については、魚肉練り製品製造用に年間四トンから五トン、パン製造用に年間三トンから四トンと報告されている。

一の5について

 食品衛生法第七条第一項の規定に基づき定められた食品、添加物等の規格基準(昭和三十四年厚生省告示第三百七十号。以下「規格基準告示」という。)においては、添加物としての臭素酸カリウムの使用に関し、「使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定しているところであり、同条第二項の規定により、この基準に合わない方法による食品又は添加物の製造、販売等をしてはならないこととされているところである。

二の1について

 国連食糧農業機関(以下「FAO」という。)及び世界保健機関(以下「WHO」という。)による合同食品添加物専門家会議(以下「JECFA」という。)は、添加物等に関する専門的な情報等の評価、技術的な勧告等を行うために開催されているものであり、添加物等に関する安全性評価、添加物の成分規格の作成等の活動を行っているところである。

二の2について

 一般に「一日摂取許容量(ADI)」とは、人が生涯にわたり毎日その物質を摂取し続けたとしても、安全性に問題のない量であると考えている。

二の3、4及び5について

 御指摘の「A(1)リスト」及び「A(2)リスト」とは、JECFAの勧告並びにFAO及びWHOによる食品規格委員会の勧告に基づき、FAO及びWHOによる合同基準計画事務局によって作成されていたものであるが、昭和五十四年を最後に、新しいリストは公表されていないと承知している。

二の6について

 第四十四回のJECFAの報告書によれば、臭素酸カリウムについて、(イ)これまで合計四回その成分規格及び安全性について検討したこと、(ロ)第三十九回のJECFAにおいて、遺伝子傷害性の発がん物質であり、小麦粉処理剤としての使用は適当ではないとの結論に至ったこと、(ハ)今回(第四十四回)の会議では、パン中の臭素酸カリウムを分析するために新しく開発された質量分析計を検出器として用いるガスクロマトグラフ法及び誘導結合プラズマをイオン化源とした質量分析計を検出器として用いる方法によって、臭素酸カリウムによって処理された小麦粉を用いて製造したパンから臭素酸の残留が認められたこと及び新しい毒性データは入手できていないことから、第三十九回のJECFAの結論が従前どおり適用されることが報告されていると承知している。
 また、試験方法については、同報告書によると、「質量分析計を検出器として用いるガスクロマトグラフ法」と記載されているが、同報告書で試験方法について引用された文献においては、電子捕獲検出器を用いるガスクロマトグラフ法及び誘導結合プラズマをイオン化源とした質量分析計を検出器として用いる液体クロマトグラフ法が検討された旨記載されており、質量分析計を検出器として用いるガスクロマトグラフ法に関する記載はない。

二の7について

 御指摘の英国政府の措置については承知している。その経緯については、英国農業漁業食品省が平成元年十一月に公表した資料によると、専門家からなる英国政府の食品諮問委員会並びに食品、消費者製品及び環境中の化学物質の毒性に関する委員会において、当時定められていた使用の基準では、最終食品に臭素酸カリウムが残留しないという確証が得られないとされたことから、使用が許可されている添加物リストから臭素酸カリウムを削除するという提案がなされた旨記載されている。
 欧州連合(以下「EU」という。)においては、平成六年以降、販売等が認められる添加物の範囲を添加物に関する指令により定めているところであるが、その中に、臭素酸カリウムは記載されておらず、結果として、当該指令においては臭素酸カリウムの添加物としての販売等が認められていないところである。また、EUの事務局に照会したところ、公定の臭素酸カリウム測定方法は定められていない旨の回答を得たところである。
 なお、平成二年、EUの食品科学委員会より、最終食品中における臭素酸の残留の可能性が否定できないこと、パンの製造に従事する者への臭素酸カリウムの影響等にかんがみて、小麦粉処理剤としての臭素酸カリウムの使用を中止するべきである旨の報告がなされている。

二の8について

 米国食品医薬品庁に照会したところ、臭素酸カリウムの添加物としての使用を禁止している州政府は承知していないとの回答を得たところである。

二の9について

 我が国においては、規格基準告示に「使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定していること等から、直ちに、その取扱いについて見直しを行う必要があるとは考えていない。

三の1について

 食品衛生法第六条の規定に基づき人の健康を損なうおそれがない場合として新たに添加物を定める場合等に、当該添加物に関するJECFAの安全性評価結果等を食品衛生調査会に提出することにより、食品衛生行政の参考としている。

三の2について

 食品衛生調査会は、食品衛生法第二十五条第一項の規定に基づき、厚生大臣の諮問に応じ、食中毒の防止に関する事項、食品添加物公定書の作成に関する事項その他食品衛生に関する重要事項を調査審議させるために置かれるものである。

三の3について

 現時点における食品衛生調査会の委員の氏名及び所属は、次のとおりである。

図表 1/4

図表 2/4

図表 3/4

図表 4/4

三の4について

 御指摘の「食品衛生調査会毒性・添加物部会」とは、食品衛生法施行規則(昭和二十三年厚生省令第二十三号)第二十五条の二に基づく食品衛生調査会運営規程(以下「運営規程」という。)第六条第一項により食品衛生調査会に置かれる毒性部会及び添加物部会を合同して開催する場合の通称である。その所掌は、運営規程第七条第五項及び第六項において、それぞれ、食品、添加物、器具及び容器包装の毒性に関する事項その他必要事項について調査審議すること並びに添加物の規格基準に関する事項、添加物公定書に関する事項その他必要事項について調査審議することが規定されている。

三の5について

 現時点における毒性部会及び添加物部会の委員の氏名及び所属は、次のとおりである。また、毒性部会の部会長は戸部満寿夫委員、添加物部会の部会長は山崎幹夫委員である。

図表 1/2

図表 2/2

三の6及び7について

 毒性部会及び添加物部会は、厚生大臣が諮問した事項のうち、運営規程第八条の規定により、委員長より付議された事項を調査審議するほか、食品衛生法第二十五条第二項の規定により、食品衛生調査会が厚生大臣に意見を述べるため、食中毒の防止に関する事項、食品添加物公定書の作成に関する事項その他食品衛生に関する重要事項について調査審議することができるものである。

三の8及び9について

 昭和五十七年五月七日の食品衛生調査会の意見具申以降、臭素酸カリウムの取扱いに関し、食品衛生調査会に諮問がなされたことはなく、また、臭素酸カリウムの取扱いを調査審議するための毒性部会又は添加物部会は開催されていない。

三の10及び11について

 仮に臭素酸カリウムを食品衛生法第六条の規定に基づき人の健康を損なうおそれのない場合として厚生大臣が定めるものから削除した場合、臭素酸カリウムが添加された小麦粉や小麦粉調製品は同条の規定により輸入が禁止されることとなる。
 なお、輸入食品が食品衛生法に適合しているか否かの輸入時の取締りは検疫所において実施しているところである。

三の12について

 食品衛生法第七条第一項に基づき規格基準が定められた食品、添加物等については、同法第十四条第一項、第十五条及び第十七条第一項に基づき検査を実施しているところであり、臭素酸カリウムに対象を限定した特別の監視及び追跡調査は実施していない。

三の13について

 我が国においては、規格基準告示に「使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定していること等から、直ちに、その取扱いについて見直しを行う必要があるとは考えていない。

四の1について

 臭素酸カリウムの添加物としての使用等については、規格基準告示において、「臭素酸カリウムは、パン(小麦粉を原料として使用するものに限る。)以外の食品に使用してはならない。臭素酸カリウムの使用量は、臭素酸として、小麦粉一キログラムにつき〇・〇三〇グラム以下でなければならない。また、使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定している。

四の2、3及び4について

 御指摘の「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件」(昭和五十七年厚生省告示第百三十六号)においては、臭素酸カリウムについて、パンヘの使用量を、臭素酸として、小麦粉一キログラムにつき〇・〇五〇グラム以下から〇・〇三〇グラム以下に変更し、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならないとの規定を新たに設けるとともに、従来認められていた水産練り製品への使用を禁止したところである。
 この改正は、昭和五十七年五月七日の食品衛生調査会において、臭素酸カリウムはF三四四ラットに発がん性が認められたこと等から食品に残留することは好ましくないとする意見具申が厚生大臣に対してなされたことを受けて行われたものである。また、その具体的な基準値等については、当該意見具申より前に取りまとめられた食品衛生調査会添加物部会の報告書において、パンへの使用については一定量以下の添加である限り臭素酸カリウムは残留しないと考えられるが、使用量は可能な限り少なくするという前提及び当時の使用実態を踏まえて使用の基準を含有率百万分の五十から含有率百万分の三十に改めるとともに、水産練り製品への使用については再検討する必要があるとされたことを踏まえ、設定されたものである。
 なお、昭和五十七年当時、パンの製造業界から、臭素酸カリウムは安全であるとの見解を厚生省が示すのであれば、臭素酸カリウムをパンの製造に使用したい旨の要望があったことは承知しているが、詳細については、現在、把握していない。

四の5について

 規格基準告示により、パン(小麦粉を原料として使用するものに限る。)以外の食品への使用は禁止されている。

四の6について

 社団法人日本パン工業会に臭素酸カリウムの使用自主規制について照会したところ、平成四年の当該法人の月例会議において、「臭素酸カリウムはなるべく使用しないようにする。」旨の申し合わせを確認した経緯があるとの回答を得たところである。
 また、我が国においては、規格基準告示に「使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定していること等から、直ちに、その取扱いについて見直しを行う必要があるとは考えていない。

五の1について

 臭素酸カリウムの測定については、種々の方法が公表されているが、概ね、臭素酸を測定する方法が採られているものと承知している。また、その検出限界は測定方法により異なっているが、厚生省が地方公共団体等に対し発出した昭和五十七年五月二十五日付け事務連絡(以下「事務連絡」という。)に示されているイオンクロマトグラフ法を用いて臭素酸を測定する方法における検出限界については、「食品衛生学雑誌」において含有率百万分の〇・五(十億分の五百)であると報告されている。

五の2及び3について

 国立衛生試験所におけるイオンクロマトグラフ分析装置の導入部門、その製造メーカー及び導入目的は、次のとおりである。

図 表 1/2

図 表 2/2

五の4について

 厚生省の試験研究機関である国立衛生試験所食品添加物部において、食品添加物中の不純物(タール色素中のハロゲンイオン及びビートレッド色素中の硝酸根)及び食品添加物(次亜塩素酸塩及び亜塩素酸塩)の分析を行ったことがある。
 農林水産省の試験研究機関及び分析機関のいずれにおいても、イオンクロマトグラフ分析装置を使用して、食品添加物の分析を行ったことはない。

五の5について

 食品衛生調査会においては、昭和五十七年五月の意見具申に当たって、イオンクロマトグラフ法を用いた試験成績、陰イオン交換樹脂カラム-比色法を用いた試験成績等が調査審議されているが、いずれの報告においても、臭素酸カリウムの使用量が、臭素酸として、小麦粉一キログラムにつき〇・〇四グラム以下の場合においては、最終製品たるパンから臭素酸は検出されていない。
 なお、当該試験成績は、学会誌等に既に公表されているところである。

五の6について

 御指摘のような水準での測定方法については、平成七年に米国食品医薬品庁の研究者が、誘導結合プラズマをイオン化源とした質量分析計を検出器として用いるイオンクロマトグラフ法について報告したこと等を承知している。
 また、平成七年に英国農業漁業食品省の研究者が公表した文献中に、平成元年に英国政府において実施した調査において、包装していない市販のパンから最小で含有率十億分の十七の臭素酸を検出した旨記載されていることは承知している。

五の7及び8について

 オルトトリジン吸光光度法については、昭和五十八年に「食品衛生学雑誌」において、横浜市衛生研究所の日高利夫をはじめとする研究所員により報告されたものであると承知している。
 同報告によれば、その定量限界は含有率百万分の一であるとされている。
 なお、指定検査機関における臭素酸カリウムの測定方法については、厚生省への報告を義務付けていないため承知していない。

五の9について

 御指摘の測定方法の検出限界については、「食品衛生学雑誌」において含有率百万分の〇・五と報告されている。

五の10について

 御指摘の測定方法は、事務連絡を踏まえ、食品衛生検査指針に記載されたものと考えられる。

五の11について

 財団法人日本食品分析センターに分析方法について照会したところ、オルトトリジン吸光光度法により測定しているとの回答を得たところである。

六の1について

 最近開発された小麦粉改良剤(麹)を使用したパンが商品としてごく僅か流通していると聞いている。

六の2について

 我が国においては、規格基準告示に「使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定していること等から、直ちに、その取扱いについて見直しを行う必要があるとは考えていない。

六の3について

 食品衛生法においては、小麦粉の輸入に関し、その輸出国において臭素酸カリウムの使用を禁止しているか否かに係る規定はない。
 小麦粉改良剤の使用については、国として特定の小麦粉改良剤(麹)を推奨することは考えていない。
 また、二の9についてで述べたように我が国においては、直ちに、臭素酸カリウムの取扱いについて見直しを行う必要があるとは考えていないため、臭素酸カリウムを使用していない小麦粉の輸入を推進することは考えていない。

七の1について

 農薬を収穫後に使用することについては、一般に、農産物の収穫から販売までの間における当該農産物の腐敗、変敗、損耗等を防止する目的で、殺菌剤、殺虫剤、発芽防止剤等が使用されているものと承知している。

七の2について

 食品衛生法第七条第一項に基づき、食品に残留する農薬の成分である物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を含む。以下同じ。)の量の限度(以下「残留農薬基準」という。)は、食品及び農薬の成分である物質ごとに、規格基準告示の第一 食品の部D 各条の項の○ 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの1 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格及び同項の○ 小麦粉の1 小麦粉の成分規格により規定しており、輸入農産物であるか、国産農産物であるかにかかわらず適用されるものである。

七の3について

 輸入時の農産物の検査において、残留農薬基準に「不検出」と規定されている農薬が検出された事例は、平成五年度は〇件、平成六年度は三件、平成七年度は一件である。また、地方公共団体において実施され厚生省に報告された検査結果については、平成六年度分のみを集計したところであるが、残留農薬基準に「不検出」と規定されている農薬が検出された事例は二件である。

七の4について

 農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)は、農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保を図るため、農薬の登録並びにその製造、販売及び使用に関する規制等の措置を定めた法律であり、同法においては、農林水産大臣の登録を受けていない農薬の販売を禁止し、これに違反した場合の罰則を設けている。また、同法に基づき、登録申請に係る農薬が、農産物への残留性等について環境庁長官が定める基準(いわゆる農薬登録保留基準)に照らし、問題がある場合には、当該農薬の登録は行われないこととなる。
 なお、食品に残留する農薬等の成分の規制に係る措置については、食品衛生法において規定されているところである。

七の5について

 食品衛生法第七条第二項の規定に違反し、残留農薬基準に合わない食品が輸入された場合には、同法第二十二条に基づき、営業者等に当該食品を廃棄させ、その他営業者に対し食品衛生上の危害を除去するために必要な処置を採ることを命じている。

七の6について

 残留農薬基準の設定に当たっては、在日外国大使館等への説明及び衛生植物検疫措置の適用に関する協定(平成六年条約第十五号)に基づく加盟各国への通報を行うとともに、日本貿易振興会が発行する規格基準告示の英文版の作成への協力等を通じ、諸外国への残留農薬基準の周知を図っているところである。

七の7について

 輸入時の農産物に係る残留農薬の検査については、「平成六年度輸入食品等に係るモニタリング検査の実施について」(平成六年九月十九日衛食第百五十七号他厚生省生活衛生局食品保健課長通知)に基づくモニタリング検査の実施要領により、検疫所において実施している。検査農薬の種類及びその検査方法については当該通知等により定めているところである。

七の8及び9について

 御指摘のような「ポストハーベスト農薬として我が国が指定している農薬」は食品衛生法上存在しないため、輸入相手国からの事前の情報開示並びに我が国におけるチェックのシステムは存在しない。

七の10から13について

 炭酸ガスによる保存技術については、昭和四〇年代に開発されているところである。この有効性については、常温下で長期保存が可能であるとする一方、現在食糧庁が行っている低温保管より早期に品質が劣化するとの見解もあり、確定した評価はない状況である。
 このため、食糧庁として、当該保存方法の有効性の有無を確認するため、炭酸ガスによる米の貯蔵試験を民間に委託して実施中である。
 一方、米、麦の貯蔵中に発生する病害虫の炭酸ガスによる駆除については、コスト、施設条件等の問題はあるものの、米、麦の品質に影響を与えない等の利点があるため、食糧庁では平成六年度から実用化のための事業を実施しているところである。

七の14について

 炭酸ガスを輸入小麦の病害虫の駆除に使用することは、コスト、施設条件等の問題を解決することが必要であるため、一般には普及していないが、条件が整っている豪州の一部の輸出ターミナルに併設した貯蔵施設において実用化されている例があると聞いている。

七の15について

 炭酸ガスによる保存技術については、我が国の小麦の輸入相手国において、同技術への切り替えの新たな動きがあるとは聞いていない。
 また、食品衛生法においては、小麦の輸入に関し、その輸出国において炭酸ガスによる保存技術を使用しているか否かに係る規定はない。

七の16について

 果実や野菜等の青果物については、適切な低酸素、高二酸化炭素及び低温環境下での呼吸量の低下を利用することにより貯蔵性を高めるCA(コントロールド・アトモスフィア)貯蔵技術が実用化されているところである。

七の17について

 輸入時の植物検疫の一環として行われている消毒措置には、農薬によるくん蒸処理以外に、

一 米、麦、雑穀等に付着する病菌及びコクジツセンチュウに対する乾熱処理及び温湯侵せき処理
二 麦に混入する麦角に対する塩水選処理

があるが、その他の有害動植物又は品目に関しては、現在のところ、臭化メチル、シアン化水素、二酸化炭素その他の農薬によるくん蒸処理に代替し得るような、消毒効果の確実性と安全性が確保され、かつ、農産物の品質への影響が少ない消毒方法はないと考えている。

七の18について

 我が国の小麦の輸入相手国においては、小麦の生産環境、生産規模及び流通状況等が多岐にわたることからポストハーベスト農薬の種類、使用状況について厳密に把握することは困難であるが、食糧庁の調査によれば、これら輸入相手国で使用が認められている殺虫剤のうち、小麦へのポストハーベスト農薬として使用される可能性があるものは別表一のとおりであると考えられる。

八の1について

 輸入時の植物検疫の一環として行われているくん蒸処理の対象となる植物は、顕花植物、しだ類及びせんたい類に属する植物(その部分、種子、果実及びむしろ、こもその他これに準ずる加工品を含み、製材、製茶等の加工品を除く。)であって、検査の結果、くん蒸の対象となる有害動物(昆虫、だに等の節足動物その他の無脊椎動物又は脊椎動物であって有用な植物を害するもの。)の付着が認められたものである。

八の2について

 品目ごとのくん蒸剤の名称、物質名、使用基準については別表二、残留農薬基準については別表三のとおりである。

八の3について

 シアン化水素に関して作物残留に係る農薬登録保留基準を設定するに当たっては、シアン化水素を用いた試験成績等を評価したところであるが、ラットによる試験成績において血中のシアン化水素代謝物の濃度の上昇等が認められている。
 燐化アルミニウムに関して作物残留に係る農薬登録保留基準を設定するに当たっては、燐化アルミニウムを用いた試験成績等を評価したところであるが、ラットによる試験成績において長期的な暴露による影響は何ら認められていない。
 臭化メチルに関して残留農薬基準を設定するに当たっては、臭化物を用いた試験成績等を評価したところであるが、ヒトによる試験成績においては何ら影響が認められていないものの、ラットによる試験成績においては甲状腺への影響等が認められている。

八の4について

 シアン化水素及び燐化アルミニウムの分析方法は、「農薬取締法第三条第一項第四号から第七号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める等の件第一号イの環境庁長官の定める基準を定める件」(昭和四十八年七月環境庁告示第四十六号)の2 試験法の(55)シアン化水素試験法及び(80)リン化アルミニウム試験法に示されている。なお、これらの検出限界は、シアン化水素については含有率千万分の五、燐化アルミニウムについては燐化水素として含有率一億分の一である。
 臭化メチルの分析方法は、規格基準告示の第1 食品の部D 各条の項の○ 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの2 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格の試験法の目の(41)臭素試験法に示されている。なお、その検出限界は臭素として含有率百万分の一である。

八の5について

 シアン化水素の分析方法については昭和五十一年度、燐化アルミニウムの分析方法については昭和五十三年度、臭化メチルの分析方法については昭和四十八年度である。

八の6について

 八の4についてで示した分析方法については、各々の基準値の十分の一以下を検出限界としており、残留農薬の安全性を評価する上で必要な分析感度は確保されていると考えられることなどから、いずれも、設定後、改正していない。

八の7について

 輸入される農産物が食品衛生法に適合しているか否かの輸入時の取締りは検疫所において実施しており、くん蒸剤に係る検査については、横浜検疫所及び神戸検疫所における輸入食品・検疫検査センターにおいて実施しているところである。

八の8について

 農林水産省は、臭化メチルまたは臭素の残留農薬基準として「十五ppm以下」の基準を設けた事実はない。

八の9について

 我が国においては、小麦粉について食品衛生法に基づく臭化メチルの残留農薬基準は設定されていない。

八の10について

 残留農薬基準は、食品衛生法第七条第一項の規定に基づき、厚生大臣が公衆衛生の見地から定めるものであり、当該農薬の安全性等について食品衛生調査会における慎重かつ緻密な調査審議を経ているものであることから、残留農薬基準に合う輸入農産物については、人の健康を損なうおそれはないものと考えている。
 従って、仮に、御指摘のようなくん蒸剤に関する現在の残留農薬基準が医学的見地から危険であると判断された場合の罰則を含めた処分等について、特段の定めを設ける必要はないと考えている。

八の11について

 輸入時の植物検疫の一環として行われている消毒措置には、農薬によるくん蒸処理以外に、

一 米、麦、雑穀等に付着する病菌及びコクジツセンチュウに対する乾熱処理及び温湯侵せき処理
二 麦に混入する麦角に対する塩水選処理

があるが、その他の有害動植物又は品目に関しては、現在のところ、臭化メチル、シアン化水素、二酸化炭素その他の農薬によるくん蒸処理に代わり得るような、消毒効果の確実性と安全性が確保され、農産物への影響が少なく、かつ、経済的で効率のよい消毒方法はないことから、くん蒸処理を廃止するには、このような消毒方法の開発が行われることが必要であると考えている。

八の12について

 輸入時の植物検疫の一環として行われているくん蒸処理は、消毒効果の確実性と安全性が確保され、農産物への影響が少なく、かつ、経済的で効率のよい消毒方法であり、また、適当な代替措置もないことから国際的にも一般に行われており、くん蒸処理を廃止するという方針はない。
 しかし、輸入植物の消毒に係る選択肢を増やすという観点から、くん蒸に代わる消毒方法の技術開発にも努めてきており、その結果として、農薬を使用しない有害動植物の消毒、除去方法が開発された場合には、消毒措置として認めてきているところである。

九の1について

 国産小麦の過去五年の生産数量は、平成四年が七十五万八千七百トン、五年が六十三万七千八百トン、六年が五十六万四千八百トン、七年が四十四万三千六百トン、八年が四十七万八千百トンである。

九の2について

 我が国の小麦については、「農産物の需要と生産の長期見通し」(平成七年十二月二十六日閣議決定。以下「長期見通し」という。)において、品質、コスト面での大幅な改善を進めることにより、生産の拡大を見込んでおり、平成十七年度における生産量を七十七~九十四万トンと見通している。

九の3について

 国産小麦については、長期見通しを参酌し、裏作の作付拡大、品質向上等を推進しつつ、消費者ニーズを踏まえた生産の振興を図っているところである。
 国産麦の消費拡大については、国産麦を利用した製品の開発・普及を図る国内麦需要開発推進事業を実施している。

九の4について

 小麦は、米と並んで主食としての役割を果たしており、国産小麦の生産量を増大させることは、食料自給率の向上にとって有益であると考えている。

九の5について

 収穫後、政府が買い入れるまでの間にくん蒸処理される国産小麦は、ごく僅かであると聞いている。
 また、政府が買い入れた後の国産小麦については、適切な保管管理によっても病害虫の被害を防止できない場合のみ、くん蒸を実施している。
 なお、国産小麦については、くん蒸処理以外のポストハーベスト農薬の使用はないと承知している。

九の6について

 炭酸ガスによる国産小麦の貯蔵には、特別の施設等の設備が必要であるが、当該貯蔵の技術については、七の10から13についてで述べたように、その有効性の評価が定まっていない状況にあること、小麦の貯蔵には、通常の貯蔵でもその品質の劣化がなく十分であること等の理由から、炭酸ガスによる貯蔵が現状では国産小麦の一般的な貯蔵方法となるのは困難であると考えている。

九の7について

 食糧用として輸入される小麦の数量について食糧庁の買入実績によれば、平成七年度の食糧用外国産小麦の買入数量は四百四十七万五千トンである。
 うち、製パン用等に使用される強力粉の原料となりうる、いわゆるハード系に分類される小麦(アメリカ産ハード・レッド・ウインター・ホイート(粗たん白含有率の最低限度十三・〇パーセントのもの)、ノーザン・スプリング・ホイート及びダーク・ノーザン・スプリング・ホイート並びにカナダ産ウエスタン・レッド・スプリング・ホイート)の買入数量は二百六十五万一千トンである。
 なお、小麦粉の形態による買入れはない。

九の8について

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成六年法律第百十三号)において、民間企業が、国内の生産農家と直接、自由に小麦の取引を行うことを規制する規定はない。

九の9について

 国内の農産物のうち流通の規制がある米については、国民の主食としての役割を果たしているとともに、農業生産においても重要な位置付けを占めていることから、その需給と価格の安定を図ることが重要であり、完全に自由な市場に委ねることは適当でないと考える。

九の10について

 国産小麦については、長期見通しを参酌し、今後とも、その生産の振興を図っていくこととしている。

十について

 植物防疫官による検査の結果、輸入された小麦に植物検疫の対象となる有害動物が付着していることが認められ、かつ、他に当該有害動物を消毒する方法がない場合に、くん蒸による消毒命令に違反した場合には、植物防疫法(昭和二十五年法律第百五十一号)第四十条第三号の規定により一年以下の懲役又は三万円(平成九年四月一日からは、五十万円)以下の罰金に処せられる。

十一の1について

 小麦粉の輸入については、小麦の国内生産や安定供給を確保するとの観点から、ウルグァイ・ラウンド農業合意の算定ルールに従い、適切な水準の関税相当量を設定しているところである。
 一方、小麦粉調製品の輸入については、国内産業保護の観点から、適正な水準の関税を設定しているところである。

十一の2について

 小麦粉を輸入する際に支払う関税相当量は、ウルグァイ・ラウンド農業合意に基づき、基準期間(千九百八十六年~千九百八十八年)における関税相当量を実施期間(千九百九十五年から六年間)中に十五パーセント削減することとしているところである。この関税相当量は、小麦の国内生産や安定供給を確保するとの観点から設定されており、これ以上に引き下げることは困難である。

十一の3について

 小麦粉及び小麦粉調製品の関税については、ウルグァイ・ラウンド農業合意に基づき、二〇〇〇年まで段階的に引き下げることとし、一部の小麦粉調製品については、既に合意水準への引き下げを行っているところであり、これ以上に引き下げを行うことは、国内産業保護の観点から困難である。

十二の1、2及び3について

 食品の表示は、公衆衛生の確保のために必要な情報であるほか、公正な競争の確保、商品選択における利便の確保等のための重要な情報であるが、表示の義務付け又は指導に当たっては、国際的な整合性や表示に伴う販売業者等の負担等も考慮する必要があると考えている。
 臭素酸カリウムを添加していない旨の表示、ポストハーベスト農薬を使用していない旨の表示及びくん蒸処理を行っていない旨の表示については、このような表示の有無が公衆衛生上何ら問題となるものではないこと及び国際的にも求められておらず、販売業者等に過大な負担を強いるおそれがあること等から、これらの表示を義務付け又は指導することは適切でないと考えている。事業者が任意にこれらを使用していない旨の表示をすることは、一般消費者に誤認を与えるものでなければ法的に問題はない。

十三の1及び2について

 小麦粉改良剤の使用については、六の3についてで述べたように、国として特定の小麦粉改良剤(麹)の使用を推奨することは考えていない。
 また、炭酸ガスによる保存技術については、七の10から13についてで述べたように、その有効性の評価が定まっていない状況にあるので、国として普及させることは考えていない。

十三の3について

 食料全般に関する事項については、民間人を含む学識経験者等を構成員として、農政審議会等の機関において、これまでも調査審議を行っているところである。

別表一 1/2

別表一 2/2

別表二 1/6

別表二 2/6

別表二 3/6

別表二 4/6

別表二 5/6

別表二 6/6

別表三 1/5

別表三 2/5

別表三 3/5

別表三 4/5

別表三 5/5