質問主意書

第139回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二号

ダム等事業に係る事業評価方策の試行に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成八年十二月十六日

竹村 泰子   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿


   ダム等事業に係る事業評価方策の試行に関する質問主意書

 ダム事業に係る事業評価方策の試行については、「ダム・堰事業については、大規模な事業であり、その建設に長期間を要し、また地域に与える影響も大きいにも関わらず、建設省の他の事業に比べて、地域住民の意見を聴取する都市計画のような手続きが制度上十分でなかったとの指摘を踏まえ、事業者が当該ダム・堰事業の目的、内容等について地域の意見を的確に聴取することを目的として」、ダム等事業審議委員会が設置されたところである。しかし、岡山県の苫田ダム等のケースに関する委員会の運営を見る限り、その目的通りの運営がなされているかにつき、重大な疑義が存在すると言わざるをえない。
 そこで、ダム等事業審議委員会の運営方針を規定する「ダム等事業に係る事業評価方策の試行について」の解釈について質問したい。

一、「ダム等事業に係る事業評価方策の試行について 建設省河開発第九八号(平成七年七月一四日)」について

1 「1 事業評価方策試行の目的

 ダム等事業(ダム、堰若しくは湖沼水位調節施設の新築若しくは改築又は遊水池総合開発事業をいう。以下同じ。)に係る事業評価方策(以下「事業評価方策」という。)の試行は、別紙「ダム等事業審議委員会設置・運営要領」に基づき個々の事業毎に、当該事業の目的、内容等を審議するダム等事業審議委員会(以下「委員会」という。)を設置し、地域の意見を的確に聴取することを目的とする。」
とあるが、その解釈につき以下質問する。

ア 「目的、内容等を審議する」とは、当該事業の目的の現在における存否を含むのか。
イ 「内容」とは、当該事業の現在における妥当性を含むのか。
ウ 「地域の意見を的確に聴取する」とあるが、「地域の意見」には当該事業に反対する者を含んでいるのか。含んでいないとすればその理由はなぜか。
エ 「聴取する」主体は誰か。
オ 「的確に聴取」できたか否かを誰が判断するのか。

2 「3 委員会の設置
(中略)

(2) 地方建設局長等は、委員会の委員を関係都道府県知事及び関係都道府県知事が推薦する者(関係都道府県知事が複数の場合にあっては、その協議に基づき推薦する者)に委嘱することとし、関係都道府県知事に対して、あらかじめ次に掲げる事項を示しておくこととする。

(イ)ダム等事業の事業用地をその市町村の区域に含む市町村長及び市町村議会の議長は委員とすること。
(ロ)学識経験のある者については、当該事業に関し地域の意見を的確に反映させるのに適当な者とすること。」
とあるが、その解釈につき以下質問する。

ア 「委員会の委員を関係都道府県知事及び関係都道府県知事が推薦する者」とした理由は何か。
イ 「ダム等事業の事業用地をその市町村の区域に含む市町村長及び市町村議会の議長は委員とすること」とした理由は何か。
ウ 学識経験者については「当該事業に関し地域の意見を的確に反映させるのに適当な者」としているが、「的確に反映」とはどういうことを指しているのか。たとえば、その地域の地理に関して詳しい必要はあるのか。必要がないとすればなぜか。
エ 「適当な者」という判断はいったい誰が行うのか。その判断が適切であるということはどのように担保されるのか。
オ 委嘱する場合には何らかの報酬が支払われるのか。その報酬の支払基準はどのように定められているのか。
カ オの報酬支払のための予算はどこから出されるのか。支出の法的な根拠は何か。

3 「4 委員会の意見
(中略)

(2) 地方建設局長等は、委員会の意見を尊重することとし、当該事業のその後の進め方について検討の上、本職に報告することとする。」とあるが、その解釈につき以下質問する。

ア 「尊重する」とはどういうことか。委員会の意見と違う結論を地方建設局長等が行うことがありうるということか。
イ 「地方建設局長等」が、「当該事業のその後の進め方について検討」するというのは、具体的にどのようなことなのか。
ウ 苫田ダムに関してはいつそのような検討がなされたのか。なされた際に参考にした資料は何か。
エ 「本職に報告する」とあるが、苫田ダムに関してはいつ報告がなされたのか。
オ エの報告の内容は委員会の意見と異なる点があるのか。異なる点があるとすればなぜ異なるに至ったのか。
カ 「本職に報告する」とあるが、報告の結果どのような効果が生ずるのか。
キ 当該事業の進行あるいは中止の責任は誰が負うのか。その判断は報告後明確に行われるのか。
ク 苫田ダムの場合にはそのような判断が行われたのか。行われないとすればなぜか。

4 「5平成七年度対象事業
(中略)

(2) 平成七年度までに着手している次に掲げる事業」
とあるが、その解釈につき以下質問したい。

ア 数ある事業の中で対象となる事業を一一とした理由は何か。各事業毎に理由を示されたい。
イ 各事業を選んだ主体は誰か。選んだ際の基準は何か。
ウ 選んだ主体が建設省本省だとすれば、選んだ際に各地方建設局に問い合わせなどを行ったのか。行わなかったとすればなぜか。

二、「(別紙) ダム等事業審議委員会設置・運営要領」について

1 「3 組織

(1) 委員会の委員は…委嘱する。
(2) 委員会の委員の総数は、当該ダム等事業に関係する都道府県の数によりおおむね次によることとする。

(イ)一都道府県にのみ関係する事業 一〇人程度
(ロ)二以上の都府県に関係する事業 二〇人程度
(ハ)五以上の都府県に関係する事業 三〇人程度

(3) 委員会の委員の構成については、委員会の設置の目的に照らし、地域の意見を的確に反映させる構成となるよう、おおむね次によることとする。
(中略)
 ただし、関係都道府県知事並びにダム等事業の事業用地をその市町村の区域に含む市町村長及び市町村議会の議長は委員とすること。」
とあるが、その解釈につき以下質問する。

ア 何を委嘱するのか。
イ 何のために委嘱するのか。
ウ どのような形での委嘱なのか。
エ 文書で委嘱するとすれば、それぞれの委員会につき、いつ、どのような文面により委嘱がなされたのか。
オ 委員会の委員の総数をおおむね定めた理由は何か。

2 「5 議事
(中略)

(3) 委員会は、会議終了の都度、その議事内容の概要を公表するものとする。」
とあるが、その解釈につき以下質問する。

ア 「会議終了の都度」とは会議終了からどれくらいの期間のことをいうのか。
イ 「概要」とは、どの程度のものを想定しているのか。
ウ 「公表」とは、いかなる行為を指すのか。新聞記事を送付する程度のことが「公表」に該当するのか。
エ 公表しなかった場合はいかなる効果が生ずるのか。何の効果も生じないとすればこの規定の意味は何か。

3 「6委員会の意見

委員会は、対象事業の目的、内容等について十分な審議を行った後、各委員の意見をとりまとめ、委員会の意見として述べることとする。」
とあるが、その解釈について以下質問する。

ア 「十分な審議」とは何をどの程度審議することと考えているのか。
イ 誰が「十分な審議」であると判断するのか。
ウ 判断の根拠は何に求めるのか。
エ 「十分な審議」とは言えないという判断に判断権者が至った場合の効果は何か。
オ なんらの効果もないとすれば、「十分な審議」を行わせることをどのような方法で担保しているのか。
カ 担保していないとすればそれはなぜか。
キ 委員会の意見の公正さはどのように担保されるのか。

4 「7 地域住民等からの意見聴取等

委員会は、必要と判断したときは、

(1)公開による地域住民、利害関係人、自然保護団体等からの意見聴取や、これらの者を対象とする公聴会の開催 等
(2)河川工学、環境分野等の専門家からなる調査専門委員会の開催 等
必要な措置を講ずることができる。」
とあるが、その解釈につき以下質問する。

ア 「必要と判断」する場合はどのような場合を想定してるのか。
イ 苫田ダムの場合には公聴会や調査専門委員会が開催されていないが、必要はないという認識なの
か。必要でないとすればその理由は何か。
ウ 調査専門委員会が行われる場合の、任命行為や契約はどのように行われるのか。
エ 公聴会や調査専門委員会に関する設置要綱は存在するのか。

5 「8 情報公開
地方建設局長等は、委員会の審議に際し事業計画の原案等の説明を行うとともに、委員会からの求めに応じ必要な資料を提供する等情報公開に努めることとする。」
とあるが、その解釈につき以下質問する。

ア 「事業計画の原案等の説明」は必要的であって、「地域住民、利害関係人、自然保護団体等からの意見聴取」が任意的であるというのはバランスを失することになっていないのか。なっていないとすればその理由は何か。
イ 「提供する等」の「等」にはどのような行為が含まれているのか。
ウ 委員会以外の求めには応ずることはないのか。

三、「ダム等事業に係る事業評価方策の試行について 建設省河開発第九九号(平成七年七月一四日)」について

「1 事業評価方策試行の趣旨について
(中略)

(2) ダム等事業審議委員会(以下「委員会」という。)を設置する目的は、地域の意見を的確に聴くことであり、委員会の議事運営に当たっては、必要な資料の提供等の協力を行い、情報公開に努めること。」
とあるが、以下その解釈につき質問したい。

ア 誰が「必要な資料の提供等の協力」を行うのか。
イ 誰が「情報公開に努める」のか。
ウ 委員会に対してだけ情報公開に努めればよいという趣旨なのか。

2 「4 委員会の審議と事業執行との関係について
(中略)

(2) 平成七年度までに着手している事業については、委員会が設置された場合には、本体着工等新たな段階に入る前に委員会の意見を聴くこと。」
とあるが、その解釈につき以下質問する。

ア 「新たな段階」とはいかなる段階を想定しているのか。なぜそのような区分が「新たな段階」であると考えるのか。
イ 誰が「新たな段階」に入ると判断するのか。
ウ どの時点で「新たな段階」に入ると判断するのか、予算要求段階か、予算成立段階か、事業着手段階なのか。
エ 「新たな段階」とはいかなる段階なのかを、現在試行されているダム事業毎に示されたい。

四、全体的な問題について

 この方策の試行の際に手続上あるいは内容上の瑕疵が生じた場合に、それを補正する手段は担保されているのか。されていないとすれば、それはなぜか。

  右質問する。