答弁書第六号
内閣参質一三六第六号
平成八年七月五日
内閣総理大臣 橋本 龍太郎
参議院議長 斎藤 十朗 殿
参議院議員木庭健太郎君提出乳幼児医療助成に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員木庭健太郎君提出乳幼児医療助成に関する質問に対する答弁書
一について
児童を心身ともに健やかに育成していく上で、心身の特性に応じた高度な医療の適切な提供及び医療費の負担の軽減は重要な課題と認識しており、医療の供給体制について小児疾患の診療を行う医療機関の整備に対する補助等を行うとともに、医療費について医療保険制度や母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)第二十条に基づく未熟児に対する養育医療等の公費負担医療制度を実施することにより、児童に対する医療保障を行っているところである。
また、医療を受ける者と受けない者との均衡という観点から、受診者に一定の負担を求めることが適切であると考えており、御指摘のようなすべての乳幼児に対する医療費の無料化又は軽減については考えていない。
二について
我が国におけるアトピー性疾患の実態については、厚生省において、平成四年度から平成六年度にかけてアレルギー総合研究事業として調査を行うとともに、平成四年度にアトピー性疾患実態調査を実施したところである。
アレルギー総合研究事業の調査結果によれば、アトピー性疾患の有病率(調査時点において疾病を有する者の割合をいう。以下同じ。)は、十五歳以下の者についてはアトピー性皮膚炎十・三パーセント、アレルギー性鼻炎六・九パーセント、気管支喘息六・〇パーセント及びアレルギー性結膜炎十三・七パーセントと、十六歳以上の者についてはアトピー性皮膚炎七・四パーセント、アレルギー性鼻炎八・六パーセント、気管支喘息三・〇パーセント及びアレルギー性結膜炎十九・〇パーセントと推計されている。
また、既往歴のある者の割合は、平成四年度に実施したアトピー性疾患実態調査における乳幼児を対象とした調査結果によれば、アトピー性皮膚炎については、乳児六・〇パーセント、一歳六か月児十九・〇パーセント及び三歳児三十一・二パーセントであり、アレルギー性鼻炎については、乳児〇・二パーセント、一歳六か月児一・五パーセント及び三歳児二・八パーセントであり、並びに気管支喘息については、乳児〇・三パーセント、一歳六か月児四・九パーセント及び三歳児九・三パーセントである。
なお、呼吸器及び皮膚等のアレルギー疾患を持つ乳幼児の通院回数及び医療費負担については把握していない。
アトピー性疾患対策については、これまで心身障害研究事業、アレルギー総合研究事業、長期慢性疾患総合研究事業等により、患者の実態調査、疾患の原因究明、検査法及び治療法の研究並びに診断基準の作成を行うとともに、保健所等において乳幼児の保護者等に対する指導を実施してきたところであり、今後ともこれらの事業の推進に努めてまいりたい。
三の1について
各都道府県において実施されている乳幼児医療費助成制度については、乳幼児に係る医療費負担の軽減、疾病の早期発見及び早期治療等を目的として実施されているものと認識しており、それぞれの都道府県の判断に基づいて行われているものと考えている。
三の2について
平成七年度において各都道府県が実施する市町村の乳幼児医療費助成に対する補助制度においては、医療保険制度による患者の自己負担部分について、入院の場合のみを助成の対象とするものが三府県であり、入院及び通院の場合を助成の対象とするものが四十四都道府県である。
対象年齢については、通院の場合で一歳未満とするものが二十二県、二歳未満とするものが六道府県、三歳未満とするものが十五都県及び六歳未満とするものが一県であり、入院の場合で一歳未満とするものが十三県、二歳未満とするものが五府県、三歳未満とするものが二十都県、四歳未満とするものが二県、六歳未満とするものが二道県、就学前とするものが四府県及び中学校卒業前とするものが一県である。
所得制限については、通院の場合で制限を設けているものは十五都県、設けていないものが二十九道府県であり、入院の場合で制限を設けているものは十七都府県、設けていないものが三十道府県である。
自己負担については、定額又は定率の一部負担金を設けているものは十七道府県、設けていないものが三十都府県である。
三の3及び四について
各都道府県で実施されている乳幼児医療費助成制度については、それぞれ都道府県の判断に基づいて行われているものであり、対象者等についても各都道府県の実情に応じて定められているものと理解している。
また、乳幼児に対する医療費の助成については、医療を受ける者と受けない者との均衡という観点から、受診者に一定の負担を求めることが適切であると考えており、御指摘のようなすべての乳幼児に対する医療費の無料化又は軽減については考えていない。
なお、障害児等特に手厚い援護が必要な児童、未熟児及び難病の児童に係る特別な疾病の治療については、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)、母子保健法等に基づき医療保険制度による患者の自己負担部分について公費負担を行っているところである。
五について
子育てに伴う経済的負担の軽減については、平成七年度及び平成八年度予算において乳児や多子世帯の保育料の軽減措置等を講じたところであるが、子育てコストへの社会的支援の在り方については、引き続き幅広い観点から検討してまいりたい。
また、乳幼児に対する医療費の助成については、医療を受ける者と受けない者との均衡という観点から、受診者に一定の負担を求めることが適切であると考えており、御指摘のようなすべての乳幼児に対する医療費の無料化又は軽減については考えていない。
六の1について
平成四年の厚生省国民生活基礎調査によると、高齢者世帯(男六十五歳以上、女六十歳以上の者のみで構成するか、又はこれらに十八歳未満の未婚の者が加わった世帯をいう。)の世帯人員一人当たりの平均所得は年間百九十一万九千円であり、生活が苦しいと感じている世帯の割合については、当該調査において「大変苦しい」及び「やや苦しい」と回答したものを合わせると、三十七・五パーセントである。
また、当該調査結果に基づいて算出したところ、末子が六歳未満の世帯の世帯人員一人当たりの平均所得は年間百四十二万円であり、生活が苦しいと感じている世帯の割合については、当該調査において「大変苦しい」及び「やや苦しい」と回答したものを合わせると、三十六・六パーセントである。
六の2について
高齢者の医療費については、一般に高齢者は有病率が高いこと、医療費が高額になる場合が多いことから、高齢者にとって必要な医療を確保するとともに、医療費の負担の軽減を図るため、自己負担を一定の額に限ることとしているところである。
また、医療を受ける者と受けない者との均衡という観点から、受診者に一定の負担を求めることが適切であると考えており、御指摘のようなすべての乳幼児に対する医療費の無料化又は軽減については考えていない。
なお、障害児等特に手厚い援護が必要な児童、未熟児及び難病の児童に係る特別な疾病の治療については、児童福祉法、母子保健法等に基づき医療保険制度による患者の自己負担部分について公費負担を行っているところである。
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