第136回国会(常会)
質問第三号
日米安保の再定義と沖縄米軍基地に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成八年四月十一日 山口 哲夫
日米安保の再定義と沖縄米軍基地に関する質問主意書 クリントン米大統領の来日が予定されており、日米首脳会談において冷戦後の日米安保の再定義が行われる見込みである。冷戦が終了したにもかかわらず、日米安保の軍事的役割の維持・強化がなされようとしている。そのため、本来大幅に縮小すべきはずの沖縄の米軍および米軍基地は、依然として沖縄の土地と県民の生活を圧迫している。
一、日米安保の再定義について 米国防次官補だったジョセフ・ナイ氏は、冷戦後の日米安保のあり方として、既存の枠組みのみならず、アジア太平洋地域における日米協力、さらにはそれを越え、全地球的規模での協力関係の強化を提唱している。そして、在日米軍の役割も部隊編制の変更や日本の領域外での出動命令などの形で、日本および極東にとどまらず、事実上、遠くペルシャ湾、東アフリカにまで拡大されている。これは明らかに、従来の政府答弁で定義づけられた「極東」の範囲である「フィリピン以北、日本およびその周辺で韓国、台湾を含む」とされている地域を大きく逸脱するものである。政府は、安保条約に基づいて駐留している在日米軍が、従来の「極東」の範囲を超える地域の作戦に使用されることについて、米側に異議を申し立てるべきであると考えるがどうか。 二、普天間基地の返還について 二月の日米首脳会談では、橋本総理は普天間基地を例示して基地の整理縮小を要請し、クリントン大統領訪日時に成果を挙げることを確認しあっている。しかし、三月末に総理は大田知事との会談で、普天間基地については秋以降に先送りすると発言している。一か月ほどの間でこのように後退した理由は何か。
三、嘉手納基地および普天間基地の騒音防止について 三月二八日の日米合同委員会において、嘉手納基地および普天間基地の騒音防止協定が締結された。それまでの野放し状態からは一定の前進と言えるが、厚木基地や横田基地に比べ最低高度がさらに低く設定されるなど、いわゆる「本土並み」より後退した内容となっている。沖縄県民が騒音防止について厳しい基準を求めているにもかかわらず、なぜ厚木、横田並みにさえ設定できなかったのか。また、今後これを改善するため、米側と交渉する予定はないか。 四、軍転法の改正について 米軍基地に使用されていた土地が返還された場合、「沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律」いわゆる軍転法第八条によれば、返還後三年間は賃貸料相当額を給付金として給付することとなっている。しかし、返還後三年間では土地の利用を確定することは困難である。また、自治体では土地の開発計画を作成しているが、一部の返還ではそれを実施することは困難である。軍転法を改正して、補償期間を延長すべきであると考えるが、政府の基本的考え方および検討状況はどうか。 五、実弾射撃訓練について 現在、金武町で実施されている実弾射撃訓練においては、不発弾の処理が全く行われていない。また、緑の濃い山肌に対しても容赦なく実弾が撃ち込まれ、山肌は荒れ放題になっている。ハワイにおける米軍の実弾射撃訓練では、不発弾の処理を行ってからでなければ次の訓練は行っていないし、緑の多い山肌には撃ち込まずに麓のほうで実施している。政府は山肌への実弾射撃訓練の中止を申し入れ、不発弾の処理と破壊された山肌の緑化対策などは米軍の責任において行うよう主張すべきだと考えるが、これに対する政府の基本的態度はどうか。 右質問する。 |