第134回国会(臨時会)
第百三十四回国会答弁書第七号
内閣参質一三四第七号 平成八年二月十六日 内閣総理大臣 橋本 龍太郎
参議院議員田英夫君提出戦後五十年の節目の年にあたっての日本国のエネルギー・原子力政策の抜本的転換に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員田英夫君提出戦後五十年の節目の年にあたっての日本国のエネルギー・原子力政策の抜本的転換に関する質問に対する答弁書 一の1について 高速増殖原型炉もんじゅ(以下「もんじゅ」という。)のナトリウム漏えい事故(以下「事故」という。)の発生時刻は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第六十七条第一項の規定に基づき平成七年十二月十八日付けで動力炉・核燃料開発事業団(以下「動燃」という。)理事長から科学技術庁長官に提出された報告書及び同月二十五日付けで動燃理事長から科学技術庁長官に提出された報告書(以下「十二月二十五日付け報告書」という。)によれば、中間熱交換器二次側出口におけるナトリウムの温度検出器が警報を発報した平成七年十二月八日十九時四十七分十三秒である。 一の2について もんじゅの原子炉を自動停止させるほどのプラントパラメータ(プラントの状態を示すナトリウムの温度及び流量等のことをいう。)の変化がなかったためである。 一の3について ナトリウム漏えいを検知することを目的とした装置としては温度計、液面計及びナトリウム漏えい検出器があり、温度計については十八個設置されていたが、液面計及びナトリウム漏えい検出器については何個設置されていたかは承知していない。また、ナトリウム漏えいの程度を把握する機能が期待されている装置としては火災検知器等があるが、何個設置されていたかは承知していない。 一の4について 十二月二十五日付け報告書によれば、ナトリウム漏えい検出器については平成七年十二月八日十九時四十八分二十五秒に作動しているが、温度計及び液面計については、一次主冷却系設備に設置されており事故の影響を直接受ける位置にはなかったため、作動していない。また、同報告書によれば、最初に火災検知器が発報したのは平成七年十二月八日十九時四十七分十九秒である。 一の5について 十二月二十五日付け報告書によれば、最初にナトリウムの温度検出器が警報を発報したのは平成七年十二月八日十九時四十七分十三秒であり、この時刻が事故発生時刻とされている。 一の6について 十二月二十五日付け報告書によれば、最初に火災検知器が発報したのは平成七年十二月八日十九時四十七分十九秒である。 一の7について 十二月二十五日付け報告書によれば、動燃の職員が事故の発生を確認したのは、現場確認を行った運転員が現場状況を当直長に報告した平成七年十二月八日十九時五十八分である。 一の8について もんじゅには地震計として水平方向加速度検出器及び垂直方向加速度検出器が設置されており、これらの地震計は、地震の初動からの時間にかかわらず、地震の加速度がそれぞれ百六十ガル、八十ガルに達した時点で作動するよう設定されている。
一の9について 十二月二十五日付け報告書によれば、動燃は、福井県に対しては平成七年十二月八日二十時三十五分に、科学技術庁に対しては同日二十時四十三分に、敦賀市に対しては同日二十時四十八分にそれぞれ事故の発生を通知している。また、同報告書によれば、動燃は、周辺住民だけでなく広く国民に周知するため、同日二十二時十分に事故の発生を公表している。 一の10について 十二月二十五日付け報告書によれば、動燃は、平成七年十二月八日二十一時二十分二十七秒に原子炉を手動トリップ(手動により原子炉を緊急停止させることをいう。以下同じ。)させている。 一の11について 動燃は、事故発生直後には、ナトリウム漏えい規模が小さいと考え、原子炉を手動により通常停止したものである。仮に原子炉を手動トリップさせた場合には、約一・二秒以内に制御棒の挿入が完了し、原子炉が停止することとなる。 一の12について 原子炉等規制法第三十条の規定に基づき平成七年一月二十五日付けで動燃理事長から科学技術庁長官に提出された原子炉の運転計画によれば、原子炉の中に事故当時入っていたプルトニウムは約千四百六十キログラムである。 二の1について 御質問の「配管」の総数及びその延べ延長距離については承知していない。 二の2について 御質問の「枝管」の総数及び「配管」と「枝管」の溶接箇所の総数については承知していない。 二の3について 御質問の「配管」及び「枝管」のうち最も直径の大きい管は一次主冷却系配管であり、その直径は約〇・八メートル、肉厚は約十一ミリメートルである。 二の4について 御質問の「配管」及び「枝管」のうち最も肉厚の薄い管の肉厚及び直径については承知していない。 二の5から7までについて 政府は、もんじゅがその敷地において想定される最も影響の大きい地震による地震動に対して安全であることを確認している。具体的には、原子炉等規制法第二十三条第一項又は第二十六条第一項の規定に基づく許可に係る審査に際してもんじゅの原子炉施設が原子炉設置許可申請書添付書類又は原子炉設置変更許可申請書添付書類に記載されている地震力に対して安全であることを確認している。なお、この原子炉設置許可申請書添付書類又は原子炉設置変更許可申請書添付書類は従来から公開されているところである。
二の8及び9について 御質問の「配管」及び「枝管」並びにこれらの溶接箇所の設計、施工及び工事完了後の検査の責任者及び担当者の職及び氏名については承知していない。 二の10について もんじゅはその敷地において想定される最も影響の大きい地震による地震動に対して安全であることが確認されていることから、御質問の想定は行っておらず、答弁を差し控えたい。 三の1について もんじゅの運転の目的は、高速増殖炉の開発及び発電である。 三の2について もんじゅの建設費は約五千九百億円である。このうち国の電源開発促進対策特別会計からの支出は、約四千五百億円であり、すべて動燃に対する出資である。なお、当該建設費のうち、国の一般会計から支出されたものはない。 三の3について 平成七年度予算においては、もんじゅの維持管理等に係る経費として約二百三十億円を計上しているが、この内訳は、機器点検等に係る経費として約八十六億円、ユーティリティ(電気、ガス等をいう。以下同じ。)の供給、役務委託等に係る経費として約五十二億円、試験のための経費として約十五億円等である。平成八年度予算案においては、もんじゅの維持管理等に係る経費として約百九十億円を計上しているが、この内訳は、機器点検等に係る経費として約六十二億円、ユーティリティの供給、役務委託等に係る経費として約四十三億円等である。平成九年度以降のもんじゅの運転の収支については、事故の原因究明及び再発防止対策の進捗状況等を踏まえつつ、予算措置を検討することとしている。
三の4について 動燃の平成七年四月一日現在の運転計画に基づく試算によれば、平成十二年三月三十一日までの五年間のもんじゅの発電予定の電力量は約五十億キロワット時になると承知している。
三の5について もんじゅの原子炉が爆発することは考えられず、御質問の想定は行っていない。 四の1について 電気事業者が有する原子力発電所に係る御質問の建設費は、電気事業者の算定によれば別表第一のとおりになると承知している。ただし、別表第一の建設費には、研究開発費等原子力発電所に係るものを特定できない費用が算入されていないものと承知している。
四の2について 我が国最初の原子力発電所が発電を開始した時から、平成七年三月三十一日までの電気事業者の年度別の原子力発電による発電電力量及び発電電力量の合計に占めるその構成比は、別表第二のとおりである。 四の3について 電気事業者が有する電気事業の用に供する電気工作物(電気事業法第二条第一項第十二号に規定するものをいう。以下同じ。)のうち発電用のものは、原子力発電所以外には、水力発電所及び火力発電所のみである。昭和四十年度から平成六年度までの各年度の水力発電所及び火力発電所の出力(電気事業法第四条第一項第三号イに規定するものをいう。以下同じ。)の合計は、別表第三のとおりである。
四の4及び5について 我が国の最初の原子力発電所が発電を開始した時から、平成七年三月三十一日までに電気事業者が有する各原子力発電所から所外に排出された固体、気体及び液体の低レベル放射性廃棄物の量並びにそれらの処理に要した費用の金額はそれぞれ別表第四、別表第五、別表第六及び別表第七のとおりである。高レベル放射性廃棄物は、再処理施設において使用済燃料から分離されるものであり、原子力発電所から排出されるものではない。
五の1について 一九六〇年代の十年間及び最近の十年間(一九八三~一九九二年)における毎年の日本及びフランスの地震発生件数は、別表第八のとおりである。 五の2について 政府は、原子力発電所がそれぞれの敷地において想定される最も影響の大きい地震による地震動に対して安全であることを確認している。具体的には、原子炉等規制法第二十三条第一項又は第二十六条第一項の規定に基づく許可に係る審査に際して発電所の原子炉施設が原子炉設置許可申請書添付書類又は原子炉設置変更許可申請書添付書類に記載されている地震力に対して安全であることを確認している。なお、これらの原子炉設置許可申請書添付書類又は原子炉設置変更許可申請書添付書類は従来から公開されているところである。
五の3について 御質問の発電所に設けられている配管、枝管及び溶接箇所の総数については承知していない。
五の4について 御質問の発電所はそれぞれの敷地において想定される最も影響の大きい地震による地震動に対して安全であることが確認されていることから、御質問の想定は行っていない。 五の5について 御質問の発電所の原子炉が爆発することは考えられず、御質問の想定は行っていない。 六の1について 御指摘のいわゆるオイルショックにおいて、貿易統計上輸入原油価格の高値が確定した時点である昭和五十一年一月前後各十二カ月と、昭和五十六年八月前後十二カ月の需要電力量(電気事業者が供給したものに限る。)は別表第九のとおりである。 六の2及び3について これまで原子力発電関連で支出された資金の金額を特定することは極めて困難であり、また、仮にこれを特定できたとしても、太陽熱発電又は火力発電の開発等にどの程度の金額が必要かを算定することは極めて困難であることから、御質問の試算については答弁を差し控えたい。 別表第二 電気事業者の年度別原子力発電電力量及び発電電力量の合計に占めるその構成比 1/3 別表第二 電気事業者の年度別原子力発電電力量及び発電電力量の合計に占めるその構成比 2/3 別表第二 電気事業者の年度別原子力発電電力量及び発電電力量の合計に占めるその構成比 3/3 別表第七 (低レベル放射性廃棄物の処理に要した費用の金額) 1/2 |