第134回国会(臨時会)
第百三十四回国会答弁書第五号
内閣参質一三四第五号 平成八年一月十九日 内閣総理大臣 橋本 龍太郎
参議院議員荒木清寛君提出最低資本金制度の適用猶予に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員荒木清寛君提出最低資本金制度の適用猶予に関する質問に対する答弁書 一について 商法等の一部を改正する法律(平成二年法律第六十四号)により改正された商法(明治三十二年法律第四十八号)及び有限会社法(昭和十三年法律第七十四号)によれば、株式会社又は有限会社の最低資本金の額は、それぞれ千万円又は三百万円とされているところであるが、この最低資本金に達しない株式会社及び有限会社の数は、平成七年十月三十一日現在、株式会社が約四十四万社、有限会社が約六十万社の合計約百四万社であると推計される。株式会社及び有限会社の全体の数に対する割合は、約三十三パーセントであり、前記商法等の一部を改正する法律が施行された当時のその割合が約六十三パーセントであったのに比べ相当に減少している。
二について 最低資本金制度は、株式会社の株主又は有限会社の社員が有限責任とされていることから、会社の債権者を保護する等のため、これらの会社としてふさわしい財産的基盤を確保することを目的として導入されたものであり、これにより、会社の財産的基盤が確保され、我が国の株式会社又は有限会社の社会的信用と経済的地位の一層の向上が図られることになる。また、最低資本金に達しない株式会社又は有限会社は、他の種類の会社に組織変更をすることにより、解散したものとみなされることを免れ、会社として営業活動を継続することができる。 三及び四について 最低資本金制度は、二についてにおいて述べたとおり、株式会社又は有限会社としてふさわしい財産的基盤を確保するため必要なものであり、また、その制度の導入に当たっては、制度の円滑な実施を図るため、導入時に現に存する株式会社及び有限会社について、制度の適用を五年間猶予するとともに、合名会社又は合資会社への組織変更を特別に認めることとしている上、猶予期間の満了後解散したものとみなされた場合においてもその後三年内に限り所定の決議により会社を継続することができることとするなど、相当の手当てがされている。さらに、最低資本金に達している会社は、既に七割近くに達している上、猶予期間が満了するまでに更に相当多数の会社が所要の増資又は組織変更をするものと見込まれているところであり、猶予期間の延長等をすることは、制度の趣旨を損なうだけではなく、これまでに増資等を行った会社との間に不公平を生ずることにもなる。したがって、猶予期間の延長等をすることは適当ではないと考えている。 五について 最低資本金に達しない株式会社又は有限会社は、合名会社又は合資会社に組織変更をすることにより、会社として営業活動を継続することができる。また、二についてにおいて述べた最低資本金制度の趣旨に照らし、最低資本金に達しない財産的基盤の弱い会社にあっては、無限責任社員を有する合名会社又は合資会社に組織変更をすることにより、会社の取引先その他の債権者に対する債務の履行がより確保されることになる。 六について 株式会社又は有限会社と合名会社又は合資会社との間の組織変更は、商法及び有限会社法の本則では認められていないが、最低資本金制度の導入に伴う経過措置として、最低資本金に達しない株式会社又は有限会社については、その存続を図るため、特に、合名会社又は合資会社に組織変更をすることが認められたものである。
七について 株式会社又は有限会社の資本の増加の登記に対して課税される登録免許税の額は、当該登記が合併によるものである場合を除き、増加した資本の金額に千分の七の税率を適用して計算した税額(当該税額が三万円に満たないときは、申請件数一件につき三万円)とされている。
八について 最低資本金に達しない株式会社又は有限会社である建設業者又は宅地建物取引業者が解散したものとみなされた場合においては、当該建設業者の許可にあっては建設大臣又は都道府県知事はこれを取り消さなければならないこととされ、当該宅地建物取引業者の免許にあっては建設大臣又は都道府県知事への解散した旨の届出があったときにその効力を失うこととされている。また、許可を取り消された建設業者又は免許の効力を失った宅地建物取引業者が、再び建設業又は宅地建物取引業を営もうとする場合には、改めて建設業の許可又は宅地建物取引業の免許を受けなければならない。
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