質問主意書

第132回国会(常会)

答弁書


第百三十二回国会答弁書第二七号

内閣参質一三二第二七号

  平成七年八月二十二日

内閣総理大臣 村山 富市   


       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員三上隆雄君提出返還ガラス固化体に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員三上隆雄君提出返還ガラス固化体に関する質問に対する答弁書

一について

 フランス核燃料会社(以下「COGEMA」という。)及び電気事業者間の再処理契約(以下「再処理契約」という。)に基づきCOGEMAが電気事業者に提出したガラス固化体(使用済燃料を溶解した液体から核燃料物質その他の有用物質を分離した残りの液体をガラスにより固型化したものをいう。以下同じ。)の仕様は、昭和六十一年七月にCOGEMAが提出し、同年九月一日付けで電気事業者が受領した仕様(以下「COGEMA仕様」という。)のみであると承知しており、当該仕様においてどの時点のものであるかについての限定がある数値としては、セシウム一三七及びストロンチウム九〇のガラス固化時の容器当たりの放射能量並びに輸送時の発熱量等が示されている。電気事業者は、COGEMA仕様の検討に当たり、当該仕様においてどの時点のものであるかについての限定がない数値については、それがガラス固化時のものであることの確認等を行い、当該仕様に示された項目及びその数値は妥当であり、当該仕様から得られるガラス固化体を安全に貯蔵し得る貯蔵施設の設計が可能であると判断したと承知している。また、原子力安全局は、当該検討結果について検討を行い、妥当と判断した。

二について

 再処理契約においては、電気事業者は、COGEMAがガラス固化体の仕様を提出した後、日本の関係当局から当該仕様についての承認を得ることを要求されており、当該仕様から得られるガラス固化体が受入れ可能であることについて日本の関係当局から確認が得られない場合には、COGEMAは、当該再処理契約を修正し、再処理役務の提供を行わず、使用済燃料を一時貯蔵の後電気事業者に返還することができることとなっていると承知している。
 電気事業者は、COGEMA仕様に関して検討を行い、当該仕様に示された項目及びその数値は妥当であり、当該仕様から得られるガラス固化体を安全に貯蔵し得る貯蔵施設の設計が可能であると判断し、再処理契約に基づいて科学技術庁に対して当該検討結果の検討を依頼した。科学技術庁は、我が国の原子力政策上、使用済燃料の海外における再処理役務の提供を円滑に受けることが重要であり、そのために必要との政策的判断に基づき、当該依頼に基づいて検討を行い、当該検討結果は妥当であると判断し、その旨を電気事業者に対して昭和六十三年八月三十一日付けで通知した。電気事業者は、当該通知をCOGEMAに通知し、再処理役務の提供を円滑に受けることができたものと承知している。

三について

 日本政府がCOGEMA仕様の承認を行うような法令に基づく制度及び日本政府が返還されたガラス固化体が当該仕様の範囲内であることについて確認を行うような法令に基づく制度はない。なお、返還されるガラス固化体の廃棄に係る安全性は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)に基づく廃棄物管理の事業に係る規制及び工場又は事業所の外において行われる廃棄に係る規制等によって確保される。

四の1について

 COGEMA仕様においては、ガラス固化時の発熱量の記載はない。

四の2について

 TN28VT型輸送容器については、ガラス固化体二十八本を収納する場合のガラス固化体一本当たりの発熱量を一・四六キロワット以下とすることとして設計されたため、ガラス固化体一本当たりの発熱量を一・四六キロワット以下として容器承認申請が行われたと承知している。
 また、当該容器承認申請に対しては平成六年九月十九日付けで承認しており、平成七年四月に返還されたガラス固化体二十八本については、すべて一・四六キロワット以下であったと承知している。

四の3について

 製造されたガラス固化体二十八本それぞれの整理番号は、1770C 、1799C、1347C、1382C、1985C、1748C、1968C、1405C、1329C、1388C、2014C、2061C、2055C、2109C、1773C、1764C、1772C、2074C、1944C、1823C、1943C、1027C、 2019C、1940C、1949C、1982C、2108C及び1981Cであると承知している。
 これらのガラス固化体の製造時期は、いずれも平成四年後半であると承知しているが、電気事業者によれば、個々のガラス固化体の製造年月日の第三者への開示については、再処理契約に基づき、COGEMAの事前許可が必要となっており、電気事業者がCOGEMAと調整を行った結果、COGEMAから自らの経営上の不利益を招くものとして了解が得られなかったとしており、個々のガラス固化体の製造年月日についての答弁は差し控えたい。

五の1及び3について

 フランスにおいては、ガラス固化体の生産、管理等に係る規制がフランス関係当局により策定されており、フランス関係当局は、昭和六十一年七月二十一日付けで、COGEMA仕様を当該規則を踏まえて承認していると承知している。また、フランス関係当局から業務の一部を委託された放射性廃棄物管理公社により、ガラス固化体の製造に係るCOGEMAの品質管理等について監査が実施されていると承知している。

五の2、4及び5について

 返還されるガラス固化体については、仕様そのものについての具体的基準等により法的に規制されているのではなく、その廃棄に係る安全性は、当該ガラス固化体が日本原燃株式会社の廃棄物管理施設において管理される期間を通じて、原子炉等規制法に基づく廃棄物管理の事業に係る規制及び工場又は事業所の外において行われる廃棄に係る規制等によって確保されるものである。なお、かかる安全規制の一環として、当該ガラス固化体が電気事業者により廃棄物管理設備に廃棄される場合に講じられる保安のために必要な措置が、核燃料物質等の工場又は事業所の外における廃棄に関する規則(昭和五十三年総理府令第五十六号)の規定に適合することについて科学技術庁長官が確認することになっており、現在、この確認を行っているところである。

五の6について

 COGEMA仕様においては、ガラス固化時の容器当たりの放射能量としてセシウム一三七については十八万キュリー未満、ストロンチウム九〇については十二万五千キュリー未満であること等がCOGEMAにより保証されると示されており、また、残滓(輸送及び電力会社への返還に適する形態になっている廃棄物をいう。以下同じ。)の製造等のために設定されたCOGEMAの品質管理及び品質保証措置が、COGEMAから電気事業者に提出された仕様を満たす残滓の製造及びその品質の保持のために適切なものであること等についてビューロ・ベリタスが確認するものと承知している。