質問主意書

第132回国会(常会)

質問主意書


質問第二七号

返還ガラス固化体に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成七年六月十四日

三上 隆雄   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   返還ガラス固化体に関する質問主意書

 今回、フランス核燃料会社(以下「COGEMA」という。)から返還され、青森県に貯蔵される返還ガラス固化体二十八本についての安全性と健全性は青森県民にとって重要な問題である。ガラス固化体の安全性と健全性を誰が保証するのか、法令に基づいて保証されているのか。十分な情報公開がされていない現状に、県民の不安と疑念は広がっている。以下、一九八六年COGEMAより電力会社に提示された「COGEMAガラス固化残滓仕様」およびガラス固化体の安全性と健全性に関する質問をする。

一 一九八六年のCOGEMA提示仕様について

 衆議院議員今村修君提出「返還ガラス固化体の仕様と貯蔵管理に関する質問主意書」(平成六年十二月八日付)の質問中「提示された仕様は、ガラス固化体製造時の仕様か。返還時の仕様か。」との問いに対して、政府は「COGEMA仕様には、一部を除き、どの時点における仕様かについての限定はない。」と答弁している。

1 この仕様で限定される「一部」とは、いつの時点で何を定めているものなのか。
2 一部を除いて大部分が限定されない仕様にどんな意味があるのか。この仕様は何を示したものか。
3 この仕様を基に電力会社がガラス固化体の安全性と健全性を検討しており、その結果は核種濃度、発熱量、放射線量などの数値が妥当だと結論している。また、原子力安全局も検討した結果、電力会社の結論は妥当だとしている。大部分の数値が、いつの時点での仕様数値か限定されていないものを、どのように検討して数値が妥当だとの結論を出せたのか。
4 COGEMAから提示された仕様は何種類あるのか。
5 ガラス固化体製造時の仕様はCOGEMAから示されていないのか。示されていれば、その年月日を明らかにしていただきたい。
6 ガラス固化体返還(輸送)時の核種濃度、発熱量、放射線量などの数値基準(以下「返還時基準」という。)は、COGEMAから示されていないのか。示されていれば、その年月日を明らかにしていただきたい。
7 製造時及び返還時基準がCOGEMAから示されていないとすれば、その理由は何か。

二 COGEMA提示仕様の承認と確認について

 衆議院議員今村修君提出「海外再処理契約及び返還ガラス固化体に関する質問主意書」(平成六年七月二十一日付)の質問中「「再処理契約に基づいて」とあるが、再処理契約のどのような条文に基づいて検討依頼を電気事業者はしたのか。」「検討依頼に応じなければ「再処理役務の提供を円滑に受けることに支障を来す」とあるが、再処理契約のどのような条文により、どのような支障を具体的に来すのか。」との問いに対して、政府は「再処理契約においては、電気事業者は、COGEMAからガラス固化体の仕様が提出された後、日本の関係当局から当該仕様についての承認を得ることを要求されているものと承知している。」「再処理契約においては、当該仕様から得られるガラス固化体が受入れ可能であることについて日本の関係当局から確認が得られない場合には、COGEMAは、再処理契約を修正し、再処理役務の提供を行わず、使用済燃料を一時貯蔵の後電気事業者に返還することができることとなっていると承知している。」と答弁している。
 参議院議員翫正敏君提出「返還高レベル放射性廃棄物に関する質問主意書」(平成七年一月三十日付)の質問中「高レベル放射性廃棄物の仕様の確認については、科学技術庁から担当者をフランスに派遣するときいているが、いつ、どこでどのように確認するのか。ガラス固化体ひとつひとつについてサンプルを取って確認するのか、書類のみで確認するのか。もし、申請の仕様どおりでない場合、輸送は延期されるのかどうか、明らかにされたい。」との問いに対して、政府は「フランスから返還されるガラス固化体に関し、COGEMA及び我が国の電気事業者間の再処理契約に基づきCOGEMAは電気事業者にガラス固化体の仕様を提示したが、今回返還されるガラス固化体について国が当該仕様の確認を行うような法令に基づく制度はない。」と答弁している。

1 再処理契約では以前に「日本の関係当局から当該仕様についての承認を得ることを要求されている」と政府は答弁しているにもかかわらず、「今回返還されるガラス固化体について国が当該仕様の確認を行うような法令に基づく制度はない。」との答弁をしているのは矛盾している。
 COGEMAから提示されたガラス固化体仕様を日本の関係当局は、確認または承認したのか。確認または承認年月日を明らかにしていただきたい。
2 日本の関係当局が仕様の確認または承認をしていないとすれば、電気事業者はCOGEMAの要求にどう応えたのか。
3 再処理契約でいう関係当局の承認とは何か。どこの官庁が何を承認するのか。
4 再処理契約でいう関係当局の確認とは何か。どこの官庁が何を確認するのか。
5 再処理契約でいう確認はいつするのか。確認していれば確認年月日を明らかにしていただきたい。

三 ガラス固化体製造時仕様と返還時基準について

1 返還されたガラス固化体の製造時仕様(設計基準)を、日本政府は承認したのか。承認申請と承認年月日を明らかにしていただきたい。
2 返還されたガラス固化体が、製造時仕様に従って製造されていることを日本政府は確認したのか。確認方法と確認年月日を明らかにしていただきたい。
3 返還されたガラス固化体の返還時基準を日本政府は承認したのか。承認申請と承認年月日を明らかにしていただきたい。
4 返還されたガラス固化体が、返還時基準に従って返還されることを日本政府は確認したのか。確認方法と確認年月日を明らかにしていただきたい。

四 返還ガラス固化体の発熱量について

 衆議院議員今村修君提出「返還ガラス固化体の仕様と貯蔵管理に関する質問主意書」(平成六年十二月八日付)の質問中「提示された仕様の最大発熱量及び最小発熱量はいくらか。」との問いに対して、政府は「COGEMA仕様においては、輸送時の発熱量は二キロワット未満と示され、最小値は示されていない。」と答弁している。

1 製造時の発熱量は何キロワット未満か。
2 輸送容器承認申請では、発熱量一・四六キロワットで申請しているが、二キロワット以下で申請していないのはなぜか。返還されるガラス固化体の発熱量は全て一・四六キロワット以下なのか。
3 返還されたガラス固化体二十八本それぞれの製造番号と製造年月日を明らかにしていただきたい。

五 返還ガラス固化体の安全性と健全性の保証について

1 ガラス固化体の安全性と健全性をフランス政府は確認または承認をしているのか。確認または承認年月日を明らかにしていただきたい。
2 ガラス固化体の安全性と健全性を日本政府は確認または承認しているのか。確認方法と確認年月日を明らかにしていただきたい。
3 ガラス固化体の安全性と健全性を確認または承認する安全基準、健全基準はフランスにあるのか。
4 ガラス固化体の安全性と健全性を確認する安全基準、健全基準は日本にあるのか。
5 返還されたガラス固化体の安全性と健全性は、誰によって何年保証されているのか。
6 ビューロ・ベリタス社の「適合書」の内容をフランス政府は保証せず、日本政府も「適合書」を承認していない。製造時仕様に従って、ガラス固化体が製造されていることを保証するのは誰か。

  右質問する。