質問主意書

第132回国会(常会)

質問主意書


質問第二三号

防衛庁・自衛隊における法律秘の公開・開示手続きに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成七年六月五日

翫 正敏   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   防衛庁・自衛隊における法律秘の公開・開示手続きに関する質問主意書

 私は今国会において、秘密保全に関する訓令(昭和三十三年防衛庁訓令第百二号)に基づく秘密(以下「訓令秘」という。)に指定されていないにもかかわらず、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第五十九条第一項に規定する「秘密」に該当するもの(以下「訓令秘に指定されていない法律秘」という。)の保全・開示・公開等に関する手続きについて、政府に対し明らかにすることを繰り返し求めてきたが、政府からは明確な回答を得られなかった。
 しかしながら現実には、大韓航空機撃墜事件(一九八三年九月一日)の前後を示す交信記録は訓令秘に指定されていない法律秘であったにもかかわらず公表され、多用途支援機の選定に係る有識者会合の委員に委嘱された三名の有識者に対しては訓令秘に指定されていない法律秘に該当する資料の貸し出しが行われている。
 そこで政府の見解を明らかにするために以下質問する。

一 公開について

 大韓航空機撃墜事件の前後を示す交信記録は、「非公知性と秘匿の必要性の二つの要素を具備していたが、この事件の異常性と重要性にかんがみ、真相究明のため、本交信記録を公表することが相当と判断され」(「防衛庁・自衛隊における法律秘に関する再質問」に対する政府答弁(一九九五年五月一二日))、「内閣総理大臣の決裁を経て」(「防衛庁・自衛隊における法律秘に関する質問」に対する政府答弁(一九九五年四月一一日))公開されたものである。

1 当該交信記録が訓令秘に指定されなかった理由を明らかにされたい。
2 当該交信記録が「非公知性と秘匿の必要性の二つの要素を具備していた」(「防衛庁・自衛隊における法律秘に関する再質問」に対する政府答弁(一九九五年五月一二日))まま公開され得たのは、いかなる法令上の根拠に基づいてか。
3 当該交信記録の公開によってこれまでに「自衛隊の任務の適正な遂行等」(「防衛庁・自衛隊における法律秘に関する再質問」に対する政府答弁(一九九五年五月一二日))や「防衛庁の所掌事務の遂行」(「教範類の「対国民秘」扱いに関する質問」に対する政府答弁(一九九三年七月二三日))に支障が生じたことがあるか。
4 当該交信記録の公開は「内閣総理大臣の決裁を経て」行われたとのことであるが、この「内閣総理大臣の決裁」とはどういう性格のものかはなはだ不明である。
 この当時内閣官房長官を務めた後藤田正晴氏は、内閣総理大臣の権限について「内閣総理大臣は、合議体としての内閣を代表する立場から各大臣を指揮するもので、自ら、単独に指揮監督することはできないのである。換言すれば、各省庁所管の行政事務については、閣議にかけて決定した方針に基づかずに、内閣総理大臣が、各大臣を指揮監督することはできないし、また、閣議にかけて決定した方針に基づくものでも、各大臣の頭越しに、事務当局に、直接、指揮監督することはできない。」(後藤田正晴著「政と官」講談社・二三二頁)と説明している。この説に従えば、交信記録の公開に内閣総理大臣の決裁は特段必要ないと考えられる。
 そこで、

(1)「内閣総理大臣の決裁」とは、交信記録の公開を許可したものなのか、それとも交信記録の公表を所管の大臣に命じたものなのか、
(2)交信記録の公開を決定したのは内閣総理大臣なのか、それとも所管の大臣なのか、をそれぞれ明らかにされたい。

5 当該交信記録の公開は、いかなる法令上の手続きに従って行われたものか、明らかにされたい。

二 開示について

 「防衛庁・自衛隊における法律秘に関する再質問」に対する政府答弁(一九九五年五月一二日)によれば、多用途支援機の選定に係る有識者会合の委員に委嘱された三名の有識者に対して訓令秘に指定されていない法律秘に該当する資料の貸出しが秘密保全に関する訓令(以下「訓令」という。)に定める「手続きの趣旨にのっとり」行われたという。
 そこで以下の点をそれぞれ明らかにされたい。

1 当該資料が訓令秘に指定されなかった理由を明らかにされたい。
2 「手続きの趣旨にのっとり」ということは、訓令に定める手続きを経て資料の貸出しが行われたということか。
3 通常、訓令秘に指定されていない法律秘に該当する資料の貸出しについては、全て訓令の「手続きの趣旨にのっとり」行われているのか。

  右質問する。