質問主意書

第132回国会(常会)

質問主意書


質問第一六号

活断層対策等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成七年五月一日

荒木 清寛   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   活断層対策等に関する質問主意書

 本年一月十七日早朝に発生した阪神・淡路大震災は、五千五百名を超える死者・行方不明者を出し、家屋や高速道路の高架橋の倒壊、電気・ガス・水道等のライフラインの寸断など戦後最大の被害を生じ、大都市直下型地震の恐ろしさを見せつけた。今回の大震災は、震源地である淡路島の活断層による典型的な内陸直下型地震であり、このことから活断層の存在が一躍、国民の注目を集めた。我が国は、約二千ともいわれる活断層を有する活断層列島であるとともに、世界有数の地震多発国である。今後さらに活断層に対する調査研究を推進するとともに、その防災対策が重要かつ必要と考える。
 以下、活断層に関する次の諸点について質問する。

一 活断層の分布状況等について

1 「活断層」の定義について説明されたい。また、活断層の存在が確認されている数は、千五百とも二千ともいわれているが、現在どの程度確認がなされているのか。
2 最近、旧江戸川下に新たな活断層が確認されているが、阪神・淡路大震災の発生後、確認された活断層はどのくらいあるのか。また、それはいかなる所で確認されているのか。
3 活断層の活動歴調査によって要注意の活断層がわかるとされているが、活断層の活動歴調査は、現在どの程度なされているのか。また、活動歴調査の結果、要注意の活断層として、今回の大震災の震源となった「有馬-高槻-六甲断層帯」を初め、「中央構造線」、「阿寺断層」、「伊那谷断層帯」、「糸魚川-静岡構造線」、「富士川断層帯」、「国府津-松田断層帯」 、「柳ケ瀬-鈴鹿断層帯」、「駿河トラフ」、「西関東断層帯」、「信濃川断層帯」、「秋田-庄内断層帯」の十二か所を指摘している学者がいるが、政府としての判断はどうか。

二 施設建築物等の建設に際する活断層対策について

1 活断層を避けて建設することが求められている施設構造物には、現在、どのようなものがあるのか。
2 阪神・淡路大震災において、活断層上やこれに沿って建設された建築物をみると、耐震設計がなされたものでも損壊している部分が見受けられる。米国のカリフォルニア州の活断層法では、建築物を建てようとする際の断層調査の義務化や活断層から両側十五メートルは居住用建築物を建てられないなどの規制を定めているという。また、ニュージーランドの建築基準は、活断層地帯の建築物について破壊されにくい耐震設計にすることの義務化が図られているという。我が国でも神奈川県横須賀市において、デベロッパーによる民間住宅建設時に活断層を避けて建築することの指導を行っている。
 土地が狭く、かつ、活断層列島といわれる我が国では、活断層地帯の建築規制は困難といえるが、これらの事例をかんがみると、少なくとも災害時には避難所ともなる小中学校、被災負傷者を受け入れる病院、日常において不特定多数の者の出入りがある施設建築物には規制が必要であると考えるが、政府の見解はどうか。
3 一般国民からみると、せっかく苦労して手に入れた住宅が活断層上にあることがわかった場合、不安を抱えながら住むことになる。生活者保護の観点からも当該地域の活断層情報を公開する施策が求められる。
 兵庫県でも今回の大震災を教訓に活断層図を作成し、関係市町村や企業などに情報公開をしていく方針という。これを一歩進めて、全国の各地方自治体が当該地域の活断層図を作成し、地域住民に公開する必要があると考えるが、政府の見解はどうか。
 また、活断層に対する住民自らの防衛策に当該自治体が積極的に相談に乗り、かつ、補助を含めた支援体制を創設すべきであると考えるが、政府の見解はどうか。

三 阪神高速道路公団の大阪湾深部基盤構造の探査等について

1 今回の大震災では、阪神高速道路三号神戸線の高架橋が六百三十五メートルにもわたって横倒しになる被害を受けた。神戸大学の現地調査によると、神戸市から宝塚市にかけて九断層が動いたことが確認されたという。三号神戸線の近くの芦屋断層もそのひとつに入っている。ところで、阪神高速道路公団が昭和六十一年に大阪湾の深部基盤構造を探査した際、大規模な活断層を発見したと報道されている。しかも、探査にあたった技術者たちはその危険性を指摘していたという。どのような調査方法により、どのような事実が明らかになったのか説明されたい。
2 三号神戸線等の高速道路がかなりの被害を受けている事実からすると、補強などの事業を行ったということは認めがたいが、この探査結果を受けて具体的にどのような対策を実施したのか示されたい。
3 阪神高速道路の復旧工事にあたり、今回の経験を教訓に今後、どのような対処をしていくつもりなのか具体的に説明されたい。

四 特定観測地域等における活断層の実態調査と地域防災計画への反映について

 地方自治体が作成する地域防災計画は、災害時の応急対策、予防対策など広範な分野にわたって基本的な考え方が盛り込まれている「災害時の憲法」とも言えるものである。しかしながら、地震に絞った細かな震災対策を設けている自治体は少ないという。今回の大震災を契機に地域防災計画を見直す自治体が多いが、兵庫県や京都府などは活断層調査を行い、その調査結果を地域防災計画に反映させていくとしている。
 国は現在、防災基本計画の見直し作業を進めているが、活断層調査を見直しの項目に入れるとともに、地域防災計画に反映させるよう指導を行うべきである。さらに、国として少なくとも「特定観測地域」及び「観測強化地域」について、詳細な実態調査を行い、その観測の強化を図る必要があると考えるが、これらの点についてどう考えるか。

  右質問する。