質問主意書

第132回国会(常会)

質問主意書


質問第一五号

防衛庁・自衛隊における法律秘に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成七年四月二十七日

翫 正敏   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   防衛庁・自衛隊における法律秘に関する再質問主意書

 先に私が提出した「防衛庁・自衛隊における法律秘に関する質問」に対する政府答弁(一九九五年四月一一日)の不明な点につき再度質問する。
 なお以下においては、質問の便宜上、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第五十九条第一項に規定する「秘密」を「法律秘」、秘密保全に関する訓令(昭和三十三年防衛庁訓令第百二号。以下「訓令」という。)に基づき秘密に指定されたものを「訓令秘」という。

一 政府は、法律秘の定義に関し、訓令の規定による秘密の指定の有無にかかわらず、「一般に知られていない事実であって、他に知られないことについて相当の利益を有するもの、すなわち、非公知性と秘匿の必要性の二つの要素を具備している事実をいう」との見解を示しているが、これに関連して以下の点を明らかにされたい。

1 この法律秘に関する定義は自衛隊法施行時から現在まで一貫した見解なのか。
2 防衛庁はこの法律秘の定義に関する見解を自衛隊員に周知徹底するために、防衛庁における文書の形式に関する訓令(昭和三十八年防衛庁訓令第三十八号)第十五条で定める通達類を発したことはあるか。もし発した事実があるならば、該当する通達類を明らかにされたい。

二 先の政府答弁によれば、「取扱上の注意を要する文書等の取扱いについて(昭和五十六年三月二日防衛事務次官通達)に基づく『部内限り』又は『注意』の表示のある文書等で、訓令の規定により秘密に指定されていない自衛隊法第五十九条第一項に規定する『秘密』に該当しないものは、存在する。」とのことであるが、これに関連して以下の点を明らかにされたい。

1 「部内限り」又は「注意」に指定されながら法律秘に該当しない文書等の点数及び件数を明らかにされたい。
2 「部内限り」及び「注意」は法律秘に該当しないものをも対象としており、これは同一の取扱いの規定をもって法律秘に該当するものも、法律秘に該当しないものも同等に取り扱っていることになる。しかしながら法律秘に該当しないものに対して足りるとする取扱規定をもって、法律秘に対しても取り扱うことは、秘密保全のための措置としては不十分と考えざるを得ないが、政府は十分と考えているのか。もし十分と考えているのであれば、その理由を明らかにされたい。

三 先の政府答弁によれば、「訓令の規定により秘密に指定されていない文書等で自衛隊法第五十九条第一項に規定する『秘密』に該当するものが、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百条第一項又は地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三十四条第一項の『秘密』に該当する場合は」守秘義務を負う旨の答弁があったが、これに関連して以下の点を明らかにされたい。

1 同答弁で「該当する場合は」と断っていることからも、法律秘に該当する事項でも国家公務員法あるいは地方公務員法上の「秘密」に該当しない場合があり得ると政府は考えているのか。
2 法律秘に該当する事項でも国家公務員法あるいは地方公務員法上の「秘密」に該当しない場合があり得ることを認めるならば、法律秘に該当する特定の事項を漏らしても自衛隊員なら守秘義務違反を問われるにもかかわらず、国家公務員や地方公務員なら守秘義務違反に問われないという不平等が生じるのではないか。

四 大韓航空機撃墜事件(一九八三年九月一日)の前後の様子を示す交信記録の公表について、以下の点を明らかにされたい。

1 この交信記録は、非公知性と秘匿の必要性の二つの要素が失われていないにもかかわらず公表されたのか。
2 もしそうなら、非公知性と秘匿の必要性の二つの要素が失われていない法律秘を公表できる法令上の根拠は何か。
3 法律秘に該当する事項が、非公知性と秘匿の必要性の二つの要素が失われていないにもかかわらず公表された理由は何か。

五 先の政府答弁によれば、我が国領空侵犯の事実の公表は「防衛庁が、関係省庁と協議しその適否を総合的に判断した上で、これを行っている」とのことであるが、一方で、「領空侵犯が発生した際、政府として総合的に判断した結果、その公表を差し控えることとした場合には、当該事実は、自衛隊法第五十九条第一項に規定する『秘密』に該当する。」(「防衛庁・自衛隊における秘密に関する再質問」に対する政府答弁(一九九五年三月二四日))という。
 公表を差し控えられた領空侵犯の事実については、協議に加わった関係省庁の国家公務員は国家公務員法第百条第一項に定める守秘義務を負うのか否か明らかにされたい。

六 先の政府答弁によれば、「多用途支援機の機種選定に係る有識者会合の委員に委嘱した三名の有識者に対しては、防衛局長又は航空幕僚長の許可に基づき、訓令の規定により秘密に指定されていない文書で自衛隊法第五十九条第一項に規定する『秘密』に該当するものの貸出し等を行ったところである。」とのことであるが、この「防衛局長又は航空幕僚長の許可」はいかなる法令上の根拠に基づいて下されたのか明らかにされたい。

七 一九九四年一二月八日付『朝雲』紙に掲載された、陸上自衛隊の「ルワンダ難民救援隊」の警備日誌の内容には、法律秘に該当する部分はあるのか。

八 法律において罰則等を定めているのは何らかの保護法益が存在するからであり、自衛隊法上の守秘義務も例外でない。そこで政府は、自衛隊法第五十九条で定める自衛隊員の守秘義務の保護法益は何であるか明らかにされたい。

  右質問する。