質問主意書

第131回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質一三一第七号

  平成六年十二月二十日

内閣総理大臣 村山 富市   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員稲村稔夫君提出柏崎刈羽原子力発電所の地盤に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員稲村稔夫君提出柏崎刈羽原子力発電所の地盤に関する質問に対する答弁書

一の1について

 安田層の堆積状況については、ボーリング調査の結果から、東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の敷地(以下「敷地」という。)内においてほぼ水平に堆積していると判断している。このように敷地内において第四紀後期の安田層がほぼ水平な構造を示すこと、西山丘陵に線状地形が認められないこと、椎谷向斜軸部に分布する高位段丘面に高度変化が認められないことなどから、敷地及び刈羽村寺尾を含む敷地付近の西山丘陵地域において少なくとも第四紀後期における構造運動に伴う褶曲及び断層活動はないと判断している。
 御指摘の「東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所付近の西山丘陵地域の断層について(平成六年一月二十七日)」(以下「報告書」という。)の二十一頁から二十三頁までに示す「寺尾周辺露頭及び断面位置図」及び「寺尾周辺地質断面図」は、安田層の構造について報告書に示している判断の根拠としておらず、同図は、東京電力株式会社が当該地域で調査を実施しているので、その調査結果を示したにすぎない。
 なお、東京電力株式会社は同図の作成に当たっては、各露頭及びボーリングの位置は断面線に投影し、また地形は、安田層及びその上位の番神砂層の分布状態を見やすくするため、断面線の前後の尾根部の地形を投影して作図したとしている。

一の2の(1)について

 御指摘の報告書の十二頁に示す「敷地内安田層地質断面図」は、敷地の長辺方向に沿って原子炉建屋近傍を通る南北方向の断面における安田層の分布状況を示したものであり、同図の七本のボーリングは断面線付近のボーリングから偏りがないように抽出したものである。

一の2の(2)について

 御指摘の報告書の十二頁に示す「敷地内安田層地質断面図」に示す七本のボーリングからは火山灰は確認されていない。

一の3について

 政府は、火山灰の同一性については判断していない。
 御指摘の報告書の二十二頁及び二十三頁に示す「寺尾周辺地質断面図」は、安田層の構造について報告書に示している判断の根拠としておらず、同図は、東京電力株式会社が当該地域で調査を実施しているので、その調査結果を示したにすぎない。
 なお、東京電力株式会社は、御指摘の同図に示す火山灰については野外での観察結果及び室内での鉱物分析に基づいて同一のものと判断したとしている。

二について

 御指摘の報告書の十三頁に示す「椎谷付近の段丘分布図」において「H面」とした段丘面については、空中写真の判読により、安田層が構成している中位段丘面と比較して、分布高度が高く、浸食の程度も激しいことから、中位段丘面ではなく、高位段丘面と判断した。

三の1から3までについて

 御指摘の寺尾断層については、敷地内において第四紀後期の安田層がほぼ水平な構造を示していること、西山丘陵に線状地形は認められないこと、椎谷向斜軸部に分布する高位段丘面に高度変化は認められないことなどから、敷地及び刈羽村寺尾を含む敷地付近の西山丘陵地域において少なくとも第四紀後期における構造運動に伴う褶曲及び断層活動はないと判断されること等を総合的に勘案して、活断層ではなく、地すべり性の断層と判断している。
 ちなみに、報告書十五頁から十七頁までに示す東京電力株式会社から入手した露頭スケッチ及び写真によると、報告書十六頁に示す泥岩層(1)は、報告書十五頁に示すAトレンチの南北両側壁の椎谷層中に、断層の左右両面にほぼ連続して認められ、同泥岩層を挟んで石灰質砂岩層が上下に分布していること、同泥岩層を挟んで分布する砂岩には明らかに岩相の相違があることなどから、断層の両側にある泥岩層(1)の同一性は的確に判断できると考えられ、また、椎谷層の変位を適切に評価するためには椎谷層中に変位量を測定する基準を設定する必要があることから、この泥岩層(1)を変位の基準層とすることは適切であると考えられる。

四の1及び2について

 当該原子炉施設の設置位置付近において、東京電力株式会社は、各号炉の原子炉設置許可申請及び設置変更許可申請に当たり、ボーリング調査及び試掘杭調査を行い、これらにより存在が確認された断層について十分な調査を行った上で、性状及び相互の関係を検討し、活動時期を確認する必要がある断層については、更に詳細な追跡杭調査等を行った。その結果、政府は、当該断層が安田層上部層に変位を与えていないことを確認したことから、当該原子炉施設の設置位置付近において存在が確認された断層は、安全上支障となるものではないと判断している。
 御指摘の判断根拠等については、「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置に係る安全性について」、「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置変更(2、5号原子炉の増設)に係る安全性について」、「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の原子炉の設置変更(3、4号原子炉の増設)に係る安全性について」、「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の原子炉の設置変更(6、7号原子炉の増設)に係る安全性について」、「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所原子炉設置許可申請書」、「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(2、5号原子炉の増設)」、「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(3、4号原子炉の増設)」及び「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(6、7号原子炉の増設)」で公表されている。

四の3について

 寺尾断層は第四紀後期の地層中にも見られるものであるが、当該断層については、敷地内において第四紀後期の安田層がほぼ水平な構造を示していること、西山丘陵に線状地形は認められないこと、椎谷向斜軸部に分布する高位段丘面に高度変化は認められないことなどから、敷地及び刈羽村寺尾を含む敷地付近の西山丘陵地域において少なくとも第四紀後期における構造運動に伴う褶曲及び断層活動はないと判断されること等を総合的に勘案して、活断層ではなく、地すべり性の断層と判断している。
 一方、御指摘の「東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所原子炉設置許可申請書」の添付書類六の追補の百一頁に示されるα、β両断層については、断層と安田層との関係を確認し、安田層上部層に変位を与えていないことから、少なくとも安田層堆積以降の活動は認められず、当該断層は安全上支障となるものではないと判断している。

四の4について

 御指摘の断層は、「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(3、4号原子炉の増設)」の添付書類六の六-三-百七十四頁に示される三号炉と四号炉との間に位置する(1)、(2)断層のことと思われるが、東京電力株式会社は、当該断層について十分な調査を行い、性状及び相互の関係を検討するとともに、更に詳細な追跡杭調査等を行った。その結果、政府は、当該断層が安田層に変位を与えていないことを確認したことから、当該断層は安全上支障となるものではないと判断している。
 御指摘の判断根拠等については、「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の原子炉の設置変更(3、4号原子炉の増設)に係る安全性について」及び「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(3、4号原子炉の増設)」で公表されている。

五について

 一の1についてから四の4についてまでに述べたとおり、政府としては、報告書に示す判断を変えるような事実誤認はないと考えており、調査の必要は特にないと考える。