質問主意書

第131回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質一三一第二号

  平成六年十月二十五日

内閣総理大臣 村山 富市   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員立木洋君外一名提出国連海洋法条約に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員立木洋君外一名提出国連海洋法条約に関する質問に対する答弁書

一について

 一九八二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約(以下「海洋法条約」という。)は、国際社会における安定した海洋の法的秩序の確立に資するのみならず、海洋国家としての我が国の国益に沿うものであり、政府としては、海洋法条約が発効する運びとなったことを歓迎するとともに、海洋法条約を早期に締結したいと考えている。
 御指摘の、国内法の整備及び関係国との協議を含め、海洋法条約の締結へ向けて、いかなる準備をどのように進めていくかについては、今後慎重に検討してまいりたい。

二の(1)について

 我が国の漁業水域における生物資源の利用、保存及び管理については、現在、漁業関連法令に従って適切に行っているところであるが、海洋法条約との関係については、今後、慎重に検討してまいりたい。

二の(2)について

 我が国は、韓国及び中国との間で、それぞれ日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定(昭和四十年条約第二十六号。以下「日韓漁業協定」という。)及び日本国と中華人民共和国との間の漁業に関する協定(昭和五十年条約第二十四号。以下「日中漁業協定」という。)を締結し、これらの協定の下で、我が国周辺水域における漁業秩序の維持及び漁業資源の保存に努めてきているところであり、このような取組は、海洋法条約の想定している生物資源の保存及び最適利用の立場から大きく逸脱しているとは考えていない。いずれにせよ、韓国及び中国との漁業関係については、今後とも生物資源の効果的な保存及び最適利用といった点も踏まえ、適切に対処してまいりたい。

二の(3)について

 漁業水域に関する暫定措置法(昭和五十二年法律第三十一号)及び漁業水域に関する暫定措置法施行令(昭和五十二年政令第二百十二号)において漁業水域から一定の水域を除外し、また韓国及び中国両国国民に対し漁業水域における外国人規制措置の適用除外を行ってきたことは、両国との間にそれぞれ日韓漁業協定及び日中漁業協定に基づく漁業関係が存在していること等を考慮したものである。
 この水域に漁業水域を設定するとともに韓国及び中国両国国民に対し同法を適用することについては、日韓漁業協定及び日中漁業協定に基づく枠組みの見直しが必要であること、両国の周辺水域で展開されている我が国漁船の操業に及ぼす影響や日韓・日中関係全般に及ぼす影響も考慮する必要があること等から、これを早急に実現することは困難である。

二の(4)について

 いわゆる国連公海漁業会議は、公海域のみならず各国の管轄権の及ぶ水域内を回遊域の一部とするタラ類、マグロ類等の魚種についての保存管理措置等に関し一般的なルールを検討することを目的としているものであり、水域ごとの具体的な保存管理措置を定めることを目的としているものではない。
 我が国、韓国及び中国に面した水域における具体的な保存管理措置については、必要に応じ、これらの国の間で協議、決定していくべきものと考えている。

三の(1)及び(3)について

 政府としては、明年以降の日韓漁業関係につき幅広く協議するため、現在、日韓漁業実務者協議を開催しており、このような協議を通じてより良い日韓漁業関係が築けるよう、最大限努力しているところである。
 御指摘のような二百海里水域の設定の問題に関しては、我が国と関係国との間のこれまでの漁業関係の経緯、我が国周辺水域への当該関係国漁船の展開状況、当該関係国周辺水域に出漁している我が国漁船への影響、更に、我が国と当該国との関係全般に与える影響等を総合的に勘案しつつ、慎重に検討すべき問題であると考える。

三の(2)について

 最近の国連事務局作成資料によれば、幅員二百海里の排他的経済水域を設定している国又は地域は八十四であり、幅員二百海里の漁業水域を設定している国又は地域は十五である。
 なお、関係国が認めないとの理由で、自国について二百海里水域を設定していない国の存否については、各国が二百海里水域を設定していない理由が必ずしも明らかではないので承知していない。

三の(4)について

 竹島については、歴史的事実に照らしても、また、国際法上も、我が国固有の領土であることは明白であり、政府は、韓国側が同島を不法に占拠し、同島周辺の十二海里水域から日本漁船を締め出していることを誠に遺憾であると考える。
 竹島周辺での安全操業問題については、政府としては、領有権問題に十分配慮しつつ、現実的に関係漁民の利益を確保するという見地から従来より努力を重ねており、今後ともこのような観点に立って努力してまいりたい。

三の(5)について

 政府としては、竹島の領有権に関する日韓両国間の紛争は、あくまでも平和的手段により問題の解決を図るとの基本的立場に立って、外交上の経路を通じて今後とも粘り強く問題の解決を図っていく所存である。
 また、尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、現に我が国はこれを有効に支配している。したがって、中国との間に尖閣諸島の領有権をめぐって解決すべき問題はそもそも存在していない。