質問主意書

第131回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一二号

首都圏中央連絡道路(一般国道二〇号~埼玉県境間)建設事業に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成六年十二月二日

上田 耕一郎   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   首都圏中央連絡道路(一般国道二〇号~埼玉県境間)建設事業に関する質問主意書

 首都圏中央連絡道路(一般国道二〇号~埼玉県境間)建設事業は、平井橋の橋脚・橋台工事や高尾山の水平ボーリングが開始されるなど、あらたな段階にはいっている。高尾山に巨大なトンネルが建設されるならば、東京都民のオアシスである高尾国定公園の自然環境に重大な影響をおよぼすことが強く懸念される。しかも最近、建設省相武国道工事事務所は、住民の意見を無視して工事を強引に押し進めようとする異常な対応をくりかえしている。そのようなやり方が許されるなら、単に圏央道だけの問題にとどまらず、建設省が施行する全国の道路建設事業のあり方にもかかわることとなり、黙視することはできない。
 よって以下質問する。

一、秋川市牛沼地区の路線測量について

 建設省相武国道工事事務所は、本年七月二十六日、秋川市牛沼地区の圏央道の路線測量(約三百メートル)が終了したと発表した。同地区は、道路予定敷地の大半を所有する地権者が圏央道計画に反対しており、測量のための立入りにも同意していないため、路線測量が実施できていなかった所である。実際、路線測量終了発表後の八月二十九日に現地で確認したところ、公道などに十本程度の杭しか打たれておらず、路線測量がきちんと行われたとはとても考えられない状態であった。

1 測量法は、基本測量以外の測量のうち、測量に要する費用を国が負担して行うものは原則として公共測量である(第五条)旨定め、公共測量は建設大臣の承認を得た作業規程に基づいて実施しなければならない(第三十三条第二項)と定めている。建設省が実施している圏央道建設事業の路線測量は、当然測量法で定められた公共測量であり、建設大臣が承認した作業規程に基づいて実施されなければならないものと考えるが、どうか。
2 測量法第五条は、政令で定める局地的測量を公共測量の範囲から除外しているが、同法施行令第一条第一項第四号ただし書は、既に実施された公共測量に追加して行われる測量は、小規模のものでも公共測量から除外しない旨を定めている。
 秋川市牛沼地区の圏央道当該区間の路線測量は、既に公共測量として実施されたと思われる圏央道の路線測量の追加として行われるものであるから、測量法施行令第一条第一項第四号ただし書によって当然測量法の公共測量であり、建設大臣が承認じた作業規程に基づいて実施されなければならないものと考えるが、どうか。そうでないとすれば、その根拠規定を明示されたい。
3 相武国道工事事務所は、九月一日、同地区内に設置した杭は十一本で、うちこの一年以内に設置したものは三本であると回答した。
 建設省公共測量作業規程によれば、路線測量では、線形決定、IP設置測量、中心線測量、仮BM設置測量、縦断測量、横断測量、用地幅杭設置測量などを行うことになっている。これらの測量は、IP(交点)杭、役杭、中心杭、仮BM杭、末端見通杭、用地幅杭などを設置して行う。
 同地区に十一本設置したという杭は、どの種類の杭がそれぞれ何本か。そのうち、この一年以内に設置したものはどれとどれか。また十一本の杭のそれぞれの設置点の位置を明らかにされたい。
4 同作業規程によれば、中心線測量では「主要点及び中心点には、標杭(役杭又は中心杭)を設けるものとする」(第二百七十一条)とされ、さらに運用基準で、実施設計の場合は中心点の標準間隔は二十メートルと定められている。また用地幅杭設置測量では、「主要点及び中心点から中心線の接線に対して垂直方向の所定の位置に標杭(用地幅杭)を設置する」(第二百八十一条)と定められている。
 秋川市牛沼地区の圏央道当該区間延長は約三百メートルであるから、往復で中心杭は三十本、用地幅杭は少なくとも六十本必要となる。
 わずか十一本の杭しか設置しない路線測量は、測量法及び建設省公共測量作業規程違反ではないか。なぜ十一本の杭を設置しただけで建設省公共測量作業規程に基づく当該区間の路線測量が完了したことになるのか。
5 建設省相武国道工事事務所は、八月三十日、この点を質した私の事情聴取に対し、測量法と建設省公共測量作業規程に基づく路線測量を実施したかどうかについては明言せず、「道路設計に必要な資料収集のための測量は終わった」と繰り返すばかりであった。
 前記作業規程では、「路線測量とは、線状構築物建設のための調査、計画、実施設計等に用いられる測量をいう。」(第二百六十二条)と明記されている。右作業規程で定められた路線測量以外に道路設計に必要な資料を収集するための測量というものがあるのか。もし同地区で完了したと発表された測量が正規の路線測量ではないとすれば、改めて測量法と建設省公共測量作業規程に基づく路線測量を実施するのか。また、「路線測量が終わった」という発表は事実に反することになり、取り消すべきではないか。

二、八王子市裏高尾地区の路線測量について

1 建設省は、八月二十二日から八王子市裏高尾地区の圏央道の路線測量を実施した。しかし同地区では圏央道事業について、いまだまともな説明会が開催されていない。従来建設省は、路線測量の実施に先立って説明会を開催することを約束し、相武国道工事事務所が発行した圏央道リーフレットにも説明を行うことが明示されている。説明会抜きで路線測量を実施することは住民に対する重大な背信行為であると考えるが、同地区において、どこでいつ説明会を行ったのか。
2 都市計画法第六十六条は、都市計画事業の施行にあたって、施行者は事業の概要について事業地及びその附近地の住民に説明し、これらの者から意見を聴取する等の措置を講ずるよう定めている。さらに同法施行規則第五十四条では、住民に対する説明は原則として説明会で行う旨定めている。
 建設省相武国道工事事務所は、八月三十日、私の事情聴取に対し、圏央道は道路法に基づく事業であり、都市計画事業として施行しているものではないから、住民への説明を行う義務はないと表明した。

(1) 都市計画決定に基づいて行われる圏央道建設を、都市計画事業とせず道路法に基づく事業として実施する理由は何か。道路整備事業を都市計画事業として実施するか道路法の事業として実施するかを事業者が選択するにあたって、準拠すべき基準があれば示されたい。
(2) 道路整備という同じ性格の事業について、都市計画事業として実施する場合には法律によって住民への説明が必要とされながら、道路法に基づく事業であれば行わなくてもよいというのは不合理である。道路法に基づいて行う道路整備事業を実施する施行者にも、都市計画事業に準じた住民への説明を行うべき責任が当然あるのではないか。それとも、道路法には都市計画法第六十六条に相当する規定がないから、同法に基づく事業として行う道路整備事業においては住民への説明を行う必要は一切ないというのが政府の見解か。道路法に基づく事業であることを理由に住民に対する説明を行わないという事例が他にあれば、具体的に示されたい。

3 都市計画法施行規則第五十四条ただし書は、施行者の責に帰することができない理由によって説明会を開催できないときは、住民への説明を説明会以外の方法でやってもよい旨を定めている。
 裏高尾地区ではこれまで四回の説明会が流会になっている。その原因は、周辺住民には知らせず、登記してある借地権者にすら連絡しないまま、土地所有者だけを集めて説明会を行おうとしたり、事業に賛成の地権者だけを会場にいれて中から鍵をかけて説明を始めるなど、法の趣旨に反する施行者の異常な運営にある。したがって、説明会ができなかった責任は施行者側にあり、都市計画法施行規則に示されている説明会以外の方法でもよい場合に該当しない。
 よって、同地区において今後あらたな作業段階に入る以前に、未実施となっている住民説明会を行うべきではないか。

三、高尾山の水平ボーリング調査について

 八王子市南浅川地区では、九月一日から、圏央道下り線の中心線にそって、高尾山に対する水平ボーリング調査が実施されている。

1 当該調査で採取されたコアの分析を行う研究機関名を明らかにされたい。
2 当該調査におけるこれまでの注水量と出水量はそれぞれいくらか。また、調査開始以来これまでの変動状況も明らかにされたい。
3 地質の解析結果がまとまれば公表すべきであると考えるが、いかがか。
4 今後、他に高尾山のボーリング調査の計画があれば明らかにされたい。

  右質問する。