質問主意書

第131回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六号

自衛のための必要最小限度の実力で対処し得る脅威の規模に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成六年十月二十六日

翫 正敏   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   自衛のための必要最小限度の実力で対処も得る脅威の規模に関する質問主意書

 我が国は憲法解釈上、また実際上、いかなる規模の脅威に対処できるのか、政府の見解を明らかにするために以下質問する。

一 政府は憲法上保有できる自衛のための必要最小限度の実力の限度は相対的である(つまりその限度は必要に応じて上下する)との見解をとっているが、一方で政府が現在防衛力整備において採用している基盤的防衛力構想においては防衛力の限度は固定的(つまりその限度は必要に応じて上下しない)との考え方をとっており、両者は考え方が相反すると思われるが、政府の見解はどうか。

二 憲法上保有できる自衛のための必要最小限度の実力の限度は相対的であるとの見解が基盤的防衛力構想の考え方と相反すると解するならば、基盤的防衛力構想を採用する以前の第四次防衛力整備計画(以下「四次防」という。)は、憲法上保有できる自衛のための必要最小限度の実力は相対的との政府の見解を防衛力整備について具体化したものと考えられるが、政府の見解はどうか。

三 二の問いに対して政府の見解が肯定するものであれば、四次防は対処し得る脅威を「通常兵器による局地戦以下の侵略事態」と規定していたことに鑑み、憲法上保有できる自衛のための必要最小限度の実力で対処し得る脅威はこの「通常兵器による局地戦以下の侵略事態」であると考えられるが、政府の見解はどうか。

四 防衛計画の大綱(以下「大綱」という。)は、対処し得る脅威の限度を「限定的かつ小規模な侵略」と規定しているが、これは「『限定的な侵略』のなかでも小規模なものを指す」(七七年版『防衛白書』五四、五五頁)ものである。
 四次防までが「単に小規模なものだけでなく、小規模を超えるものをも含めて『限定的な侵略』事態全般に対処しうる」(同白書五五頁)ものであったことを鑑みると、大綱で認める防衛力は、憲法上保有できる自衛のための必要最小限度の実力を下回るものと考えられるが、政府の見解はどうか。

五 大綱はその別表で陸上自衛隊の定員を一八万人と定めているが、実際は一五万人強しかいない。
 一方で大綱が想定している「限定的かつ小規模な侵略」とは「事前に侵略の『意図』が察知されないよう、侵略のために大掛りな準備を行うことなしに奇襲的に行われ、かつ、短期間のうちに既成事実を作ってしまうことなどを狙いとしたもの」(七七年版『防衛白書』五五頁)であるとしている。
 「限定的かつ小規模な侵略」がそうした奇襲的な侵攻であるなら、陸上自衛隊が一八万人に人員を充足する間もなく侵攻が開始される可能性があると思われるが、一五万人の体制でこの侵略に対処し、「既成事実を作ってしまうこと」を阻止し得るのか。

  右質問する。