質問第二号
国連海洋法条約に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成六年十月七日
立木 洋
林 紀子
参議院議長 原 文兵衛 殿
国連海洋法条約に関する質問主意書
一九八二年に国連で採択された国連海洋法条約は、今年十一月に発効することとなった。この条約は海底の資源開発の他、領海、二百カイリ経済水域の設定、国際海峡の通行権保障など、包括的に海洋に関する問題を規定したものであり、海洋国であるわが国にとって重要な条約である。この条約の発効に当たり、わが国に関する重要な点についてただしたい。
一、国連海洋法条約の発効について
(1) この条約の発効を政府はどのように受けとめるか。
(2) この条約の批准についての作業をどのような予定ですすめていくのか。
(3) このことと関連して国内法の整備が必要と思われるが、政府として条約に対応した国内法の整備をどのような分野ですすめようとしているのか。
(4) 政府として条約に対応した関係国との協議をどのような枠組みで行うのか。
二、二百カイリの排他的経済水域の特に生物資源に関して
(1) 条約はこの水域での生物資源の沿岸国による最適な利用、保存、管理措置についての主権と義務を定めているが、この部分がとりわけ日本の漁業にとって非常に重要と考えるが、政府はどのように実効性を確保しようとしているのか。
(2) 条約の発効が迫った現在、早急に解決すべき諸問題がある。条約では経済水域を「二百カイリを超えない範囲」と設定している。これに基づいてわが国は二百カイリを超えない範囲で排他的経済水域を設定できる。一九七七年に制定された「漁業水域に関する暫定措置法」(昭和五十二年法律第三十一号)では、東経一三五度以西の韓国・中国との間の海域には適用を除外している。今日中国・韓国漁船が日本近海において操業を行い、年々、日本側の規則を無視した無謀な操業・協定違反、漁具被害などが後を絶たず、資源管理上も重大な事態となり、わが国の漁業に深刻な影響を与えている。今日の韓国・中国の漁船の操業が日本の漁業に与えている事態は、海洋法条約に言う二百カイリ水域における生物資源の効果的な保存・最適利用の立場から大きく逸脱していると考えるが、政府はどのように考えるか。
(3) これまで韓国・中国に二百カイリ経済水域の設定について長期間適用除外してきたのは何故か。今年の国連海洋法条約の発効に当たり、すみやかに二百カイリ水域の設定を両国に適用すべきではないか。
(4) 国連公海漁業会議は来春から公海での漁業規制に関する国際条約の制定について検討されることになった。二百カイリ不設定の公海での漁業規制が現実化すれば、日本、韓国、中国に面した水域での漁業規制にもつながる重大問題となる。この点をどのように受けとめているのか、またそれへの対応について問う。
三、現在の対韓国・中国との漁業協議について
(1) 政府は特に韓国との間の漁業関係の「新たな枠組み」についての努力をこれまでしばしば述べている。しかし日韓実務者協議・日韓漁業共同委員会のそもそもの性格は、これまでの漁業協定、自主規制措置の実施状況の点検等を基本としており、新しい仕組みを交渉するという場ではないのではないか。「新たな枠組み」を言うのなら正式な漁業交渉を持つべきではないか。この点でどう考えるか。二百カイリ設定についての交渉の予定とその方針について問う。
(2) 世界の沿岸国中、経済水域または漁業水域のかたちで二百カイリを実施している国は何カ国か。また関係国が認めないからと言う理由で自らの国について二百カイリを実施していない国はあるのか。
(3) 政府が海洋法条約にいう生物資源の管理の上からも、また、全国の漁業者の二百カイリ設定を求める要求を実現させるためにも、まず二百カイリ設定の明確に宣言してから関係国との交渉に望むべきではないか。
(4) 竹島に対する日本の領有権は歴史的にも国際法上も明確である。しかし政府は「安全操業確保に努力」を約束しながら、なんら具体的措置をとらず、韓国政府は不法に竹島占拠を続け、その周辺を「領海」として一方的に十二カイリの周辺水域から日本漁船を追い出している。竹島周辺水域の漁場確保と安全な操業を確保するため必要な具体的措置を早急に講ずるべきではないか。
(5) 二百カイリ線引きの上からも竹島、尖閣列島の領土問題を打開していくことは不可欠の課題である。韓国の竹島不法占拠、中国の領海法における尖閣列島領有規定に対してどう対処するのか、交渉することも含めどう前進させていくつもりか問う。
右質問する。
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