第130回国会(臨時会)
答弁書第五号
内閣参質一三〇第五号 平成六年八月二十三日 内閣総理大臣 村山 富市
参議院議員荒木清寛君提出難病対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員荒木清寛君提出難病対策に関する質問に対する答弁書 一について 難病対策専門委員会は、総合的な難病対策を検討するため、平成五年七月、公衆衛生審議会成人病難病対策部会の下に設置され、平成六年七月十八日、現行の難病対策の評価と今後の基本的方向等を内容とする中間報告を取りまとめた。当該中間報告については、同月二十日、公衆衛生審議会成人病難病対策部会に報告され、了承されたところである。同委員会においては、本年度末を目途に最終報告を取りまとめることとしている。 二の1について 特定疾患治療研究事業の対象疾患については、診断基準が確立しているものの中から、原因究明の困難性、難治度、重症度及び患者数等を総合的に勘案し、学識経験者からなる特定疾患対策懇談会の意見を聞いて逐次追加しているところである。 二の2について 特定疾患治療研究事業は、原因が不明であり、難治度及び重症度が高く、さらに、患者数が少ない疾患について、公費負担により受療を促進することによって、その原因を究明し、もって治療方法の確立等に資することを目的としており、既に原因が究明されている疾患については、当該事業の対象となるものではない。
二の3について 特定疾患治療研究事業は、患者数が少ないため、公費負担により受療を促進しないと一定数の症例が確保できない疾患を対象とするものであり、「患者数が少ない」ことは必要な要件であると考えている。
三の1について 小児慢性特定疾患治療研究事業の対象年齢を十八歳未満から二十歳未満に引き上げることについては、個々の疾患ごとに事業の趣旨、当該疾患をもつ児童の実情、当該疾患に対する医療の実態等を考慮して総合的に判断しているところである。御指摘の「下垂体性小人症を除く内分泌疾患」、「糖尿病」、「軟骨異栄養症を除く先天性代謝異常」及び「神経・筋疾患」については、今後このような観点から対象年齢を引き上げることの必要性について検討することとしている。 三の2について 学齢児童又は学齢生徒で慢性疾患の状態にある者については、その状態に応じ、都道府県及び市町村の教育委員会等の判断により、必要な期間療養に専念するよう指導するか、養護学校若しくは小学校若しくは中学校の特殊学級で教育するか又は小学校若しくは中学校の通常の学級で慢性疾患の状態に留意して指導しているところであり、適切な対応が行われていると考える。また、都道府県を越えて入院する学齢児童又は学齢生徒は、区域外就学の手続を経ることによって病院の所在する都道府県の設置する養護学校等に就学が可能となっている。
三の3について 慢性疾患をもつ児童に対する地域ケア対策については、「地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律」(平成六年法律第八十四号)において児童福祉法の一部が改正され、慢性疾患をもつ児童に対する療育の指導が保健所の業務として位置付けられており、政府としては法律改正の趣旨を踏まえ、その充実を図っているところである。
四について 小児慢性特定疾患治療研究事業は、児童の健全育成を阻害する慢性特定疾患に係る医療の確立及び普及を事業の趣旨としており、治療が長期間にわたり、医療費の負担も高額となる小児の慢性疾患を対象としている。これに対して、特定疾患治療研究事業は、特定疾患の原因の究明、治療方法の確立を事業の趣旨としており、原因が不明であり、難治度及び重症度が高く、さらに、患者数が少ない疾患を対象としている。
五について 難病患者については、公共職業安定機関等において、その能力に適合する職業に就くことができるよう、個々の疾病に起因する障害の特性に配慮した職業指導等を行うとともに、事業主に対して雇用管理に関する指導を行う等の措置を実施しているところである。今後とも、難病患者の就職阻害要因、事業所での配慮事項等について、検討を重ねつつ、難病患者の雇用の促進に努めてまいりたい。
六について 御提案の難病対策の法制化や地域医療・保健体制の強化を始めとする今後の難病対策については、公衆衛生審議会成人病難病対策部会に設置された難病対策専門委員会の中間報告において、現行の難病対策要綱の取扱い、各種施策の対象者の範囲、医療費の適正な負担の在り方等について、難病対策の法制化の是非を含めて、今後検討を進めていく必要があるとされているところである。今後、同委員会における審議の結果を踏まえて、対応してまいりたい。 |