質問主意書

第129回国会(常会)

答弁書


第百二十九回国会答弁書第一〇号

内閣参質一二九第一〇号

  平成六年八月二日

内閣総理大臣 村山 富市   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員翫正敏君提出脳死及び臓器移植に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員翫正敏君提出脳死及び臓器移植に関する質問に対する答弁書

一について

 脳死及び臓器移植の問題については、平成二年二月、臓器移植の分野における生命倫理に配慮した適正な医療の確立に資するため、内閣総理大臣の諮問機関として、臨時脳死及び臓器移植調査会(以下「脳死臨調」という。)が設置された。脳死臨調における調査審議の結果、平成四年一月、「脳死及び臓器移植に関する重要事項について(答申)」が取りまとめられ、内閣総理大臣に提出されたところである。
 同答申においては、脳死に関しては、脳死をもって「人の死」とすることについてはおおむね社会的に受容され合意されているといってよいものと思われるとされているところである。また、臓器移植に関しては、国民の懸念にも十分な配慮をした上で、善意かつ任意の臓器提供の意思に基づき、移植を必要とする人々が一人でも多く救済される方途を講じていくことが今後のあるべき基本的な方向であると思われるとされ、確実な脳死判定、臓器提供の承諾、移植機会の公平性の確保等の臓器移植を進めるに当たっての基本的原則等が明らかにされているところである。なお、同答申には、脳死臨調としての意見とはなる、脳死を「人の死」とすることに賛同しない立場からの少数意見が付記されている。
 政府としては、平成四年一月、同答申を国会に報告するとともに、これを尊重し、脳死及び臓器移植問題に取り組む旨の対処方針を閣議決定している。また、これまでに移植機会の公平性の確保等のための臓器移植ネットワークのあり方等関連する諸問題について検討を行ってきているところである。
 脳死体からの臓器移植手術の実施については、脳死臨調の答申において、「臓器移植は、法律がなければ実施できない性質のものではないが、腎臓に加えて心臓、肝臓等の移植を行っていくためには、包括的な臓器移植法(仮称)を制定することにより、臓器移植関係の法制の整備を図ることが望ましい。」とされており、また、議員提出に係る「臓器の移植に関する法律案」が第百二十九回国会に提出され、第百三十回国会においても閉会中審査とされたところである。
 政府としては、このような状況を踏まえ、国会において同法律案についての審議が進められると考えられることから、現段階においては、国民の広い理解を得て、望ましい形で移植医療が実施されていくためにも、医療現場においては、良識ある対応をしていただくことが望ましいのではないかと考えている。