質問主意書

第129回国会(常会)

質問主意書


質問第七号

JR東日本による言論弾圧に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成六年六月十七日

翫 正敏   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   JR東日本による言論弾圧に関する質問主意書

 JR東日本は、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律により設立され、鉄道事業を運輸大臣から認可されている公益性の高い特殊法人であり、したがって、その役職員は公務員に準ずる憲法遵守義務があるものと考えられる。
 東京スポーツ新聞社は、自社の発行する「東京スポーツ」を、JR東日本駅舎内の店舗(キヨスク)において販売している。
 菊池久は、政治評論家として「東京スポーツ」に「永田町の熱闘」と題する評論を連載している。
 菊池久は、平成六年五月二十五日付(五月二十四日発行。千三百七回)で六月二十九日に開催されるJR東日本第七回定時株主総会にまつわる情報について評論し、同二十六日付(二十五日発行。千三百八回)で松崎明JR総連東日本労組委員長の「勇退説」を、さらに同二十七日付(二十六日発行。千三百九回)で「ジョン万次郎の会」にまつわる疑惑について評論した。
 また、六月三日付紙面で「お詫び」の一文を掲載した。
 私が、東京スポーツ新聞社の役員及び菊池久から事情聴取したところ、五月二十五日以後数回にわたってJR東日本の複数の役職員などが、菊池久に対し、「キヨスク売店での東京スポーツ紙販売を止める」旨の圧力をかけ、言論弾圧を行ったことが明らかとなった。
 また、JR東日本は、文藝春秋社発行の「週刊文春」六月二十三日号に掲載された記事を理由に、取次業者の財団法人鉄道弘済会に指示して、一方的に東日本キヨスク管内での同誌の販売契約を解除し、さらにジェイアール東日本企画を通じて電車内中吊り広告の引受けも拒否した。
 新聞報道等によれば、六月十五日に、文藝春秋社は、設楽敦生編集長名で「著しく公共性を持つJR東日本がこのような措置に出たことは『報道の自由』及び『国民の知る権利』の妨害につながる不当な行為であり『公正な評論』を阻止するものできわめて遺憾である」とのコメントを発表し、法的措置も検討するとしている。
 法律によって設立された公益性の高い特殊法人の役職員が、職権によってこうした言論弾圧を行ったことは極めて問題である。
よって、政府の見解をただすため、以下質問する。

一、掲載記事(言論)の内容を理由として、鉄道事業を運輸大臣から認可されているJR東日本など鉄道事業者が駅舎内店舗での掲載誌の販売を差し止めることが許されるのか。

二、私は、こうした販売差し止めは憲法二十一条(言論・表現・出版の自由)違反であり、同時に刑法二百二十二条(脅迫)の罪、同二百二十三条(強要)の罪に相当すると判断するが政府の見解はどうか。

三、政府は、JR東日本に関する右事実を承知しているか。あるいは現時点で承知していない場合は調査する意志があるのか。

四、右のようなJR東日本の行為が確認されれば、政府は同社に対し、何らかの指導を行うつもりがあるのか。

  右質問する。