質問主意書

第129回国会(常会)

質問主意書


質問第一号

太陽熱利用の促進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成六年二月二十三日

西岡 瑠璃子   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   太陽熱利用の促進に関する質問主意書

 地球環境問題が提起されて以来、自然エネルギーの導入の努力が国、地方公共団体等で始められているが、民間部門を含めて取組状況は必ずしも芳しくない。その理由の一つには経済性の問題が挙げられる。太陽光利用型の自然エネルギーは、光発電と熱利用の場合、いずれの設備にも多額の費用を要し、化石燃料の価格が低位安定している状況下では、利便性、快適性等を考慮すると、それら設備の導入ははなはだ困難といわざるを得ない。
 しかし、一方で化石燃料の枯渇が叫ばれており、安定した自然エネルギーの調達は国民生活の上で不可欠であり、かつ、地球環境保全のためにも必要である。先般、通商産業省においては、太陽エネルギーのうち光発電の普及拡大を図るため、設備費の二分の一を補助する事業を打ち出しているが、残る太陽熱利用についても公費による助成の拡大を望むものであり、以下質問する。

一 一九九〇年にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は地球温暖化防止を目的とした中間報告書を公表した。我が国でもエネルギー需要の増大と資源制約、地球環境問題に対する関心が高まる中、通商産業大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会は、長期エネルギー需給見通しの改訂を行った。これによれば、二〇一〇年度を目標として石油依存度を五十%以下に引き下げる一方、太陽熱等の新エネルギーの活用を強く打ち出し、新エネルギーの構成比率を一九八八年度の一・三%から五・三%に引き上げるべきと強調している。これを踏まえた通商産業省の今後の太陽熱利用の具体的目標を示されたい。

二 石油、原子力、ガス、石炭等の主要エネルギーを利用する上で必須とされる調達、環境、廃棄あるいは安全対策等の間接コストは年々増加する一方である。国民経済の上にみる総コストの負担は重く、これらを考えれば決して主要エネルギーは安価なエネルギーとはならないのである。一方、太陽熱エネルギーの利用については、主要エネルギー程には間接コストは要しない。それ故に総合的な観点から、主要エネルギーに対する太陽熱エネルギーの価格競争力に遜色はないと見られているが、通商産業省は太陽熱エネルギーのコストについて、間接コストも含めてどのように把握されているか伺いたい。

三 太陽から放出されるエネルギーは莫大な量を有するとともに、非枯渇性を有し地域的遍在性も少ないため、多くの人々が利用機会の恩恵に浴し得る。このため太陽熱利用は設置において既に五百万台の実績が示すように、各種自然エネルギーの中でも最も実用レベルの高いものとして期待が寄せられている。しかし、昨今の原油価格を見ると、各種化石燃料の価格は第一次の石油危機の際の半分程度となっていることから、太陽熱温水器、アクティブソーラーシステムあるいはパッシブソーラーハウスなど、いずれの市場も縮小を余儀なくされている。通商産業省では太陽熱利用についても普及拡大の目標を定め、ソーラーシステムの設置に対する補助金制度の創設を行うべきではないか。

四 ソーラーシステムは初期設備投資額が大きく、また、毎年の設備維持費も相当額になるため、使用者に大きな負担を強いている現状にある。これら事態の改善のため、まず、設備費等の融資制度においては、事業者及び個人に対する融資利率の低減、償還期間の延長等優遇措置の拡大、他方、税制面においては、事業者に対する当該法定償却率の引上げ、また、個人に対するソーラーシステム設備取得控除等の優遇措置の検討の余地はないか。

五 我が国では一九八〇年度より一部公共施設(庁舎、社会福祉施設、保険医療施設、教育施設等)へのソーラーシステム普及のための設置補助が行われているが、それらは件数にして約二千件、金額にして約六十億円に留まっている。その理由としては、施策の対象が主にソーラーシステム普及啓蒙活動に置かれていることにある。
 政府において、今後充実する方針が決定されている広範な生活関連施設について、ソーラーシステムを補助の対象として含める余地はないか。
 ソーラーシステム導入の割高感が、普及の低迷を余儀なくさせていることから、公的部門における需要創出に伴う量産化により、製品価格の引下げ効果を契機とする民需の誘発の必要性を考慮する必要がありはしないか。

  右質問する。