質問主意書

第128回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第六号

内閣参質一二八第六号

  平成六年一月十八日

内閣総理大臣 細川 護熙   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員会田長栄君提出「岡部山」事件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員会田長栄君提出「岡部山」事件に関する質問に対する答弁書

一について

 御質問の事件は、岡部岩雄(以下「原告」という。)が、昭和三十七年八月十四日、国に対し、原告が当時所有していた岩手県岩手郡雫石町内の土地(以下「原告所有の土地」という。)の周辺にある国有林野が原告の所有であることの確認を求めて訴訟を提起したものである。
 当該訴訟の主な争点は、原告所有の土地の周辺の国有林野について明治四十年に国が行った境界査定処分の有効性及び原告主張の土地所有権の取得時効の成否である。
 国は、当該訴訟において、境界査定処分は有効であり、また、右国有林野については国が適正に管理してきたところであり、原告の取得時効は成立していないと主張してきたところである。
 当該訴訟については、昭和四十四年六月十九日、盛岡地方裁判所が国の主張を全面的に認めて、原告の訴えを一部却下し、その余の請求を棄却し、原告が控訴したが、昭和五十年九月二十九日、仙台高等裁判所は、控訴を棄却し、同判決に対し上告状が提出されたが、法定期間内に上告理由書の提出がなかったため、昭和五十一年二月二十六日、仙台高等裁判所において、右上告却下の決定がされ、右裁判は確定している。

二について

 原告所有の土地についての抵当権の設定の有無及び原告が実測図面であると主張し、盛岡銀行が保管していたとする図面の存否については、林野庁としては訴訟が提起されるまで承知していなかったものと思われる。

三について

 昭和三十六年三月二十八日に定められた国有林野管理規程(昭和三十六年農林省訓令第二十五号。以下「昭和三十六年規程」という。)は、旧国有林野管理規程(昭和二十六年農林省訓令第百五号)の国有林野の貸付料の算定方法に関する規定を改める必要があったこと等から、所要の規定の整備を行ったものである。
 なお、昭和三十六年規程の制定当時の全文は、別紙のとおりである。

四について

 原告所有の土地とその周辺の国有林野との境界査定は、旧国有林野法(明治三十二年法律第八十五号)第四条から第七条までの規定及び旧国有林野法施行規則(明治三十二年農商務省令第二十五号)第三条から第六条までの規定に基づいて実施された。
 これらの規定によれば、境界査定官吏は、隣接地の所有者に対し境界査定をする旨通告した上で境界査定を行うこととされ、また隣接地の所有者が立ち会わなくても境界査定をすることができるが、隣接地の所有者は大林区署長が境界査定後に行う通告に不服がある場合には、行政裁判所に出訴することができるとされていた。
 なお、国有林野法(昭和二十六年法律第二百四十六号)が制定された昭和二十六年以降、境界の確定は、国と隣接地の所有者との協議により行われている。

五の1について

 第一審の盛岡地方裁判所において、国が提出した乙第七号証の二(境界査定立会通告書)及び乙第八号証の二(同領収書)については、当時の複写機の技術的制約のため原本から直接複写できなかったことから、原本を忠実に手写し、次いでこれを複写して写しを作成したものである。
 これらの書証の筆跡と同一人が同様に手写した他の書証の筆跡とが同一であったことから、原告はこれらの書証が偽造されたものであると誤解したのではないかと思われる。

五の2について

 第二審の仙台高等裁判所において、原告が前記乙第七号証の二及び乙第八号証の二の偽造を主張したことから、国が原告の誤解を解くため、乙第七号証の二及び乙第八号証の二に係る原本を再度提示した上、電子複写機で原本から直接複写しこれらを再提出したものであり、同裁判所も、右偽造の主張を排斥し、右各原本が真正に作成されたことを判決で認めているところである。
 原告は、この写しの再提出を証拠のすり替えと誤解したのではないかと思われる。

六について

 本件については、確定判決により終局しており、解決済みであるが、訴訟に係る重要な原本及び境界査定に係る原本については、永久に保存することとしている。
(別紙は印刷を省略)