質問主意書

第128回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五号

内閣参質一二八第五号

  平成六年一月二十八日

内閣総理大臣 細川 護熙   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員会田長栄君提出東京電力福島第一原発2号機の緊急炉心冷却装置作動事故に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員会田長栄君提出東京電力福島第一原発2号機の緊急炉心冷却装置作動事故に関する質問に対する答弁書

一の(一)から(五)までについて

 法令上、原子力発電所の事故及び故障について一般的に定義したものはないが、原子炉設置者から内閣総理大臣又は通商産業大臣に対し、報告させることができる原子力発電所における事故及び故障として、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令(昭和三十二年政令第三百二十四号)第二十二条第二項及び第四項に、原子炉施設に関し人の障害が発生した事故及び原子炉施設の故障(原子炉の運転に及ぼす支障が軽微なものを除く。)が規定されている。
 なお、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和五十三年通商産業省令第七十七号。以下「実用炉規則」という。)第二十四条第二項に、原子炉の運転中において、原子炉施設の故障により、原子炉の運転が停止したとき又は原子炉の運転を停止することが必要となったとき、原子炉の運転停止中において、原子炉の運転に支障を及ぼすおそれのある原子炉施設の故障があったとき、原子炉施設に関し人の障害が発生し、又は発生するおそれがあるとき等は、原子炉設置者が通商産業大臣に報告しなければならない旨が規定されている。
 また、電気関係報告規則(昭和四十年通商産業省令第五十四号)第三条に、電気事業者が通商産業大臣及び所轄通商産業局長に報告しなければならない事故として、放射線事故、主要電気工作物の損壊事故、発電支障事故等が規定されている。
 なお、法令上、原子力発電所における過酷事故、事象及びトラブルについて規定されたものはない。

一の(六)及び(七)について

 原子炉施設等の事故記録については、実用炉規則第七条第一項において、原子炉設置者は、原子炉ごとに、事故の発生及び復旧の日時、事故の状況及び事故に際して採った処置、事故の原因並びに事故後の処置を記録し、保存しておかなければならないと規定されているところであり、事故の状況等を的確に把握するために必要な情報等については、適切に記録し保存すべきであると考える。

二の(一)について

 昭和五十六年五月に東京電力株式会社が通商産業大臣に対し提出した福島第一原子力発電所2号機の原子炉停止に関する報告書は、実用炉規則第二十四条第二項の規定に基づくものである。

二の(二)について

 通商産業省においては、法令に基づく申告又は届出に係る文書の保存期間は、原則として一年間とし、特に必要がある場合には、この保存期間を超えて保存することとしている。

二の(三)及び(六)について

 昭和五十六年五月十二日に発生した東京電力株式会社福島第一原子力発電所2号機の停止に関しては、東京電力株式会社から、実用炉規則第二十四条第二項に基づき通商産業大臣に対して、また、電気関係報告規則第三条に基づき通商産業大臣及び所轄通商産業局長に対して報告が行われているが、その際提出された報告書については、現在、通商産業省において保存していない。そのため、それぞれの法令に基づいて提出された報告書が同一なものであるか否かは確認できない。

二の(四)について

 原子炉施設等の事故記録の保存については、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第六十八条の規定により、必要な限度において立入検査等を行い、確認することができることとされているが、昭和五十六年五月十二日に発生した東京電力株式会社福島第一原子力発電所2号機の停止に関する記録が東京電力株式会社において保存されているか否かについては、確認していない。

二の(五)について

 原子炉等規制法第三十四条の規定に違反して、記録せず、若しくは虚偽の記録をし、又は記録を備えて置かなかった者は、原子炉等規制法第八十条第一号の規定により、二十万円以下の罰金に処される。

三の(一)について

 東京電力株式会社からは、残っている原子炉圧力の記録から判断すると、逃がし安全弁が最初に開いた時刻は、午前零時二十二分頃と推定されると聞いている。

三の(二)について

 東京電力株式会社からは、逃がし安全弁は運転員の操作により開けていたものであると聞いている。

三の(三)及び(四)について

 東京電力株式会社からは、沸騰水型原子炉の場合、原子炉の停止の際には原子炉水位を維持しながら原子炉圧力を下げることが必要となるため、運転員の操作により適切な減圧操作を行ったものであると聞いている。

三の(五)及び(六)について

 東京電力株式会社からは、沸騰水型原子炉の場合、原子炉の停止の際には原子炉水位を維持しながら原子炉圧力を下げることが必要となるが、実際の操作に当たっては、種々の方法が取り得るため、原子炉圧力の減少の経過が異なることがあり得ると聞いている。

三の(七)について

 東京電力株式会社からは、常用系の高圧復水ポンプ一台及び給水ポンプ一台を起動し、原子炉水位が回復していることが確認できたため、その後、非常用炉心冷却系(以下「ECCS」という。)を手動で停止したものであると聞いている。

三の(八)について

 ECCSの手動による停止に関する運転操作については、東京電力株式会社が、保安規定等に基づく運転操作基準において定めているところであるが、東京電力株式会社からは、当該基準上、ECCSを手動で停止する場合は、原子炉水位が十分に余裕をもって確保できることを総合的に判断してから行うこととしており、昭和五十六年の場合のECCSの手動による停止は当該基準に違反したものではないと聞いている。

三の(九)について

 東京電力株式会社からは、平成四年の場合は給水及び復水系に係る作業に関連して原子炉が停止し、ECCSの作動にまで至ったものであり、原子炉が停止した当初から給水及び復水系に注目していたため、迅速に当該系統の復旧操作を実施できたものであると聞いている。

三の(十)について

 東京電力株式会社からは、いずれの場合も、福島第一原子力発電所2号機の原子炉圧力容器内の冷却水の量は約二百トンであると聞いている。

三の(十一)について

 東京電力株式会社からは、福島第一原子力発電所2号機の逃がし安全弁から放出された冷却水の量は、昭和五十六年の場合は約百トン、平成四年の場合は約三十五トンと推定されると聞いている。

四の(一)について

 東京電力株式会社からは、福島第一原子力発電所2号機の給水ノズル内面の最低到達温度については、昭和五十六年及び平成四年のいずれの場合も評価していないが、これらの場合よりも厳しい条件の下で、当該給水ノズルが十分な強度を有するものであると評価しており、問題はないと聞いている。
 なお、炉水温度については、昭和五十六年の場合は最低でも摂氏約百二十度、平成四年の場合は最低でも摂氏約百五十五度と評価していると聞いている。
 また、平成四年の場合の当該給水ノズル外周部に取り付けた温度センサーが示した値は、最低でも摂氏約二百六十度であると聞いている。

四の(二)について

 福島第一原子力発電所2号機の給水ノズルの改造工事に係る工事計画書については、昭和五十七年十一月十日に、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第四十一条に基づき、東京電力株式会社から通商産業大臣に対して行われた工事計画認可申請に際して提出されている。

四の(三)について

 昭和五十七年十一月十日に東京電力株式会社から通商産業大臣に対して行われた福島第一原子力発電所2号機の給水ノズルの改造工事に係る工事計画認可申請に際して提出された書類においては、当該給水ノズルの切削加工後の寸法のみが記載されているため、当該書類において当該給水ノズルの内径をどの程度切削加工することとなっていたかは把握できない。

四の(四)について

 当該給水ノズルについては、内圧、熱負荷及び外荷重を荷重として考慮した強度計算を東京電力株式会社が実施している。
 通商産業省においては、電気事業法施行規則(昭和四十年通商産業省令第五十一号)第三十二条第一項に基づいて東京電力株式会社から提出された当該給水ノズルに関する強度計算書により、強度計算のための条件、計算の方法及び計算の結果が、発電用原子力設備に関する構造等の技術基準(昭和五十五年通商産業省告示第五百一号)に適合していることを確認している。

四の(五)について

 当該給水ノズルの疲労評価においては、個々の給水ノズルを評価しているわけではなく、最も厳しい条件下にある給水ノズルを想定してその疲れ累積係数を求め、評価している。
 なお、右評価によれば、給水ノズルについて、その管台における最大の疲れ累積係数は、〇・〇七〇である。

四の(六)について

 東京電力株式会社からは、当該給水ノズルについて、その改造工事の前に、液体浸透探傷試験を実施したが、その健全性に関して問題はなかったと聞いている。

四の(七)について

 当該給水ノズルの寸法については、東京電力株式会社が測定しており、強度計算により許容される範囲内の寸法が確保されていることを確認していると聞いている。

四の(八)について

 東京電力株式会社からは、内径等を測定することにより、当該給水ノズルの寸法を確認したと聞いている。