質問主意書

第128回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質一二八第三号

  平成五年十一月三十日

内閣総理大臣 細川 護熙   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員紀平悌子君提出国民医療に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員紀平悌子君提出国民医療に関する質問に対する答弁書

一の(1)について

 すべての国民が安心して良質かつ適切な医療を受けることができるよう、必要な医療を確保していかなければならないものであり、人口の高齢化や医療技術の高度化等に伴い、今後とも医療費の増加は避けられないものと考えている。しかし、こうした中で国民の負担が過大なものとならないよう、診療報酬の合理化や診療報酬明細書の審査の充実等医療費の適正化対策を図ることにより、その伸びを社会経済の実勢に見合ったものにしていくことが必要であると考えている。

一の(2)について

 診療報酬改定に当たっては、医療経済実態調査により医業経営の実態を把握し、物価及び賃金の動向など医療を取り巻く諸状況を総合的に勘案するとともに、中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)の審議を踏まえ、人件費を始め必要な経費が確保されるよう努めてきたところである。

一の(3)について

 従来から必要な社会保障関係予算の確保に努めてきたところであるが、二十一世紀の本格的な高齢社会の到来を目前に控え、将来にわたり公正で効率的な社会保障制度が確保できるよう、今後とも、医療関係予算を含め必要な社会保障関係予算の確保に努めてまいりたい。

二の(1)について

 平成四年四月の診療報酬改定については、平成四年八月、同年十一月及び平成五年五月の御質問に対する答弁書で述べたとおり、物価及び賃金の動向等を総合的に勘案するとともに、中医協の審議を踏まえ、行ったものである。また、老人保健施設療養費の額の改定についても、同様である。
 これらの改定を行う上で資料とした医療経済実態調査等については、その結果を取りまとめた上で、公開しているところである。

二の(2)について

 診療報酬の改定及び医療保険制度の改正に当たっては、厚生大臣より関係審議会に諮問を行っているが、当該諮問の内容は公開しているところである。

三の(1)について

 国民健康保険制度については、保険料に事業主負担がないことや低所得者の加入割合が高いこと等から、他の医療保険制度と比較して高率の国庫負担を行っているところであるが、国民健康保険制度も社会保険制度である以上、保険料を主たる財源とすべきであり、療養給付費及び老人保健医療費拠出金の二分の一という現行の国庫負担率を引き上げることは考えていない。

三の(2)について

 基準超過費用共同負担制度は、災害その他の特別な事情や被保険者の年齢構成を勘案してもなお医療費が著しく高額となる市町村に限り、当該医療費の保険給付費部分の一部について、国、都道府県及び市町村が共同して負担をすることにより、三者が一体となって医療費適正化に取り組む体制の強化を促進する制度である。
 同制度は、適切な医療を確保しつつ、医療費の適正化による国民健康保険事業の運営の安定化を図る上で有効な制度であり、同制度を廃止することは考えていない。

四の(1)について

 老人医療の一部負担金は、現在、外来の場合、一月につき千円であるが、これは、必要な受診を抑制しない範囲の額であると考えており、老人と老人以外の者との間の負担の公平等にかんがみ、この額を引き下げることは考えていない。

四の(2)について

 前年度における老人収容比率の平均値が百分の六十以上の病院であっても、医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)第十九条第一項に規定する員数の医師並びに看護婦及び准看護婦を有していると都道府県知事が認める病院等急性疾患の患者に対応する能力を有するものについては、老人病院としない取扱いをしている。

四の(3)について

 老人診療報酬における点滴注射の費用の評価に当たっては、老人の心身の特性を踏まえ、老人にふさわしい医療を確保する観点から、点滴の手技料のみを「点滴注射料」として評価し、点滴の管理に要する費用は「入院時医学管理料」に含め、適切な評価を行っているところである。
 なお、老人以外の診療報酬の場合には、点滴に要する費用を一括して「点滴注射」として評価しており、両者の間では評価の仕方が異なり、その比較は困難である。

四の(4)について

 老人診療報酬においては、老人の心身の特性を踏まえ、老人にふさわしい医療を確保する観点から、検査等が過剰に行われることを抑制する一方、リハビリテーション、訪問看護等については、老人以外の場合と比べて高い評価をしており、老人を差別的に扱うものではない。

五の(1)から(3)までについて

 有床診療所については、将来の医療施設機能の体系の中で、どのように位置付けるか種々議論があり、その診療報酬上の評価についても、将来的にはこれらの議論の方向を見据える必要があるが、当面は、有床診療所が地域医療で果たしている役割、その実態等を考慮しつつ、中医協の議論を踏まえて診療報酬上の適正な評価を検討してまいりたい。

六の(1)について

 平成四年四月の診療報酬改定においては、良質な看護サービスの安定的で効率的な供給を確保するという観点から、看護料全体として約二十パーセントの大幅な引上げを行う等特段の配慮を行ったところであるが、今後とも、中医協の議論を踏まえつつ適切に対処してまいりたい。

六の(2)について

 御指摘の看護婦・准看護婦養成施設のうち、国立の看護婦養成所又は准看護婦養成所については、統合・大型化による養成定員の増員、教育施設の設備及び教育内容の充実等により看護婦及び准看護婦の養成力の確保に努めており、今後とも適切に対処してまいりたい。
 また、国立大学については、医学部に看護学科等の設置を行ってきているところであり、今後とも適切に対処してまいりたい。
 民間の看護婦養成所又は准看護婦養成所に対しては、従来からその運営費等について国庫補助を行っており、単価の引上げ、対象経費の拡大等、その拡充強化を図っているが、今後とも適切に対処してまいりたい。

六の(3)について

 准看護婦については、一定の要件を満たす場合、養成機関において二年以上修業すれば看護婦国家試験の受験資格を得ることができることとなっている。業務経験の長い准看護婦が当該養成機関へ進学する途を一層拡大するため、各養成所に対し、定員増、推薦入学の導入等を実施するよう指導するとともに、通信制の導入についてその方策を検討している。

七の(1)について

 新医薬品の価格については、中医協の答申及び建議を踏まえ、原則として類似の薬効を持つ医薬品の価格等との比較により、価格を算定することとしており、比較対照する医薬品がない場合には原価による計算方式によることとしている。これは、既に流通している医薬品と比較した場合に、同一効能の医薬品については、同一の経済的評価を行うことが合理的であるとの考え方によるものであり、適切であると考えている。

七の(2)について

 医薬品の医療機関への納入に当たっては、卸売業者と医療機関の交渉により、個々に価格が決定されており、適切に行われているものと考えている。

七の(3)について

 一処方につき十種類以上の内服薬を外来患者に投与した場合の薬剤料の算定については、外来患者に対する薬剤使用の適正化を図るため、医学的検討を踏まえ、所定点数の百分の九十に相当する点数により算定することとしたものであり、適切なものと考えている。

八の(1)及び(2)について

 給食に係る保険給付の在り方については、現在医療保険審議会において、保険給付の範囲・内容の見直しを始めとする医療保険制度全般の今後の在り方に関する議論の中で、医療に対する患者のニーズの多様化、高度化に適切に対応していく等の観点から、検討が進められているところである。その結論を踏まえて、将来にわたりすべての国民が安心して良質な医療を受けることができるよう配慮しつつ、適切に対処してまいりたい。

八の(3)について

 給食料を含め、給食に係る診療報酬上の評価については、中医協の審議を踏まえ適切に対処しているところである。

九の(1)について

 歯科に係る初診時基本診療料及び再診時基本診療料については、中医協の議論を踏まえ、これまで適切に対処してきたところである。
 なお、医科と歯科とでは、診療の対象となる傷病の性質が異なるため、それぞれの診療行為全体の中での初診行為等の基礎的医療行為の行われ方が異なること等から、初診時基本診療料及び再診時基本診療料の点数が異なっているものである。

九の(2)について

 歯科診療報酬については、従来から技術料重視の考え方に立ち、診療報酬改定の都度、良質な義歯が作成できるよう適切な評価を行い、技術料の引上げが行われてきているところであり、今後とも中医協の議論を踏まえつつ適切に対処してまいりたい。

九の(3)及び十について

 院内感染に対する予防対策に必要な費用を含め、医療機関の運営に要する費用については、診療報酬上適切に対処しているところである。
 なお、後天性免疫不全症候群(エイズ)の病原体又はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染した者の治療等を行う際に要する特別な院内感染予防に関する費用については、平成五年九月にまとめられた「中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会報告」において診療報酬上の対応について検討する必要があるとされているところであり、今後、中医協の議論を踏まえつつ適切に対処してまいりたい。