質問主意書

第128回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五号

東京電力福島第一原発2号機の緊急炉心冷却装置作動事故に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成五年十二月三日

会田 長栄   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   東京電力福島第一原発2号機の緊急炉心冷却装置作動事故に関する質問主意書

 東京電力福島第一原発2号機は一九九二年九月二十九日、全給水喪失事故を起こし、緊急炉心冷却装置が作動した。ところがこの事故報道の際、同じ福島第一原発2号機で一九八一年五月十二日に同様の全給水喪失事故で緊急炉心冷却装置が作動していたことが明らかになった。これが日本の原発で最初の緊急炉心冷却装置作動事故と思われるが、現在までこの事故の詳細は明らかにされていない。
 とりわけ、事故記録類は、この原子炉の履歴や寿命を判断するため、また、原子炉の安全運転を行うための重要な資料であるが、東京電力株式会社では、生のチャート類を含め、一九八一年事故時の生データは保存していないと回答している。
 このようなことが認められるのであれば、少なくとも、福島第一原発2号機については健全性が維持できているという保証はないと思われるので、原発事故への対応等についてお伺いする。

一 原子力発電所の「事故」の定義について、以下のとおり質問する。

(一) 「原子力発電所の事故」とはどのようなものを指すのか。
(二) そのうち「過酷事故」とはどのようなものを指すのか。
(三) 事故に含まれない「故障」とは何か。
(四) 事故に含まれない「事象」とは何か。
(五) 事故に含まれない「トラブル」とは何か。
(六) 「事故記録」とは生データを指すのか、分析結果を指すのか、その両方を指すのか。
(七) 事故発生時の原子炉圧力、冷却材温度、原子炉水位等のチャート、コンピュータの出力記録は、事故記録に含まれるか。

二 一九八一年五月十二日の福島第一原発2号機全給水喪失・緊急炉心冷却装置作動事故について東京電力株式会社が資源エネルギー庁長官に提出した「福島第一原子力発電所2号機の原子炉停止に関する報告書」に関連し、以下のとおり質問する。

(一) この事故の報告書は、いかなる法令に基づいて提出されたのか。
(二) 通産省の文書保存規則上、この種の報告書は何年保存することになっているのか。
(三) 通産省に保存されている事故報告書類はあるか。あるとすればそれはどのようなものか。
(四) 資源エネルギー庁は、原子炉解体時まで保存を義務づけている事故記録類を事業者が保存しているかどうか、監査等を行って確認しているか。
(五) 事故記録類の保存規則に違反していることが明らかになった場合、事業者に対してはどのような罰則があるのか。
(六) 電気関係報告規則に定められている「電気事業者の事故報告」は一九八一年事故に関して提出されているのか。これは前記「福島第一原子力発電所2号機の原子炉停止に関する報告書」と同じものか。

三 一九八一年五月十二日福島第一原発2号機全給水喪失・緊急炉心冷却装置作動事故経過及び対応などについて、以下のとおり質問する。

(一) 圧力逃がし弁が最初に開いた時刻は何時何分何秒と確認しているか。
(二) その後一五~二〇分間開いたまま閉じていないが、これは運転員の操作によるものかそれとも弁の異常によるものか。
(三) 運転員の操作によるものであるとすると、そのような操作を行った根拠及び意図は何か。
(四) 異常であるとすると、なぜそのような異常が発生したのか。
(五) 一九九二年の福島第一原発2号機で同様の全給水喪失事故が起き、同じように緊急炉心冷却装置が作動したが、この時は圧力逃がし弁は二十一回にわたり断続的に開閉動作が行われ、急減圧は起こっていない。一九八一年と一九九二年でこのように操作ないし経過が違う理由は何か。
(六) どちらかの経過が異常と思われるが、そうでないとすれば、具体的な根拠は何か。
(七) 一九八一年の際に緊急炉心冷却装置を運転員が手動で解除した理由は何か。
(八) この時点で水位はまだレベル四にもなっていなかったが、運転規則に違反しないか。その理由は何か。
(九) 給水ラインを復旧するのに五分かかっているが、一九九二年の際には一分もかからずに回復している。両者にこのような差があるのは何故か。
(十) 事故直前に原子炉圧力容器に入っていた冷却水量は何トンになるのか。また、定格出力運転中の原子炉容器に入っている冷却水量は何トンになるのか。
(十一) 一九八一年事故では圧力逃がし弁から放出された冷却水は何トンになるのか。また一九九二年の際には何トン放出されたのか。

四 福島第一原発2号機の給水ノズル改造工事に関して、以下のとおり質問する。

(一) 福島第一原発2号機の給水ノズルの最低到達温度は一九八一年及び一九九二年事故では摂氏何度と解釈されているか。なお、一九九二年事故では給水ノズル外周部に温度センサーを取り付けているはずだが、その実測データはいくらになっていたのか。
(二) この給水ノズルは過去に二度にわたって改造工事を行っているが、その際に工事計画書は提出されているか。
(三) その計画書では四本の給水ノズルを削るとされているはずだが、それぞれ何ミリにわたって削ることになっているか。
(四) 削った後の健全性評価も同時にされているはずだが、その計算はどのようにされているか。
(五) 計算後の累積疲労損傷係数は〇・〇七〇とされているというが、これは四本の給水ノズル全て同じか。それぞれの給水ノズルについて数値を教示されたい。
(六) 削り取る前に「液体探傷試験」、「放射線透過試験」、「磁粉探傷試験」、「超音波探傷試験」などの各種試験をしているはずだが、その結果はどのようなものか。行ったそれぞれの試験について、その結果を教示されたい。
(七) 計画どおりの深さまで削られたかどうか、資源エネルギー庁は確認しているのか。
(八) 削った深さを確認しているとすればどのような方法で行ったか。

  右質問する。