質問主意書

第128回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四号

核兵器廃絶に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成五年十一月二十二日

立木 洋   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   核兵器廃絶に関する質問主意書

 今日においても、なお人類を滅亡させて余りある核兵器が存在しており、核兵器廃絶は人類にとって最重要の緊急課題である。日本国民の核兵器廃絶への願いは強い。「非核の政府を求める会」が核兵器廃絶のために過日おこなった政府への申し入れも、その具体化を求める国民の願いの反映である。世界で唯一の被爆国である日本の政府はこうした国民の願いを体して、国際政治において核兵器廃絶のための積極的なイニシアチブを発揮すべきである。
 しかるに発足三カ月余をへた細川内閣の態度は、国民の願いに反するものではないかといわざるを得ない。そこで核兵器問題のいくつかの基本点について、以下、具体的に質問する。

一、核兵器廃絶について

1 一九四六年の国連総会は原子兵器の絶対禁止を第一号決議とした。細川首相は、著書『日本新党・責任ある変革』などで「今世紀末を目途とする」核兵器廃絶などの計画を提唱していたが、政府は「今世紀末」を目途とするなど期限を切った核兵器廃絶国際条約を提唱する意思をもっているかどうか、明確にされたい。
2 核兵器不拡散条約(NPT)の「見直し」期限を二年後にひかえ、核兵器保有国はもっぱら「NPTの無期限延長」を主張している。これは核兵器の独占体制を無期限に延長し、核兵器の存在を無期限に容認するものであり、広島、長崎の市長からも「強い危惧の念」が表明されているのも当然である。今年の広島市の「平和宣言」は「無期限の延長は、核兵器を持つ国と持たない国との関係を不安定にするだけでなく、核兵器廃絶の願いに反する」と訴えている。

(1) 政府は、NPTが核兵器を持つ国と持たない国を差別する条約であると認識しているか。
(2) 政府は、NPTそのものが核兵器廃絶につながるものでないと認識しているか。
(3) 政府は、NPTの無期限延長を支持する理由は何か。

二、核兵器保有各国は、軍事技術の向上を背景に核兵器の威力を誇示し他国を威嚇している。アメリカ政府も「われわれは核抑止力の安全性と信頼性を維持しつづけなければならない」(クリントン米大統領)と言明するなど、核抑止力に固執する立場を明確にしている。政府は現在も、核兵器の存在が世界の平和に役立つと認識しているのか。

三、核兵器使用の違法性について

1 現在、国際司法裁判所に核兵器使用の違法性についての判断を求める動きがあるが、政府は、核兵器使用は国際法違反であると認識しているか。
2 広島、長崎への原爆投下は、多数の非戦闘員を殺戮し、あるいは、治癒不可能な放射性障害に苦しめる結果をもたらした。今日に至るまでアメリカ政府は、核兵器使用の威嚇発言をくりかえしているが、その原点には広島、長崎への原爆投下は正当であったという誤った認識がある。政府は、広島、長崎への原爆投下は、国際法に違反する行為であったと認識しているかどうか、明確にされたい。
3 従来、政府は、国連総会で核兵器使用禁止決議に賛成してこなかった。政府は、今後も国連総会での核兵器使用禁止決議に賛成しない態度をとりつづけるのか。その具体的理由は何か。

四、従来、政府は、「自衛のための必要最小限度を超えない」範囲内にとどまるものである限り、核兵器を保有することは憲法の禁ずるところでない、としてきたが、その解釈はいまも変わらないのか。

五、非核三原則の法制化は、国是である非核三原則を厳守し、核兵器の持ち込みを許さないという証しのためにも、またプルトニゥムの輸送問題などに関連し、日本の核武装化について多くの国から出されている危惧の念を一掃するためにも、緊急に必要である。政府は、非核三原則の法制化が必要と考えるか、また不必要と考えるならその理由は何か。

六、被爆者援護法の制定は、被爆者の長期にわたる基本的な要求であり、老齢化する被爆者にとっては深刻な問題である。同時に、核兵器廃絶を追求する日本政府の姿勢の証しとしても求められている。国民の支持を受け、被爆者援護法案は、二度参議院で可決された。政府は、この被爆者援護法に賛成すべきではないか。

七、現在、非核宣言を行う自治体が過半数を超えるなど、非核自治体運動が広がっている。政府は、こうした自治体の動きを尊重し、重視するのかどうか、明確にされたい。

  右質問する。