質問主意書

第127回国会(特別会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一二七第一号

  平成五年八月二十七日

内閣総理大臣 細川 護熙   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員田英夫君提出大韓航空機事件の真相究明に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員田英夫君提出大韓航空機事件の真相究明に関する質問に対する答弁書

一について

 平成五年六月十四日に公表された大韓航空機撃墜事件に関する国際民間航空機関(以下「ICAO」という。)事実調査最終報告書は、中立的立場にあるICAO事実調査団(以下「調査団」という。)により作成されたものである。日本政府としてもこの報告書を最大限尊重するとともに、ICAOによる調査の中立性、一貫性性を損なわないために、調査の内容を独自に解釈して発表するといったことは差し控えるとの立場をとっている。このため、同報告書訳文を国会に提出することは考えていない。

二の1について

 調査団の名称としては、ICAO FACT-FINDING INVESTIGATION TEAM(ICAO事実調査団)が通常使用されていた。
 調査団の構成員、国籍及び略歴は以下のとおり。

団長 Mr.K.FROSTEL(フロステル)、フィンランド
   ICAO事務局航空技術局事故調査課技術専門官
   前回昭和五十八年の調査団員、昭和五十五年から現職
団員 Mr.R.T.SLATTER(スラター)、連合王国
    同局運航・耐空性課技術専門官
    前回昭和五十八年の調査団員、昭和五十八年から現職、パイロット出身
   Mr.M.C.F.HEIJL(ハイル)、オランダ
    同局航空規則・航空交通業務・捜索救難課長
    前回昭和五十八年の調査団員、平成三年から現職、航空管制官出身
   Mr.J.V.AUGUSTIN(オーガスティン)、セント・ルシア
    ICAO事務局法律局法律担当官、平成元年から現職
 なお、前記四名のICAO事務局からの参加者に加え、次の四名が、この作業支援のためにICAO事務局によって短期契約で雇用された。
   Mr.B.GAUSTAD(ゴースタッド)、ノールウェー
    前ICAO事務局航空技術局航空規則・航空交通業務・捜索救難課長
   Mr.F.A.L.OLIVEIRA(オリヴェイラ)、ポルトガル
    前同局気象課長代理
   Mr.CHIPPINDALE(チッペンデール)、ニュー・ジーランド
    コンサルタント
   Mr.CAIGEL(カイゲル)、カナダ
    フライト・レコーダー専門家

二の2について

 調査団は調査報告書以外にはワーキング・ペーパー及び会合の議事録を作成していない。なお、調査団が作成した報告書は、理事会への中間報告書(平成五年三月十一日作成、文書番号C-WP/9742 RESTRICTED)、最終報告書(平成五年五月二十八日作成、文書番号C-WP/9781 RESTRICTED)及び最終報告書追補(ソウルにおけるシミュレーション結果に基づく追加の部分で、平成五年六月八日作成、文書番号C-WP/9781 ADDENDUM RESTRICTED)のみである。

二の3について

 ICAOによる本件事実調査について、我が国政府としては、平成四年十二月、他の事件関係国とともにICAOに対して本件事実調査再開を訴えるとともに、調査団への資料提供及び四万米ドルの資金協力を行っており、ICAOを通じての真相究明を促進すべく努めてきたところである。フライト・レコーダー及びボイス・レコーダーの「原テープ」解析作業及びその後の作業については我が国を含む関係四か国がオブザーバーとして立ち会ったことはあるが、作業自体は、中立性の観点から調査団のみによって行われたものであり、我が国を含め関係四か国は関与していない。

二の4について

 フライト・レコーダーの「原テープ」は、平成五年一月八日ロシアからICAOに引き渡され、調査団に解析の作業が委ねられたものである。
 調査団は、右委託を受けて、中立的立場で「原テープ」を解析しており、フライト・レコーダーに記録されているパラメーターは最終報告書一・一四・三・三・一において、また記録されていないパラメーターは、一・一四・三・三・二において公表されているがそれ以外は明らかでない。

二の5及び6について

 フライト・レコーダーの「原テープ」は、平成五年一月八日ロシアからICAOに引き渡され、調査団は中立的立場でこの「原テープ」を解析したが、フライト・レコーダーの秒単位の関連パラメーターの記録については公表されていない。また、我が国政府はこの記録を保有していない。

三について

 昭和五十八年九月に発生した大韓航空機撃墜事件については、事件発生後、同年九月十三日採択された衆・参両院決議を受けて我が国政府としては一貫してICAOを通じての真相究明を促進すべく努めてきたところである。本件ICAOにおける事件再調査については、平成四年十二月八日及び九日の二日間にわたってモスクワで開催された韓国、ロシア、米国及び我が国の四か国会合における合意に基づいて、ロシア政府等が関連の資料をICAOに引き渡し、これらの資料に基づいてICAOの場で調査分析を行う旨の要請がなされた。これを踏まえ、平成四年十二月十八日のICAO理事会において事件の再調査が決定されたものである。
 この他、我が国政府としてはICAOを通じての真相究明を促進すべく、調査団への資料の提出、四万米ドルの資金協力を行ってきたことは二の3についてにおいて述べたとおりである。このような我が国政府の努力をも背景として、今般ICAOから最終報告書が公表されるに至った次第である。この最終報告書をもって、本件に係るICAOにおける調査は終了したものとする旨、ICAO理事会で決議されており、我が国政府としては、御質問にあるようなフライト・レコーダー及びボイス・レコーダーの「複製テープ」を国会に提出する考えは持っていない。