質問主意書

第126回国会(常会)

質問主意書


質問第八号

平成四年四月の診療報酬改定に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成五年五月十八日

紀平 悌子   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   平成四年四月の診療報酬改定に関する再質問主意書

 国民皆保険制度の下にある我が国において、社会保険診療報酬は医療サービスの対価であると共に医療従事者の生活に直結、また国民の医療を受ける権利の内容を規定している。国民医療費が初めて二〇兆円を突破(平成二年度)したといわれるがOECD諸国の医療費のGDP比の比較ではまだ一八番目、世界第一位の黒字経済大国にふさわしい医療費とはいえない。
 一般診療医療費で四〇%を六五歳以上の層が占めるなど高齢化社会が急速に進行する今、国民の側に立った安心かつ安価な医療の供給を保障するため、なかんずくプライマリーケアから一部の高次医療まで幅広く国民医療のニーズにこたえる第一線の私的医療機関が十分に機能できる診療報酬体系の改善が急務と考えられる。
 右認識に立ち、私は、二回にわたり診療報酬改定に関する質問主意書を提出してきたが、いまだ政府の答弁書に不明の点があり、以下再質問を行うものである。

一 平成四年四月の診療報酬改定に当たっては、医業費用や医業収入を総合的に勘案して、五・〇%にしたとのことであるが、五・〇%という数字を出した根拠を医業費用の動向、医業収入の動向等を含め具体的なデータを数字を挙げて示してもらいたい。

二 我が国で提供されている医療サービスは、国民の平均寿命が世界最高水準に達していることなどにみられるように極めて優秀である。これが先進諸外国に比較して非常に低い医療費でなされてきたことは、医療担当者の努力と犠牲の結果にほかならない。
 しかしながら現状をみると、看護婦の離職率も高くなり、開業医の平均年齢も高齢化し、かつ後継者難に悩み、多くの病院が閉鎖のやむなきに至っている。このままではこれまでの高水準医療を保てないと思われるが、この医療危機をいかにして脱するつもりか。

三 平成四年度の厚生省の看護婦等確保対策費のうち、看護婦等養成所運営費にかかわる予算以外はどのように使われたのか。項目と金額を示してもらいたい。

四 前回質問した項目八の政府答弁書における「腎疾患の専門医」「アレルギー疾患の専門医」「循環器病の専門医」「耳鼻科医」「皮膚科医」「整形外科医」「地域のかかりつけ医師」とは法的にどのような医師を指すのか。

五 「地域のかかりつけ医師」と専門医の医療上の連携と診療報酬上の評価について、例えば慢性腎炎の患者が、症状増悪期に「地域のかかりつけ医師」から「腎疾患の専門医」に紹介され、症状が安定してから地域に戻り、「地域のかかりつけ医師」が「腎疾患の専門医」と連絡をとりながら計画的に療養上の指導を行うことは望ましくないのか。
 また、この場合の療養上の指導は評価されないのか。

六 特定疾患療養指導料の診療報酬上の評価について、初診の日及び初診の日から一月以内に行った特定疾患療養指導料は、初診時基本診療料に含まれるということであるが、特定疾患療養指導料の対象疾患に対する療養上の指導は、月二回で三四〇点の評価を受けており、簡単な診療行為とはいえない。特に初診時の療養指導は時間をかけて行われるものであり、初診時基本診療料のほかに特定疾患療養指導料を評価すべきではないか。

七 今回の改定で課せられた薬剤使用制限について、医療機関においては、例えば「かぜ」の場合でも一カプセルにいろいろな薬を詰め込んだ総合感冒薬より、患者に合わせて単味の成分の薬を組み合わせるから、カプセルや錠剤の種類が増えてくる。
 その結果、前回の答弁書で想定できないとされた多剤投与を受けている外来患者に一〇種類以上の投薬がなされることは珍しくない。薬剤の使用を制限すれば、患者の病状に悪影響が及ぶことも考えられる。一〇種類以上の薬剤投与になった場合、その理由を説明することを条件に規制緩和を認めることはできないか。

八(1) 有床診療所における平成二年九月の調査では、患者の平均在院日数は二八・二日とのことである。これを知りながら当局はなぜ四八時間を超えて入院させていた有床診療所の調査監督をしなかったのか。
 これは、その地域においては、有床診療所でも、恒常的に一定程度以上の期間同一の患者を入院させることが必要なことを認めていたのではないか。
 (2) 平成二年の医療施設静態調査では、有床診療所の看護婦等有資格の看護者は患者一人につき〇・三人で、看護の基準は病院に比較しても引けを取らないことが判明している。以上の事実から、有床診療所でも病院と同等の看護体制が組まれているところでは、その看護を病院と同様に評価してよいのではないか。
 そのような有床診療所では、栄養士の管理の下に給食を提供した場合は基準給食を、基準を満たした寝具を提供した場合には基準寝具設備をそれぞれ承認してよいのではないか。

  右質問する。