第126回国会(常会)
質問第六号
高等学校における交通安全教育に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成五年五月六日 中村 鋭一
高等学校における交通安全教育に関する質問主意書 昭和六十三年は、年間の交通事故死者数が一万人を超え、「第二次交通戦争」などと呼ばれるなど、交通事故防止対策の重要性が社会的にも認識された年であった。
一 平成元年、高等学校学習指導要領が改訂され、「保健」の指導内容として「交通安全」が加わったが、そのことについては総合対策においても「高校生等に対する交通安全教育の充実」の項において言及されているところである。同学習指導要領は、平成六年度に完全実施を予定していると聞いているが、こうした「交通安全」に関する授業を実施する上での教科書、指導教員養成等の準備がどのように進んでいるのか、具体的にお答えいただきたい。 二 右の「交通安全」に関する授業は、具体的な高等学校における授業としては、年間何時限程度の授業時間を予定しているのか、お答えいただきたい。 三 現在、高等学校における交通安全教育は、特別活動のホームルーム活動等としても位置づけられ、「平成三年度文部省交通安全業務計画」においても、「2.交通安全教育の徹底」の項で「高等学校においては、学習指導要領の改訂を踏まえ、教科「保健体育」並びに特別活動のホームルーム活動、学校行事及び生徒会活動を中心に、学校教育活動全体を通じて、自転車の安全な利用、二輪車・自動車の特性、交通事故の防止、応急処置などについて更に理解を深めさせるとともに、交通社会における良き社会人として必要な交通マナーを身につけさせる」と具体的な教育目標を掲げている。さらに、ここでの教育内容については、文部省体育局監修による「高等学校交通安全指導の手引」(財団法人日本交通安全教育普及協会発行)に記載され、年間六時限、高等学校在学中合計十八時限の教育内容がガイドラインとして示されている。
四 平成元年に発せられた総合対策を受けて、文部省では平成二年度事業として「高校生二輪車運転教育に関する調査研究」事業をスタートすることに決定したものと聞いている。同調査研究事業は、新聞報道(「日本教育新聞」平成元年九月二十三日付、「毎日新聞」平成元年八月十九日付等)によると、工業高等学校、農業高等学校等、自動車、トラクターの教育を必要とする高等学校の教育課程として、自動車教習所と連携した二輪車運転教育の可否について調査を行い、教育内容、方法について研究するとしている。そのため、まず該当する高等学校にアンケート調査を行い、さらに平成三年度にも実験学校を指定するとしている。
五 同時に、文部省におかれては、平成二年度交通安全教育調査研究事業として、「高校生に対する交通安全教育について、二輪車に乗車する高校生に対する実技指導を中心とした、その効果的な在り方」について検討することを骨子とした調査研究委員会を設置されたと聞いている。
六 総合対策では、「高校生等に対する交通安全教育の充実」の項で、「ア.関係機関等との連携による指導の充実」として、「指導に当たっては、地域における関係機関、団体等との連携を強化し、特に、二輪車に乗車する生徒に対しては、実技を含む安全指導を継続的かつ積極的に行う」としている。こうした関係機関等の連携の具体例としては、神奈川県における県警察本部による「ヤングライダースクール」の開催、鹿児島県における県警察本部白バイ隊員によるオートバイ通学高校生に対する指導などの例を聞いている。
七 前項に関連して、こうした高校生に対する交通安全指導について、福岡県などでは県の予算措置をとり実施していると聞いている。
八 総合対策では、「高校生等に対する交通安全教育の充実」の項で、「イ.規制の在り方を含む総合的な方策の検討」として、「いわゆる「三ない運動」を行っている学校においても、地域の実情に応じて、規制の在り方を含め事故防止のための総合的な方策を検討するなどにより、交通安全教育、指導の積極的な推進を図る」としている。
九 前項に関連して、神奈川県においては昭和五十五年以来、いわゆる「三ない運動」の一種である「四プラス一ない運動」を実施していたが、平成二年三月に同運動を解消し、高校生の免許取得及びオートバイ乗車を認めたうえで交通安全教育を行う「かながわ新運動」に転換している。こうした転換は、高等学校における交通安全教育推進にとって極めて有意義な措置と考えられるが、その点での文部省の考えをお答えいただきたい。
十 我が国の交通安全対策は、交通安全対策基本法の規定するところの「交通安全基本計画」にのっとって策定されているところであるが、同基本計画によれば、学校における交通安全教育は、我が国の交通安全の趨勢を左右するものとして重要視されているところである。こうした観点からみるならば、幼稚園から高等学校を通じた一貫した交通安全教育の推進は、我が国の学校教育の中で、恒久的に取り組んでいかなければならない重要課題であると考えられるが、文部省当局の認識としては、前記のとおりと考えてよいのかどうかお答えいただきたい。 十一 前項に関連して、もし高等学校等における交通安全教育が、恒久的に取り組んでいくべき課題だとするならば、当然、その教育内容は高校生等が現在あるいは将来的に取得するであろう運転免許とも関連性を持つものでなければならないと考えられるが、その点について、文部省並びに警察庁当局の認識をお答えいただきたい。 十二 前項に関連して、文部省並びに警察庁当局としては、高等学校を含む学校における交通安全教育の教育内容と、指定自動車教習所における教育内容とに相互関連を持たせた交通安全教育を実施していく考えはないのかどうかお答えいただきたい。
十三 前項に関連して、財団法人国際交通安全学会の昭和六十二年度調査報告書「諸外国における交通安全教育の実態に関する調査研究報告書」によると、アメリカ合衆国においては、各高等学校現場において「運転者教育プログラム」が実施され、同プログラムを修了した生徒に対しては、運転免許の年齢制限の緩和及び自動車保険料の優遇が実施されているとのことであるが、こうした諸外国の交通安全教育システムの実情について、政府部内で調査、研究をしたことがあるのかどうかお答えいただきたい。
十四 前項に関連して、同学会の同報告書によれば、アメリカ合衆国においては、高等学校の運転者教育プログラムを修了した生徒に対しては、保険料を低くしている(同報告書百七十六頁)などの措置をとっているとのことである。交通安全教育を受講するに際してのこうした措置は、受講者にとっての受講意欲を高める意味でも極めて有効な方法であると思われるが、こうした方法について、今後、文部省、警察庁、大蔵省当局において検討していく考えがあるかどうかお答えいただきたい。 十五 第十項に関連して、今後、我が国の学校教育の中で交通安全教育を恒久的に実施していくとするならば、その教育に当たる教員養成は不可欠の課題であると考えられるが、大学における教員養成課程において、こうした交通安全教育に関する講座を設置していく考えがあるのかどうかお答えいただきたい。 右質問する。 |