第125回国会(臨時会)
答弁書第七号
内閣参質一二五第七号 平成五年一月十二日 内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 後藤田 正晴
参議院議員荒木清寛君提出聴覚障害者対策等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員荒木清寛君提出聴覚障害者対策等に関する質問に対する答弁書 一の1について 「国連・障害者の十年」以後の障害者対策の在り方については、現在、中央心身障害者対策協議会において御議論いただいているところであり、今後、その検討結果を踏まえて、長期的な展望の下に、総合的な障害者対策の一層の充実を図ることとしたい。 一の2について 障害者問題に対する国民の理解を深めていくことは重要であると考えており、障害者の日、身体障害者福祉週間等を設け各種の啓発広報活動を実施しているところである。今後とも、こうした施策の推進を図ることにより、障害者問題全般に対する国民の理解の促進を図ってまいりたい。
一の3について 平成五年四月一日以降に市町村が行う身体障害者更生援護施設への入所措置、更生医療の給付及び補装具の給付については、国がこれらの実施に要する費用の二分の一を負担するほか、福祉事務所を設置しない町村については、これに加えて都道府県が四分の一を負担することとしている。
一の4について 障害者等の介護を行う職員の確保対策については、平成四年度予算において、ホームヘルパーの手当の国庫補助基準額について大幅な増額を図るなど、その充実に努めており、今後とも所要の措置を講じてまいりたい。
二について 昭和六十二年に行った身体障害者実態調査によれば、聴覚障害者の総数は約三十二万人であり、その約五十八パーセントが六十五歳以上の高齢者である。今後の聴覚障害者の数については、医療技術の進歩に伴う減少要因も考えられるが、他方、高齢化の進展に伴う老人性難聴などの増加要因も考えられることから、全体としては増加するものと予測される。
三の1について 聾学校における聴覚障害児の教育については、口話、キュードスピーチ、手話等のコミュニケーションの手段を選択し活用していくことが大切であるが、その具体的な在り方については、現在、聴覚障害児のコミュニケーション手段に関する調査研究を行っているところであり、その結果を踏まえ、適切な教育の方法について検討することとしている。
三の2について 公共施設における福祉電話及びファクシミリの設置については、当該施設の設置者が、聴覚障害者の利用状況等を考慮して判断すべき事項であると考えている。
四の1について 字幕付き放送は、平成四年十二月現在、日本放送協会及び一般放送事業者十四社が実施しており、例えば関東地区における放送時間は、週十四時間四十三分である。また、手話通訳付き放送は、平成四年八月現在、日本放送協会及び一般放送事業者九十四社が定時番組として実施しており、例えば関東地区における放送時間は、週十三時間二十五分である。 四の2について テレビジョン放送番組への字幕及び手話通訳の挿入は、聴覚障害者がテレビジョン放送番組の内容を理解する上で重要な役割を果たすものと認識している。放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)においても、テレビジョン放送事業者が多重放送を実施するに当たっては、同時に放送されるテレビジョン放送の放送番組の内容に関連し、かつ、その内容を豊かにし、又はその効果を高めるような放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならないとしており、この趣旨を踏まえ、放送事業者に対し、字幕付き放送の充実について要請しているところである。また、字幕付き放送を可能とする文字多重放送の無線設備の取得に必要な資金について、日本開発銀行等による支援制度を昭和六十一年度から導入している。なお、平成四年九月から、字幕付き放送及び手話通訳付き放送を含めた視聴覚障害者のための放送に関する調査研究会を開催しており、その結果を踏まえ、適切な対策について検討を進めることとしている。
四の3について 聴覚障害者情報提供施設は、現在までに、全国で七施設の整備が図られている。今後、都道府県等からの設置要望を踏まえ、聴覚障害者に対する情報提供の充実を図る観点から、聴覚障害者情報提供施設の適切な整備に努めてまいりたい。 五の1について 政見放送への手話通訳の導入については、政見放送は極めて限られた期間内に多くの候補者について公平、公正に制作しなければならないことから、検討を要する困難な問題があり、現在、学識経験者からなる政見放送研究会の場で具体的な検討をしていただいているところである。 五の2について 聴覚障害者に対する便宜供与の実施については、各都道府県選挙管理委員会において、当該地域の実情に応じて判断されるものと考えるが、国政選挙に際し、適切な便宜供与を各都道府県選挙管理委員会が行う場合には、国が交付する選挙執行委託費全体の中で対応されるものと考えている。 六について 御指摘のような言語聴覚療法士については、その資格の在り方について関係者の意見が必ずしも一致していないことから、資格の法制化に向けての具体的な議論が進んでいない状況にある。今後も関係者の合意形成に努め、その資格の法制化に取り組んでまいりたい。 |