質問主意書

第125回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一二五第一号

  平成四年十一月二十七日

内閣総理大臣 宮澤 喜一   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員吉川春子君提出従軍慰安婦に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員吉川春子君提出従軍慰安婦に関する質問に対する答弁書

一の1について

 朝鮮半島出身のいわゆる従軍慰安婦問題については、平成三年十二月から関係資料が保管されている可能性のある省庁において、政府が同問題に関与していたかどうかについて調査を行ってきたところ、その結果がまとまったので、平成四年七月六日に発表した。右調査により、慰安所の設置、慰安婦の募集に当たる者の取締り、慰安施設の築造・増強、慰安所の経営・監督、慰安所・慰安婦の衛生管理、慰安所関係者への身分証明書等の発給等につき政府の関与があったことが認められた。政府としては、これまで、国籍、出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として筆舌に尽くし難い辛苦をなめられたすべての方々に対し、衷心よりおわびと反省の気持ちを繰り返し申し上げているところである。

一の2について

 平成四年七月六日に発表した調査結果については、大韓民国、中華人民共和国、インドネシア及びフィリピンの各政府に対しては外交ルートを通じて、台湾については財団法人交流協会台北事務所から亜東関係協会に対し、説明を行った。

二の1について

 各個人についてその方々がいわゆる従軍慰安婦であったかどうかの調査を行うことは、プライバシーの問題等があり、考えていない。

二の2及び3について

 政府としては、政府の公的資料に基づいて調査を行ってきているところであるが、元従軍慰安婦として名のり出た方々や元軍人等の方々から聞き取り調査を行うことについては、一部の方からのみの聞き取り調査は均衡を欠くおそれがあり、他方、全面的な聞き取り調査を行うことはプライバシーの問題にも触れかねないこと、また、仮に関係者から聞き取り調査を行ったとしても、その証言の真偽の判定が極めて困難であること等の理由から、政府の調査の一環としてこれを行うことは考えていない。なお、これらの方々からの証言、情報等は、いろいろな形で公表されており、調査に当たり十分に参考としてきている。

二の4について

 オランダ人女性のいわゆる従軍慰安婦に関する裁判記録については、法務省において同省保管の裁判関係資料の調査を行っているところである。

三の1及び2について

 いわゆる従軍慰安婦として辛苦をなめられた方々に対する気持ちをいかなる形で表すことができるのか、各方面の意見も聴きながら誠意をもって検討中である。

三の3について

 いわゆる日本人従軍慰安婦については、一の1についてにおいて述べた調査の中でこれに関する資料が発見された場合にはその資料を公表してきているところである。なお、補償については考えていない。

四の1について

 今後新たな情報により、他の省庁において関係資料が保管されている可能性があると判断された場合には、必要に応じ調査の対象となる省庁を拡大し調査を進めてまいりたい。なお、御指摘の法務省においては、既に調査を行っているところである。

四の2について

 平成四年七月六日に発表した調査結果については、既に、資料が発見された各省庁及び内閣官房において希望者が閲覧できるようになっている。

四の3について

 戦争に関する資料については、関係する省庁等においてそれぞれの方法で保存し、資料の取扱いとして許される範囲内で必要に応じ公開を行っているところである。