質問主意書

第125回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一二号

学童保育(児童クラブ)対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成四年十二月十日

西山 登紀子   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   学童保育(児童クラブ)対策に関する質問主意書

 近年、都市化の進行、自動車交通量の増大、遊び場の不足、核家族化等により、児童をとりまく環境は悪化し、放課後の留守家庭児童対策の社会的必要性が高まってきました。
 働く父母の運動、国会における論議等を経て、厚生省は、一九七六年度より、「都市児童健全育成事業」を発足させました。その後、第八十四回国会における「児童福祉法に基づき学童保育の制度化に関する請願」が採択され、第百二回国会でも同趣旨の請願が再度採択されました。女性の社会進出や少子化傾向もあり、児童の健やかな成長を願う環境づくりの国民的要望はますます強まってきています。
 これらの実情を反映して、全国の学童保育所数は、一九七六年に一九三二箇所であったものが、一九九二年には七〇一七箇所、実に三・六倍の増加であり、八七三自治体に存在するに至っています。(全国学童保育連絡協議会調べ)
 厚生省は一九九一年度より、都市児童健全育成事業を再編し、児童手当法の福祉施設事業に学童保育対策として「児童クラブ」事業を創設、実施していますが、いま、この予算補助事業の抜本的拡充が求められています。
 政府も総理大臣を長とする婦人問題企画推進本部の「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」で「共働き家庭の放課後対策を推進する」と明記しています。
 このような学童保育のニーズの増大や政府の方針に関連して、以下質問します。

一 放課後児童対策、特に共働き家庭等の小学校低学年児童を対象とする学童保育(児童クラブ)対策の必要性及び重要性をどう認識されていますか。

二 自治体関係団体は毎年、政府に対して学童保育の制度化を要望しています。
 例えば、全国市長会は来年度予算編成に際して「学童保育事業を制度化し、これに対する財政措置を講ずること。」を要望しています。また東京都、京都市等の十三大都市民生主管局長会議は、「留守家庭児童対策を法制上児童福祉として位置づけ、地方公共団体の取り組みの実態にあった制度となるよう抜本的改善を図られるよう要望します。」としています。
 これらの要望は、いかに学童保育のニーズが大きく、その制度化が強く望まれているかを反映したものであります。政府は直接、児童や住民の福祉の増進を担当している地方自治体の要望にこたえ、学童保育の制度化を真剣に検討され、児童クラブ対策の施設整備費や運営費補助等の財政措置を講ずるべきであると考えますが、見解を伺います。

三 当面急ぐべき施策について伺います。

1 現行、保育園措置児童数などからみても、全国には約二〇〇万人近くの共働き等による小学校低学年の留守家庭児童が存在すると推定されます。ところが厚生省調べによると、児童クラブに通所している児童は二〇万五〇〇〇人に過ぎません。このことは、依然として今日なお、多くの留守家庭児童が、放課後安全で豊かな地域環境のもとで過ごしているとはいえない、憂慮すべき状態を示しています。
 従って政府は、学童保育(児童クラブ)事業を奨励、推進するとともに、児童クラブ補助箇所数を増やすことです。先に述べたように、全国学童保育連絡協議会の調査によると、現在、全国には七〇一七箇所の学童保育所が存在します。一九九一年の厚生省調べでも、五九二六箇所が運営されています。
 ところが、厚生省の本年度補助箇所は三四七一箇所で、来年度予算要求でも四〇〇〇箇所に過ぎません。早急に、すべての学童保育所に補助が適用されるよう努力すべきだと思いますが、方針を伺います。
2 現在の補助基準は、一児童クラブ児童二〇人で一人の指導員を基礎にその人件費を補助することになっています。ところが私が視察した学童保育所は、一人の指導員で運営されている所は一箇所もなく、児童数も四〇人とか九〇人などと大規模施設が多くありました。厚生省調べでも一箇所平均三五人となり、全国的に見て一人の指導員で運営されている児童クラブはほとんどありません。また、指導員の処遇も著しく低いものとなっています。この実態からいっても、現在の補助基準は現実とははなはだ乖離しています。
 従って政府は、早急に大規模クラブには、少なくとも複数の指導員配置を基準とした補助に拡充すべきであると考えますが、改善されますか。

  右質問する。