質問主意書

第125回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九号

国際人権B規約及び陪審制に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成四年十二月九日

穐山 篤   


       参議院議長 原 文兵衛 殿


   国際人権B規約及び陪審制に関する質問主意書

 「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(国際人権B規約)は、千九百六十六年の国連総会で採択され、日本も千九百七十九年から締約国となっている。しかしながら、日本においては、国際人権B規約の内容について、周知させる手段があまりとられていないように思われる。それが、日本においていまだに冤罪事件が跡を絶たない一因であるとも考えられる。また、米欧諸国などで裁判に市民参加の方法がとられているにもかかわらず、日本ではかつて行われた陪審制が停止されている。司法への市民参加の道を広く国民的に考えていくことも冤罪の防止、人権の向上のために重要であると考えられる。
 そこで、国際人権B規約及び陪審制について以下質問する。

一 国際人権B規約第十四条第二項は、「刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは無罪と推定される権利を有する」と規定する。日本においては制度としてこの制度をどのように保障しているか。

二 このような権利をだれに対しても保障するためには国民の規約に対する理解が必要であると思われるが、この規約に示される考え方、無罪推定の原則について、国民に広く知らせるためにどのような啓発が行われているか。

三 陪審制、参審制について政府は現在までどのような調査・研究をしてきたか。今後どのように陪審制の復活を考えているのか。

四 陪審制の意義について、どのように考えているか。

五 現在の日本におけるような職業裁判官による裁判と陪審による裁判とを比較して、それぞれの長所及び短所について、どのように考えているか。

六 日本における刑事裁判では、いわゆる口頭主義・公判中心主義をとっているのに、実際は調書裁判となり、公判が形骸化しているとの批判がある。その原因として警察・検察が詳細な自白調書を作り、これに不都合な証拠は排除して、公判に提出する。そのために逮捕を先行させ、長期勾留、弁護士との接見禁止などの問題も派生してくる。このような批判に対してどのように考えているか。

七 任意性に疑いのある自白調書は証拠としてはならないとされる。警察や検察は、自白調書を証拠として提出するとき、任意性に疑いがあるとされないための保障をどのように確保しているか。

八 自白の任意性を判断する場合、どのような取調べが行われたかが問題となる。捜査に従事する警察・検察は、どのような取調べは許され、どのような取調べは許されないのか。その判断基準をどう考えているのか。

九 自白の任意性を否定した判例としてどのようなものがあるか。あれば、具体的に示されたい。

十 自白の任意性が裁判で争われ、取調べで自白を強制されたという被告人の主張と任意に自白したとする捜査官の主張とが対立した場合、公平・公正な判断を保障するために、日本の司法はどのようになっているのか。

  右質問する。