質問主意書

第124回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一二四第一号

  平成四年九月八日

内閣総理大臣 宮澤 喜一   


       参議院議長 原 文兵衛 殿

参議院議員紀平悌子君提出平成四年四月の診療報酬改定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員紀平悌子君提出平成四年四月の診療報酬改定に関する質問に対する答弁書

一について

 平成四年四月の診療報酬改定においては、物価及び賃金の動向、医業経営の実態、看護問題等医療を取り巻く諸状況の動向を総合的に勘案するとともに、中央社会保険医療協議会の審議を踏まえ、その引上げ率を五・〇パーセントとして設定したものである。なお、薬価基準等の引下げ率が実勢価格を反映して二・五パーセントとなったことから、両者を合算した引上げ率は、二・五パーセントとなったものである。

二について

 国民生活に密接に関連する社会保障については、給付と負担の適正化、公平化等を図ることにより、来るべき高齢社会においても、長期的に安定的かつ有効に機能するよう制度を構築し、運営していく必要がある。
 このような観点から、社会保障の各分野のうち、医療保障については、受益と負担の対応関係が明確な社会保険システムを今後とも重視しつつ、診療報酬を含め、種々の制度改正に取り組んでいく必要があると考えている。また、保健福祉施策については、消費税導入の趣旨をも踏まえ、すべての国民が安心して老後を送ることができるようきめ細かな配慮を行っていく必要があると考えており、政府としては、平成元年十二月に「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を策定するとともに、各年度の予算編成において、その着実な推進を図ることを始めとして、高齢化に対応した公共保健福祉サービスの充実に努めてきているところである。
 なお、先般の税制改革は、従来の税制が持っていた様々なゆがみを是正するとともに、高齢化の進展を踏まえ、安定的な税体系を確立することを目的としたものであり、消費税はその一環として導入されたものである。

三について

 看護婦等の養成については、看護婦等養成所に対する補助等各般の施策を講じてきたところであり、平成四年度においても、看護婦等養成所運営費等の大幅な増額を図ったところである。更に今後とも着実に看護婦等の養成に努めてまいりたい。
 また、今回の診療報酬改定においては、良質な看護サービスの安定的で効率的な供給を確保するという観点から、医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)第十九条で定める看護婦及び准看護婦の員数の標準を満たしていない一般病棟について、基準看護の対象から除外するなど、適切な看護水準の確保を図ることとしたものである。

四について

 今回の診療報酬改定においては、初診料等について、病院と診療所との間で差が生じたところであるが、これは、医療施設の機能に応じた評価を行うという観点から、病院については入院機能を、診療所については外来機能を重点的に評価したことによるものである。
 また、診療報酬においては、地域における医療供給体制のシステム化を促進するという観点から、原則として紹介患者のみを診療する病院を対象として、紹介外来型病院を指定しているところであるが、国立病院等におけるこうした紹介外来制の導入に当たっては、都道府県の医療計画及び国立病院・療養所の再編成計画における位置付け等を勘案し、個別に検討していくべきものと考えている。

五について

 従来設けられていた慢性疾患指導料及び慢性疾患外来医学管理料は、慢性疾患患者に対する栄養、運動等の療養上必要な指導及び計画的な医学管理を評価するものであったが、この趣旨に合わない疾患が含まれていたことから、その在り方について見直しを行った結果、慢性疾患指導料及び慢性疾患外来医学管理料を廃止し、地域のかかりつけ医師のプライマリ・ケア機能の評価を加味した特定疾患療養指導料を新設することとしたものである。

六について

 特定疾患療養指導料は、成人病等の疾患についてプライマリ・ケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の指導を行うことができるよう設定したものである。このため、その対象疾患としては、慢性疾患のうち、その療養上、栄養、運動等に係る継続的な日常生活上の指導が特に重要な意義を有する疾患であって、かつ、今後ますます患者の増加が予想され、疾病対策上適切な対応が求められるものを選定したものである。

七について

 初診の日に行った療養上の指導又は当該初診の日から一月以内に行った療養上の指導の費用は、初診時基本診療料及び初診料に含まれていることから、特定疾患療養指導料は、初診の日から起算して一月を経過した日以降に算定することとしたものである。

八について

 多剤投与の場合の薬剤料の算定については、外来患者に対する薬剤投与の適正化を図るため、医学的検討を踏まえ、一処方につき十種類以上の内服薬の投薬を行った場合には、所定点数の百分の九十に相当する点数により算定することとしたものであり、御指摘のような措置を採ることは考えていない。

九について

 紹介外来型病院、紹介外来型病院以外の病院及び診療所の間の患者の紹介については、従来から診療情報提供料を設定しているところであるが、今回の診療報酬改定においては、医療機関相互の有機的連携の強化を図るため、この診療情報提供料の引上げ及びその要件の緩和を行うとともに、診療所間の患者の紹介についても算定を行うこととしたものである。

十について

 今回の診療報酬改定においては、医療施設の機能分化を通じて、医療供給体制のシステム化を図っていくという観点から、診療所については、外来機能を重点的に評価し、初診料、再診料等を病院よりも高く設定したものである。なお、有床診療所の看護料及び入院時医学管理料についても所要の引上げを行ったところである。

十一について

 診療所については、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第十三条において、診療上やむを得ない事情がある場合を除いては、同一の患者を四十八時間を超えて収容しないように努めなければならないこととされていることから、恒常的に一定程度以上の期間同一の患者を入院させることを想定している基準給食及び基準寝具設備を承認することは適当でないと考えている。