第123回国会(常会)
答弁書第二二号
内閣参質一二三第二二号 平成四年七月十四日 内閣総理大臣 宮澤 喜一
参議院議員山田俊昭君提出一九九二年四月十八日付け科学技術庁通知文書「核物質の輸送に係る情報の取扱いについて」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員山田俊昭君提出一九九二年四月十八日付け科学技術庁通知文書「核物質の輸送に係る情報の取扱いについて」に関する質問に対する答弁書 一の1から10まで及び12について 御指摘の協議会は「核物質防護関係省庁連絡協議会」(以下「協議会」という。)のことであると理解する。協議会は、法令上特に明文の根拠規定はないが、我が国の核物質防護の在り方及び実施方策について関係省庁間で連絡を取りつつ実施することが適切と考えられる事項に関し、幅広く情報交換を行うとともに、必要な場合には協議を行い、検討を進めることを目的として、核物質防護に関係する七省庁の合意に基づき設置され、科学技術庁は協議会の事務局である。協議会における合意事項については、関係省庁の所掌に応じてそれぞれ法令に基づき実施されることとなる。
一の11について 「別添」の表は、各国の輸送情報の取扱いの実態を整理したものである。 一の13にいて 今回直接文書を送付した市町は、事業者と関係自治体が締結している安全協定に基づく事業者からの核物質の輸送計画の連絡を、当該市町が属する府県には行わず、当該市町にのみ行うこととされている市町である。 一の14について 今回の通知については、法務省も協議を受けたが、法務省の所掌事務に直接かかわるものではないので、異議がない旨回答したものである。 二の1について 「放射性物質安全輸送連絡会」は放射性物質の輸送に関する安全対策等について、関係省庁における密接な連絡等を行うため設置されたものである。一方、協議会は我が国の核物質防護の在り方及び実施方策について、関係省庁における密接な連絡等を行うため設置されたものである。 二の2について 千九百八十二年に国際原子力機関(IAEA。以下「IAEA」という。)から出された「TECDOC/262」に基づく関係省庁の報告、決定はない。
二の3について 昭和五十九年二月二十四日付け「放射性物質輸送の事故時安全対策に関する措置についてに基づき、事故時対応等について、事業者に対し適宜指導している。 二の4及び5について 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第六十四条第一項に基づき、事業所外運搬において、使用者、加工事業者、原子炉設置者、再処理事業者及び廃棄事業者並びにこれらの者から運搬を委託された者(以下「使用者等」という。)は、地震、火災その他の災害が起こったことにより、その所持する核燃料物質等による災害が発生するおそれがある場合等には、直ちに応急の措置を講じなければならないこととされている。この場合、使用者等は、自動車、船舶等に火災が起こったとき等には、直ちに消防吏員又は海上保安官に通報しなければならないこととされている。
二の6について 事業所外運搬規則第十八条等に基づき、使用者等は、核燃料物質等の事業所外運搬において、自動車等に火災が起こったとき等には、直ちに、消防吏員に通報しなければならないこととされている。また、放射性物質の輸送中の事故に際しては、昭和五十九年二月二十四日付け「放射性物質輸送の事故時安全対策に関する措置について」に基づき、警察庁、科学技術庁、運輸省、海上保安庁及び消防庁においては、相互の連絡・通報を速やかに行うとともに、密接な連絡・調整を行うこととしている。 三の1について 核物質防護条約の適用を受ける核物質には、天然六ふっ化ウランが含まれる。また、原子炉等規制法に基づく核物質防護の対象となる核燃料物質には、天然六ふっ化ウランが含まれる。 三の2について 使用者等が「核燃料物質等運搬届出書」を届け出ることとされているのは、都道府県公安委員会が、核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物による災害を防止し、及び特定核燃料物質を防護して公共の安全を図るためである。 三の3について 天然六ふっ化ウランを運搬する場合は、核燃料物質等による災害を防止し、及び特定核燃料物質を防護して公共の安全を図るため特に必要がある場合として政令に定める場合に該当しないからである。 三の4について 天然六ふっ化ウランを運搬する場合は、核燃料物質等による災害の防止及び特定核燃料物質の防護のため特に必要がある場合として政令に定める場合に該当しないからである。 三の5について 昭和六十三年に核物質防護条約を批准するに当たり国内法を整備した際に、国際約束の実施に係る規制に関する事務を所掌していた科学技術庁原子力安全局保障措置課の事務に、核燃料物質の防護に関する事務の総括等の事務を追加した。 三の6について 使用者等が、防護対象特定核燃料物質の事業所外運搬を行う場合には、防護措置を講ずることとなっている。
四の1について 御指摘の安全協定は事業者と関係自治体が締結しているものであり、安全協定中の核燃料物質の輸送に係る規定の趣旨については、政府としてお答えする立場にはない。 四の2について 関係自治体が、安全協定等に基づき事業者から核物質の輸送に係る情報を事前に入手することは、不特定多数の者に公表等することがない限り、核物質防護の観点から問題はない。 四の3について 関係省庁は、それぞれ法令に基づいて事業者に対し核物質防護上必要な指導を行うこととしている。 四の4について 核燃料物質を防護して公共の安全を図ることは、原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)の基本方針にのっとったものである。 四の5について IAEA勧告(INFCIRC/225)の趣旨は、安全対策に加えて、核物質防護が必要であることを述べたものである。
五の1について 現実に、一部地域において核物質の輸送に対する妨害行為が発生したことがあると認識している。 五の2について 「妨害破壊行為」とは、IAEA勧告(INFCIRC/225)によれば、「工場、施設、核物質輸送車両又は核物質に対する計画的行為であって、直接、間接に、放射線被ばくによって公衆の健康と安全に危険を及ぼすおそれのあるもの」とされている。 五の3及び4について 「前兆現象」という言葉に核物質防護条約上又は法令上の定義はない。 六の1について 核燃料物質の運搬中における盗難、各種事故等を未然に防止し、公共の安全を図るためである。 六の2について 警察は、輸送される核燃料物質の種類、数量、警備情勢等を総合的に判断して、その都度、必要な警備を行っている。 六の3について IAEA勧告(INFCIRC/225)に定める核物質防護基準の区分Iに当たる核燃料物質の輸送については、警察において所要の警戒を実施している。 六の4について IAEA勧告(INFCIRC/225)6.1.3にいう「輸送作業を公表することが核物質防護の有効度の低減を招くようならば、公表すべきではない。」という文言の趣旨を取り入れたものである。 六の5について 「詳細に係る情報」とは、輸送の経路、輸送の日時、警備体制、核物質の正確な受渡し地点、その予定時刻その他公開されると核物質防護の実効性が損なわれる可能性がある情報のことである。 |