質問主意書

第123回国会(常会)

質問主意書


質問第一七号

湾岸危機における米軍のサウジアラビア駐留に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成四年六月十七日

翫 正敏   


       参議院議長 長田 裕二 殿


   湾岸危機における米軍のサウジアラビア駐留に関する質問主意書

 米国国防総省は本年四月『Conduct of the Persian Gulf War』と題する米国議会への最終報告書を発表した。この中には当時我が国では知られていなかった事実が散見される。
 米軍中央コマンド(Central Command)は、イラクによるサウジアラビア、クウェートへの侵攻に対応するための作戦計画「OPLAN 1002-90」を九〇年四月には既に作成しており、同年六月にはその見直しを行い、さらに一〇月にも見直しを行う予定であった(同報告書D-5~6頁)。従って同年八月に起こったイラクによるクウェート侵攻は、米国防総省にとっては青天のへきれきといったものでなく、起こり得る有事の一つとして既にシナリオが想定されていたのである。
 イラクによるクウェート侵攻後の九〇年八月八日、サウジアラビア国王による米軍派兵の要請と同時に、米国・サウジアラビア間においてサウジアラビア防衛を計画する共同作業グループが設立された。同共同作業グループは、主に米軍中央コマンドJ5とサウジアラビア国防航空省J3というセクションで構成された。
 この共同作業グループは、最初の共同防衛計画として「Operation Order(OPORD)003」を八月二〇日に作成し、以後サウジアラビア派遣米軍は一一月二九日に最終の共同防衛計画である「Operation Desert Shield」が調印されるまで、OPORD003に基づいて同国で展開していたのである(同報告書I-7~8頁)。
 米軍のサウジアラビア駐留に関して私が本年三月一二日に参議院内閣委員会で行った質問に対して政府は、「サウジアラビアに米軍等多国籍軍が展開されました、その展開されたという行為自体が憲章五十一条の自衛権の行使である、こういう前提の御質問かと思いますけれども、これは政府の方から繰り返し答弁しておりますように、その多国籍軍の展開行為自体、これはサウジアラビアの同意に基づきましてその領域内に軍隊を展開している、こういうことで一般国際法上認められている行為でございまして、自衛権で説明する必要がある問題ではない」(小松一郎外務省条約局条約課長答弁)という見解をとっている。しかしながらこうした政府の見解は、上記の事実について承知していないゆえと思われるので、新事実が明らかになった現在改めて政府の見解をただしたい。

一 政府は当時、サウジアラビア駐留の米軍がサウジアラビアとの共同防衛計画に基づいて展開していたことを承知していたのか。

二 サウジアラビアとの共同防衛計画に基づいて米軍が同国に展開したのは、集団的自衛権の行使に該当するのではないのか。

  右質問する。