質問主意書

第123回国会(常会)

質問主意書


質問第一六号

首都圏での環境保全等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成四年五月二十一日

上田 耕一郎   


       参議院議長 長田 裕二 殿


   首都圏での環境保全等に関する質問主意書

 いま、地球環境の保全が国際的課題となっているが、そのためには何よりも日本での環境破壊の進行を阻止し、環境保全を図ることが急務となっている。
 しかし、東京では、政府の東京一極集中政策の下で、大気汚染は悪化し、公害患者は増加するなど、環境保全に逆行する事態が進んでいる。
 地球サミットを目前にし、環境悪化の焦点となっている大都市・東京での環境保全の促進を中心に、以下質問する。

一、政府は、九〇年に「地球温暖化防止行動計画」を策定したが、東京ではこの「行動計画」にすら逆行する諸計画が進行している。東京の臨海部開発がヒートアイランド現象、自動車交通量の増加を誘発する危険性は、環境庁によっても指摘されている。東京で唯一貴重な緑を残した三多摩地域では、業務核都市の形成を軸とした開発が推進され、緑地の大幅な減少が進行している。
 政府は、今後の臨海部開発、三多摩地域の開発による、気温上昇、自動車交通量増加、緑地減少の危険をどのように認識し、今後どのように対処していくのか。

二、東京では、政府、東京都の諸施策にもかかわらず、二酸化窒素、浮遊粒子状物質の環境基準はいまだ達成されていない。その最大の原因は自動車交通量の増加、特にディーゼル車の増加である。
 したがって、大気汚染を防止する上で、自動車交通量自体を大幅に抑制することが決定的に重要となっていると考える。政府は今後、首都圏での自動車交通量をどのように予測し、その抑制策をどのようにとろうとしているのか。

三、一九八七年、公害健康被害補償法が改悪され、新たな公害患者の認定が行われなくなったが、東京始め大都市部での大気汚染は悪化が進み、環境基準を超える地域が拡大している。政府は八七年以降の東京における大気汚染の現状、東京都が独自で行っている公害患者認定数の推移、公害患者の死亡数の推移をどのように認識しているのか。
 八七年以降の大気汚染悪化の現状に即して地域指定を復活するとともに、特に汚染の激甚な幹線道路地域の新たな患者も認定されるよう、補償制度を復活すべきと考えるがどうか。

四、二酸化炭素、窒素酸化物等の排出の少ない交通体系を形成する上で、輸送コストも低く、環境への影響の少ない鉄道、船舶と低公害自動車のミックス体系及び公共輸送機関の整備が決定的に重要となっていると考えるがどうか。
 これらの施策の実現には、長期の時間と経費負担が伴うものである。それだけにこれらを誘導する政府の決意と具体的計画が重要となっている。特に緊急に解決が求められている東京で、公共輸送機関の整備を促進するためにどのような施策をとろうとしているのか明らかにされたい。

五、二酸化炭素排出抑制の上でも、深刻なゴミ問題解決の上でも、紙、缶、ビンなど包装容器のリサイクルが重要となっている。政府の「行動計画」でも、「二酸化炭素の排出の少ないライフスタイルの実現」として「紙、缶、ビン等のリサイクル」を掲げている。しかし現実には鉄資源の逆有償化をはじめ、回収リサイクルに逆行する事態すら生まれている。
 リサイクル、ゴミ抑制の上で、製造企業や大手スーパーなどに包装容器の回収、再利用を求めることが決定的に重要と考えるが、紙、缶、ビンのリサイクルの現状と今後の対策を明らかにされたい。

六、地球環境の焦点のひとつである地球温暖化を確実に防止するためには、二酸化炭素排出量世界第五位の日本が、大幅な排出削減を行うことが必要である。
 しかし、政府が「地球温暖化防止計画」で掲げた目標は、当面二〇〇〇年を目途に、一人当たりの二酸化炭素排出量を「一九九〇年レベルで安定化」することであり、あくまでも現状の「安定化」目標である。しかも、総量での安定化は努力目標にすぎない。
 気候変動枠組み条約政府間交渉会議で合意された地球温暖化防止条約案も、アメリカに押し切られて同じように拘束力のないものとなったが、国際的な二酸化炭素排出の抑制、削減に真に貢献するためにも、政府として長期的、抜本的な削減目標を明示すべきではないか。

七、六に関連して、抑制目標達成のためには、分野ごとの抑制目標の設定が不可欠の前提である。「行動計画」が掲げた二酸化炭素排出総量一九九〇年レベル抑制目標を達成するために、政府は分野ごとに、現状での増加予測と抑制目標をどのように設定しているのか、数量的に明らかにされたい。

八、地球環境保全の費用負担のために、新たな税制導入が言われているが、政府は、消費税率のアップや新たな税制を導入するつもりなのか。
 環境保全費用はその直接最大の責任を負う多国籍企業などの企業が、まず負担すべきものであり、さらに軍事費の削減によって賄うべきものと考えるがどうか。

  右質問する。