第122回国会(臨時会)
答弁書第一四号
内閣参質一二二第一四号 平成四年一月十日 内閣総理大臣 宮澤 喜一
参議院議員上田耕一郎君提出鉄資源のリサイクル促進等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員上田耕一郎君提出鉄資源のリサイクル促進等に関する質問に対する答弁書 一について 最近の景気の減速に伴う鋼材需要の減少による電気炉メーカーの減産等によって、原料の鉄スクラップの価格が低落して資源回収業者の事業活動等に困難が生じていること、また、従来有価で回収業者に引き取られていた鉄スクラップについて、逆に引取り費用を要求されたり、引取りを拒否される事例が多くなってきたため、引取り費用についての予算措置、処理すべきごみの増加への対応等市町村の負担が増大していることは承知している。 二について 通商産業省が、最近、普通鋼電炉工業会を通じて行った調査によると、関東地方における普通鋼電気炉メーカー全十八社の平成三年十月末時点における鉄スクラップ在庫量は約二十一万トンで、同年三月末時点に比べ、約六万トン、三十六・五パーセントの増加となっている。また、通商産業省が社団法人鉄リサイクル工業会を通じて行った調査によれば、全国の鉄スクラップ問屋のうち四百八十五社の平成三年十一月末現在の鉄スクラップの在庫量は約九十二万五千トンで、そのうちの約四十六パーセントが過剰在庫との回答であった。 三について 鉄スクラップの引取りの量及び価格に関しては、基本的には、企業間の個別の取引の問題であり、政府が介入すべきものではないと考えられる。しかしながら、政府としては、電気炉メーカーに対して、鉄スクラップの安定供給の確保という観点から、長期的視点に立った対応を図ることが適当であるとの問題意識を喚起してきたところである。 四について 鉄スクラップ回収業者の経営の安定化のためには、鉄スクラップの需給や市況の安定化が望まれるが、これは基本的に市場の経済原則の下で解決されることが望ましいことから、政府としては、まず、関係業界間で対応策を検討・調整することを促しているところであり、関係者の本問題への取組状況を見つつ、適切な対応がなされるよう指導に努めていくこととしている。なお、一般廃棄物として散在性の高い飲料缶については、分別を容易にすることによって再資源化の促進を図るという観点から、平成三年十月に施行された再生資源の利用の促進に関する法律(平成三年法律第四十八号)において、スチール缶とアルミ缶の識別表示を義務付けたところであり、さらに、平成二年十二月の産業構造審議会答申「今後の廃棄物処理・再資源化対策のあり方」を踏まえ、スチール缶の再資源化対策を推進しているところである。
五について 政府として鉄スクラップの発生量及び需要を長期的に予測したものはないが、社団法人日本鉄源協会が平成三年六月に発表した「我が国鉄くずの供給見通し」では、千九百九十五年度における鉄スクラップの供給量は、一定の前提条件の下で、五千三百六十三万トン程度と見込まれている。 六について 我が国における鉄スクラップのリサイクルについては、鉄鋼業の生産工程で発生した副産物としての鉄スクラップが有効利用されているとともに、他産業等の産業廃棄物や一般廃棄物から回収される鉄スクラップについても経済原則に則した市場を通じて再資源化されているところである。さらに、今後鉄スクラップの供給の増大が予想される中で、関係業界においては、例えば、鉄スクラップの輸出の増加により、国内の鉄スクラップの需給バランスの維持を図ることも検討されているところである。
七について 最近、国内における鉄スクラップの需給が緩和していることから、鉄スクラップ及び銑鉄の輸入は、当面、品質維持等の理由により必要なものを除いて、基本的に減少していくものと考えられ、輸入抑制のための措置を採る必要はないと思われる。 八について 高炉による製鉄法では、主原料として鉄鉱石を用いており、現在、原料のうち鉄スクラップの使用比率は一割弱であるが、この比率を更に引き上げることについては、製鋼技術、品質管理、品種構成等の関係で、現状では、ほぼ限界となっている。
九について 再生資源の利用の促進に関する法律における特定業種の指定の考え方は、(1)廃棄物の発生量が多く十分に有効利用が行われていない等、特に有効利用を図る必要性が高いこと、(2)事業者への義務付けによって、実際に相当の効果が期待できること、(3)事業者への義務付けによる対策が技術的かつ経済的に可能であること、の三点を基準として考えている。
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