質問主意書

第122回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質一二二第八号

  平成三年十二月二十七日

内閣総理大臣 宮澤 喜一   


       参議院議長 長田 裕二 殿

参議院議員小笠原貞子君外一名提出閣僚の単一民族発言についての見解と「国際先住民年」を迎えるにふさわしいアイヌの人々の生活と権利保障を求める質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員小笠原貞子君外一名提出閣僚の単一民族発言についての見解と「国際先住民年」を迎えるにふさわしいアイヌの人々の生活と権利保障を求める質問に対する答弁書

一について

 政府は、我が国が単一民族国家である旨主張するものではなく、渡辺外務大臣の当該発言も、民族関係がより複雑な状況にある外国と比較して述べたものであり、日本が単一民族国家であるとの趣旨ではない。

二について

 検討委員会は、現在、北海道からアイヌ新法問題に対する要望の趣旨、内容等について説明を聴取しているところである。その後の日程は未定であり、説明聴取の結果等をも踏まえ検討することとしている。

三について

 世界の先住民のための国際年(「全国際先住民年」)は、世界の先住民の人々が直面している人権、環境、開発、教育、健康等の分野における諸問題の解決のための国際的協力を推進する上で有意義なものと考える。
 政府としては、「国際先住民年」の目的及び国際連合の関連決議等を踏まえ、我が国としていかなる対応をするかについて、今後検討していくこととしている。

四の1について

 生活指導職員、ウタリ担当職業相談員及びウタリ教育相談員については、市町村長等の委嘱により、社会的信望があり職務上必要な識見と熱意を有する者のうちから登用されてきているところである。生活指導職員及びウタリ担当職業相談員の配置及び報酬については、きめ細かな相談、指導等の活動が行われるよう、従来から改善に努めてきているところである。ウタリ教育相談員については、北海道教育委員会においてその必要性等を勘案して適切に対応されるべき事柄と考える。
 また、生活館の運営について、相談室、会議室等の整備や相談活動に必要な経費の補助を行っており、相談活動の充実に努めてきているところである。

四の2について

 中小企業者に対する資金の確保を図るため政府系中小企業金融三機関(中小企業金融公庫、国民金融公庫及び商工組合中央金庫)においては、中小企業向け貸出しの基準となる金利を民間金融機関が信用力の高い大企業向けに資金を出す際の最優遇貸出し金利である長期プライムレート(貸付金利六・九パーセント)と同水準に設定して、中小企業者一般に対して条件面で優遇した融資を行っているところである。
 また、平成三年度において創設した「中小流通業活性化特別貸付」(貸付金利五・一パーセント)等政策目的に応じて貸付条件を設定した各種の特別貸付制度を設け、一層の長期かつ低利の融資を行っているところである。
 中でも国民金融公庫においては、小企業者等に対して、無担保・無保証人で融資を行う小企業等経営改善資金融資制度(貸付金利六・六パーセント)を設けているところであるが、平成三年度から、運転資金の貸付限度額を引き上げ(四百五十万円を五百万円に変更)、同制度の充実を図ったところである。
 今後とも、引き続き中小企業者に対して低利な資金の確保を図り、経営の安定等に資するよう一層配慮していく所存である。

四の3の(1)、(3)及び(4)について

 政府としては、ウタリ子弟の高校・大学等への進学を奨励するため、北海道が行う進学奨励事業に対し補助を行っており、逐年、その充実を図ってきているところである。高校・大学等への入学に関し一時金として給付される所要の通学用品等の助成金に対する補助については、今後とも現下の厳しい財政事情を勘案しつつ適切に対処してまいりたい。
 なお、高等学校通学費補助金については、北海道の単独事業であると承知している。

四の3の(2)について

 通学用品等助成金及び奨学金の支給時期については、申請書類の審査、所得の確認等の手続を必要とすることから七月となっているものと承知しているが、今後とも事務処理の改善を図るよう指導してまいりたい。

四の4について

 年金制度においては、保険料を納付した期間、年齢等に応じ全国を通じて一律に給付を行うことを基本としており、この考え方に基づいて、老後生活の基本的部分を保障するために老齢基礎年金等の給付を行っているところである。
 このようなことから、御指摘の「老人年金給付特別事業」などを行うことは、考えていない。

四の5について

 ウタリ住宅新築資金等貸付事業に係る資金の貸付けに当たり、貸付主体である市町においては、貸付対象者が保証人を有することを必要とする取扱いをしているものと聞いている。この取扱いは、貸付金に係る債権の保全の観点から、市町が独自に行っているものである。
 なお、御指摘の保証協会の利用を認めることについては、市町村において判断すべきものと考えている。

五について

 アイヌの言語については、北海道教育委員会が行うアイヌ生活文化用語の伝承教室事業について補助を行い、逐次実施地区数を増やしているところである。また、アイヌ古式舞踊については、歴史的価値の高いものを重要無形民俗文化財に指定するとともに、北海道教育委員会が行うアイヌ古式舞踊の調査事業に対して補助を行っているところである。
 今後とも、アイヌの民俗文化財の保存・伝承活動については、その充実に努めてまいりたい。