質問主意書

第122回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一三号

広島市デルタ地帯の高潮対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三年十二月十九日

林 紀子   


       参議院議長 長田 裕二 殿


   広島市デルタ地帯の高潮対策に関する質問主意書

 さきの台風一九号では、広島市内の約四二〇ヘクタールが浸水し、約一六〇〇棟が床上浸水するなど、大きな被害に見舞われた。これは、台風一九号が広島で瞬間最大風速五八・九メートル/秒を記録するなど、記録的な突風が吹き、江波観測所(広島市)において、観測史上最高のTP(東京湾中等潮位)二・九一メートルの潮位を観測したことにもよるが、太田川など広島市のデルタ地帯における高潮対策の遅れが、今回の被害を招いたと地域住民から強く指摘されている。
 さらに、建設省太田川工事事務所は最近、最悪の条件を想定した浸水被害のシミュレーションを明らかにした。それは、台風一九号が実際より三時間後の、満潮時と重なる午後一〇時五〇分に広島湾に最も近づいた場合、今次の潮位よりさらに四〇センチメートル上昇して、広島旧市内のほぼ全域約二九六〇ヘクタールが浸水し、今回の約七倍の地域で被害に遭っていたであろうというものである。
 そこで以下、広島市デルタ地帯の高潮対策について質問する。

一、建設省では、一九七二年度から太田川などの防潮堤の構築を進める高潮対策事業を行っている。その整備計画によると、総事業費一一〇〇億円、整備計画延長二四・六キロメートルとなっている。そこで、

1 計画当初から年度ごとの改修率、並びに年度ごとの高潮対策事業の予算額の推移を明らかにせよ。
2 すでに計画どおり防潮堤の構築等が終了した場所、地点、整備距離数を明らかにせよ。
3 建設省がみずから示したシミュレーションから明らかなように、高潮対策事業の整備計画を早急に進める必要があるが、これまでの予算額と人員の規模(ベース)で推移すれば、計画の完了までにどれくらいの期間を要するのか。
 また、今後どのような予算額と人員数の増加を図っていくのか、対策を明らかにせよ。

二、今次、台風による高潮被害が生じたところでは、依然として土のうなどによる応急の復旧工事が施されているに過ぎない箇所もみられる。この程度の高潮は今後も起こり得ることから、遅くとも来年の夏までには、堤防の改修を必要とする。
 そこで、今回の台風で被災した箇所や溢水した箇所等について、箇所ごとの復旧工事予定を明らかにされたい。

三、太田川河口部の広島港湾区域については、運輸省の管轄により高潮対策が講じられている。
そこで、

1 高潮対策計画を進める上で「計画潮位」はどのように定めているか。
また、この「計画潮位」に基づいて「計画堤防高」はどのように定めているか。
2 こうした港湾区域の防潮堤の構築等にかかわる「計画潮位」や「計画堤防高」は、建設省が進める高潮対策事業のそれと相違はないか。充分整合性がとられていないのではないか。
3 港湾区域のうち、住宅が密集している広島市宇品地域等では、台風一九号の際、堤防を乗り越えて多くの家屋が浸水した。これは、「堤防が低かったからではないか」との指摘がなされており、現在の「堤防高」を見直し改修を進めるなど対策を講じるべきだと考えるが、どうか。
4 港湾区域の高潮対策について、その整備計画と進捗状況(箇所ごとに)を明らかにせよ。

  右質問する。