質問主意書

第121回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一五号

日本中央競馬会で働く労働者の待遇改善に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三年十月三日

上田 耕一郎   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   日本中央競馬会で働く労働者の待遇改善に関する質問主意書

 日本中央競馬会の昨年の売上は三兆円を突破し、国庫納付金は四千五十二億円にも達して、税収を除いて最大の国庫収入源となっている。このような売上と収益金の国庫納入は、日本中央競馬会で働く労働者の労苦なくして実現できるものではない。
 いま、日本中央競馬会で働く労働者である従事員の「退職金」が少ないことが大きな問題になっている。同じ職場で働く日本中央競馬会職員と比較しても、また同様の仕事をしている地方公営競技の従事員と比較しても「退職金」(勧奨退職手当を含む)で大きな格差がある。「退職金」とともに、定年年令引下げや、職場の労働環境の劣悪の問題もある。
 農林水産大臣は日本中央競馬会への監督責任を有しており、労働省は日本中央競馬会の従事員にも適用される労働大臣告示「パートタイム労働指針」を一九八九年六月に発表している。政府は緊急に、「パートタイム労働指針」に基づいて日本中央競馬会の労働者の待遇改善を行うべきであると考え、以下質問する。

一、日本中央競馬会の従事員「退職金」は、二十年勤続で約四十五万円でしかなく、勧奨退職手当の制度もない。同様の仕事をしている地方公営競技の従事員の「退職金」(勧奨退職手当を含む)と比較した場合でも、約六分の一であると言われている。日本中央競馬会従事員と同様の仕事をしている地方公営競技の従事員は、二十年勤続した場合、「退職金」及び勧奨退職による割増金がおおよそいくらであると把握しているのか。地方公営競技の開催場所毎に明らかにしていただきたい。

二、労働省は、一九八九年六月二十三日に労働大臣告示「パートタイム労働指針」を発表した。それによると、「賃金、賞与及び退職金」について、「パートタイム労働者の賃金、賞与及び退職金については、労使において、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする」とある。中央競馬会の勤労課は組合代表に対して、「この『指針』には罰則はない『努力義務』はやらなくてもよいということだ」と公然と述べている。政府百パーセント出資の法人である中央競馬会は、労働大臣の告示した「指針」に基づいて従事員の「退職金」を決定していく義務があるのではないか。

三、前記「指針」の「通常の労働者との均衡等を考慮して定める」ということは、同じ職場の中央競馬会の職員、地方公営競技の労働者の「退職金」(勧奨退職手当を含む)などと均衡のとれたものにしなければならない、と解すべきだと考えるがどうか。

四、中央競馬会の従事員「退職金」は、勤続二十年、時給千七百円の人で約四十五万円である。一方、労働省の調査結果では、一般のパート労働者の退職金は、勤務六・七年、時給七百二円で約十九万六千円である。これを、勤続二十年、時給千七百円で単純に計算しなおすと、約百四十万円となる。
 労働大臣の「指針」に照らして、中央競馬会従事員の「退職金」が一般のパート労働者の退職金と比較しても著しく妥当性を欠くと考えるがどうか。

五、中央競馬会の女子職員の「退職金」は、週五日勤務、二十年勤続で約一千万円である。一方、中央競馬会従事員「退職金」は、二十年勤続で約四十五万円であり、これは、中央競馬会の女子職員並みの勤務日数にして計算しなおしても、女子職員の「退職金」の約十分の一でしかない。
 さらに地方公営競技従事員の「退職金」と、勧奨退職による割増金の合計金額は、すでに述べたように、中央競馬会の従事員の六倍近いものであると言われている。このようなことからも明確なように、中央競馬会従事員の「退職金」は、「パートタイム労働指針」の「通常の労働者との均衡等を考慮」したものとは到底いえないものである。従って農林水産大臣が中央競馬会に対して指導、助言を行うべきと考えるがどうか。

六、中央競馬会は、これまで「定年」を六十五才としてきたが、新規採用者については、事業所によって六十才とか五十才、四十才に引き下げている。これは一九八九年の第六次労働省雇用対策基本計画と、六十五才までの雇用確保をすすめる高年齢者雇用安定法に反するものではないか。

七、競馬法改正で、学生・生徒、未成年者に対して窓口従事員が馬券を売った場合、窓口従事員が処罰(「五十万円以下の罰金」)されることもあるため、窓口従事員は学生・生徒、未成年者の確認に、労力、神経を使い、法律を厳格に守ろうとすれば、売場窓口は混乱しかねないと心配している。政府は、改正競馬法を厳守するためにも、学生・生徒、未成年者が窓口に来る以前に規制する必要な人員配置を行うなど、中央競馬会が責任をもった対策を採るよう指導を徹底すべきではないか。

  右質問する。