質問主意書

第121回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四号

原子力発電施設におけるインターナルポンプ設置認可に伴う政府の認識とその根拠に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三年八月二十三日

稲村 稔夫   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   原子力発電施設におけるインターナルポンプ設置認可に伴う政府の認識とその根拠に関する質問主意書

 財団法人原子力工学試験センターでは一九八一 ~八六年に「インターナルポンプ設備確証試験」を行い、その報告書が提出されているが、政府は、この報告書を東京電力柏崎刈羽原発六・七号機の設置認可にかかわる安全審査に、どのように活用したのか疑問が多い。よって、以下の項目につき明らかにされたい。

一、原子力工学試験センターの試験について

1 一九八八~九二年までの「インターナルポンプ溶接部等信頼性実証試験」とは、何を行っているのか、具体的に項目を挙げて説明されたい。
2 前記実証試験の結果が出ていないのに、安全審査ではなぜ「安全」という結論が出たのか。
3 「確証試験」、「実証試験」の結果は、安全審査に資料として提出されるのか。
4 「確証試験」、「実証試験」に要した費用はいくらか。
5 インターナルポンプ設備確証試験に際しては、実物テストを行っているか。
6 炉内流量分布の評価について。

(1) 部分台数運転のときや、過度変化のあらゆる場合について試験を行ったのか。
(2) 炉心流量計測の誤差は最大どのくらいか。

7 炉内構造物の流動振動の評価に関して。次の点について調査したか。もし、調査していなければ、その理由について明らかにされたい。

(1) 特に制御棒、燃料棒についてどのように調査したか。
(2) フレッティングコロージョンへの影響について調べ尽くしているか。

8 インターナルポンプの耐震性の評価を行ったか。行っているとしたら次の点について、もし行っていないとしたら行わなかった理由について、それぞれ明らかにされたい。

(1) 耐震実験は行ったのか。
(2) 耐震サポートはなぜ不要としたのか。
(3) 固有振動数はいくらか。
(4) 最大加速度はいくらで、最大変位はいくらか。
(5) ノズルとハウジングがぶつかることはないか。もし、ぶつかった場合、その衝撃力はいくらか。

9 ノズル部や溶接部の応力試験を行っているか。行っているとしたら次の点について、もし行っていないとしたら行わなかった理由について、それぞれ明らかにされたい。

(1) 試験の解析と一致していたかどうか。
(2) 実炉ではどのくらいになっているのか。
(3) 疲労破壊の可能性はないか。
(4) 疲れ累積係数はいくらか。
(5) 評価した運転状態(温度、圧力、繰り返し回数)はどういう状態か。
(6) 地震時について評価した最大galはいくらか。その解析結果はどうなっているか。
(7) 応力の計算方法とその際に付した荷重条件。

10 ブローダウン試験は行ったか。行っているとしたら次の点について、もし行っていないとしたら行わなかった理由について、それぞれ明らかにされたい。

(1) 想定した破断箇所はどこか。
(2) インターナルポンプの底抜けについて試験を行ったか。

11 インターナルポンプ慣性力試験を行ったか。行っているとしたら次の点について、もし行っていないとしたら行わなかった理由について、それぞれ明らかにされたい。

(1) コーストダウンによる燃料棒破損はないか。
(2) 慣性力を上げる試みは行ったか。
(3) コーストダウン特性を示されたい。

二、東京電力柏崎刈羽原発六・七号機について

1 柏崎刈羽原発六・七号機のインターナルポンプ及びノズル部等は、原子力工学試験センターの実験モデルと同一のものか。異なるものである場合、実物と実験モデルの比較について図面をもって明らかにされたい。
2 インターナルポンプハウジングの肉厚やノズル部の肉厚を大きくできないのか。
3 ノズルの形はどうしてこのようなものになったのか。
4 溶接時に空気層は確実に確保されるか。
5 シール水の流量はどのように決めたのか。
6 軸のサーマルストレスによるひび割れ発生がないと保証できるか。
7 モーターの冷却水の冷却系統の信頼性はどの程度あるのか。
8 モーターの発熱量は何kwか。
9 モーターのコイルは水や放射線に対してどのように保証されているか。
10 原子力工学試験センターでインターナルポンプの確証試験を行った際、ポンプの振動に関してその振動の変位、加速度、周波数特性を示し、また実機ではどうなるかの評価も明らかにされたい。
11 スラストベアリングには最大でどのくらいの荷重がかかるとして設計されているのか。それが、実験時ではいくらであったか。
12 逆転防止デバイスの仕組みはどのようになっているか。スプリングの強度の計算はどのように行ったのか。スプリング等の破損の恐れはないかどうかに関する政府の判断がどのようなものであるか明らかにされたい。
13 軸はなぜ中空になっているのか。中に熱水が入るのか。そうだとしたらその熱水の流動、温度分布について示すとともにこのような構造になっていることに関する政府の判断を明らかにされたい。
14 ポンプ入り口に金網はあるか。ルーズパーツ対策はあるのか。
15 ディフューザとインペラの間隙はどのくらいか。
16 当初は一二台で設計されたと聞いているが、なぜそれが一〇台になったのか。
17 技術的、経済的に、外部再循環ポンプ一〇台ないし二〇台とインターナルポンプ一〇台のどちらがよいか計算したことがあるか。あるとしたらその結果を、もしなかったとしたらその理由について明らかにされたい。
18 インターナルポンプの制御はどのように行われ、それによる流量変化はどうなっているか。
19 インターナルポンプの電源系統はどうなっているのか。
20 インターロック等の安全対策について。

(1) 従来の再循環ポンプは起動時にインターロックがかかり、急に大流量が流れて冷水事故を引き起こさないような設計になっているが、インターナルポンプではどうなっているか。
(2) また、冷水流入による反応度事故については検討したか。

21 日負荷変動の調整運転のときのポンプの流量変化はどうなっているのか。その流量調整はコンピューターによって自動的に行うのか。
22 燃料の燃焼末期にはインターナルポンプの流量拡大運転を行う予定と聞くが、安全審査の申し入れはなされているのか。もしそうだとすると、なぜ申請書に書かれていないのか。
23 燃焼初期に流量拡大運転による事故の可能性はないかどうか検討されたのか。検討されていたらその結果について、もし検討されていなかったとしたらその理由について、それぞれ明らかにされたい。
24 ポンプ振動監視システムはつけられるのか。
25 定期検査の手順に関し、以下について政府は承知しているのか。

(1) 分解の仕方
(2) 点検方法
(3) 組み立て方法。ネジの部分はどこか。
(4) 溶接部の点検方法及びその法的根拠。

三、海外の原発でのインターナルポンプ設置状況その他について

1 インターナルポンプをつけている外国の原発があれば列挙し、そのメーカーも明らかにされたい。
2 外国のインターナルポンプの故障、不具合等に関する情報をどれだけ掌握しているか。それらの情報について明らかにされたい。
3 日本のインターナルポンプが外国のそれと違っているところがあるか。あるならば、その相違点はどこか。
4 原子力工学試験センター以外に、国内、外国においてインターナルポンプの試験を行っている所があるか。もしあるとすれば、それらの行った試験結果と比較検討をしたか。したとすればその比較を一覧表にして示されたい。
5 電力共同研究が「原子炉再循環系新型ポンプシステムの開発に関する研究」(昭和五二年度~五八年度)をしているが、これに対する政府の認識を問う。

  右質問する。