質問主意書

第120回国会(常会)

答弁書


答弁書第一九号

内閣参質一二〇第一九号

  平成三年三月二十九日

内閣総理大臣 海部 俊樹   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員下村泰君提出HIV対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員下村泰君提出HIV対策に関する質問に対する答弁書

一について

 後天性免疫不全症候群(以下「エイズ」という。)の病原体(ヒト免疫不全ウイルス。以下「HIV」という。)に感染している者(以下「HIV感染者」という。)の診療については、昭和六十一年十二月に設置された厚生省エイズサーベイランス委員会における議論等を踏まえ、「エイズ診療の手引き」、「HIV医療機関内感染予防対策指針」等を作成し、これらの周知徹底を図るとともに、無差別に、かつ、人権に配慮しつつ診療を実施するよう都道府県等及び社団法人日本医師会等を通じて医療機関を指導しているところである。
 なお、国立病院及び国立療養所、公立病院並びに国公私立大学の附属病院に対しても、従来から通知等により、HIV感染者の診療について十分な対応を採るよう指導しているところである。

二について

 HIV感染者の歯科診療については、都道府県等及び社団法人日本歯科医師会を通じ、歯科医療機関に対し「HIV医療機関内感染予防対策指針」の周知徹底を図り、HIV感染者の歯科診療について十分な対応を採るよう指導しているところである。

三について

 血液製剤によるHIV感染被害救済制度(以下「救済制度」という。)は、患者及びその遺族の置かれた状況にかんがみ、法的責任の問題とは切り離して、医薬品副作用被害救済制度に準じた給付を行うこととして、財団法人友愛福祉財団によって実施されているところである。
 このうち、特別手当については、医薬品副作用被害救済制度上の障害年金等の対象者の要件に準じて、厚生省エイズサーベイランス委員会で定められた診断基準に基づいてエイズと判定された患者をその対象者とすることとしているところである。

四について

 差額ベッドに係る室料差額については、治療上の必要から患者を個室等へ収容した場合にはこれを徴収できない旨、従来から指導してきているところである。また、患者がHIV感染者であることを理由として、当該患者の希望による個室等の室料差額を徴収しないものとすること及びその室料差額について特別の補助を行うことは、考えていない。
 なお、救済制度の特別手当については、医薬品副作用被害救済制度の障害年金等に準じ、全体として患者の生活保障を図ることを目的として行われる給付であり、患者の希望による個室等の室料差額のすべてを補填する性格のものではない。

五について

 医薬品副作用被害救済制度における副作用被害判定部会は、本制度の給付の対象者の決定に係る医学的な事項について判定を行うために設けられたものであり、医学の専門家から構成されることが適当であると考えている。
 なお、これは、救済制度における判定委員会についても同様であると考えている。

六について

 事業者を含む国民に対するHIVの感染に関する正しい知識の・普及啓発のため、国においてはポスター、パンフレット、テレビ等により広報するとともに、都道府県等を通じ広く広報活動を実施している。

七について

 民間のいわゆる任意団体がHIV感染者に対する支援を行っていることは承知しているが、これら団体を補助事業者等又は間接補助事業者等とする国庫の補助については、当該団体の補助事業等の遂行能力、当該団体の事業の継続性等にかんがみ慎重な検討が必要であると考える。

八について

 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)附則第十一項は、HIVの感染力は弱いものの、これにいったん感染しエイズを発病すると致命率が極めて高いことにかんがみ、我が国の公衆衛生上の見地から、多数の者にHIVを感染させるおそれのある者の上陸を拒否する必要性があるところから、後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(平成元年法律第二号)附則第三条による入管法の一部改正により設けられたものである。この立法の必要性は現在においても変更がなく、したがって、入管法を改正して当該条項を削除することは適当でないと考える。